どんな本?
学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。
召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。
帝国から逃げれたと思ったら、ローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。
読んだ本のタイトル
#ウォルテニア戦記 XIII
著者:#保利亮太 氏
イラスト:#bob 氏
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あらすじ・内容
万全な戦争準備のもとに、怒涛の勢いでザルツベルグ伯領に迫る亮真の軍。
迎え撃つのはザルツベルグ伯爵と王国北部の有力貴族団である「北部十家」。
初戦こそ互角だったものの、堅牢な城塞都市に籠るザルツベルグ伯爵を真正面から打ち破るのは難しいと判断した亮真は心理戦を仕掛ける。
いっぽう王都では、たび重なる内乱にルピス女王が悩みを深めていた――。
ウォルテニア戦記 XIII
感想
伯爵家との戦争は膠着状態。
それに対して御子柴軍は伯爵に援軍を送っている北部十家の領地を蹂躙して村々を焼く。
だが住民を避難させてから、、
あえて人命は取らないで伯爵達が籠城してる城塞へ誘導する。
狙いは城塞内の治安悪化と食糧の消費をさせて厭戦気分を上げるため。
食糧の消費は、貴族達の自領の民を見捨てるわけにいかずドンドン目減りして行く。
コレって、焦土作戦の逆バージョン?
そして、御子柴の爺様、浩一郎と従妹、飛鳥が久し振りにに登場。
爺さんが飛鳥の居所を突き止めていつ救出するか虎視眈々と機会を狙っている状況かと思ったが、、
飛鳥を保護している教会と爺様の居る組織は敵対関係にあるようで迂闊に手を出せないようだ。
それが今後どうなるか、、
より複雑になって来た。
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備忘録
プロローグ
ローゼリア王国の決断
女王と騎士の苦悩
ローゼリア王国の王都ピレウスの城で、女王ルピス・ローゼリアヌスと騎士メルティナ・レクターが地図を囲んで対峙していた。時刻は午後三時。穏やかな天気と手入れの行き届いた庭園が広がる中、二人にお茶を楽しむ余裕はなかった。
王として国を統治するルピスと、それを支えるメルティナの表情は険しかった。数日後には、城塞都市イピロス周辺で戦端が開かれると予測されていたからである。ルピスは戦争がもたらす悲劇を憂い、ため息を漏らした。平民たちは財産を失い、命を落とす者も出る。彼女はその責任を重く感じていた。
しかし、メルティナは女王の姿勢に複雑な感情を抱いていた。国民を想う気持ちは美徳であったが、それだけでは国を守ることはできない。決断を下し、行動を起こす覚悟がなければならなかった。彼女は、現在の情勢を打破するための最良の策を実行するしかないと考えていた。
メルティナの成長と覚悟
メルティナは、単なる騎士ではなく、国の防衛と治安を担う立場にあった。以前の彼女であれば、民を危険にさらす政策には断固反対しただろう。しかし、現実は理想だけでは動かないと理解するようになっていた。
彼女の変化の契機となったのは、国境に駐留するエレナ・シュタイナーからの手紙だった。それには、かつてのエレナ自身の失敗談が書かれており、メルティナはそこから多くを学んだ。騎士の誇りだけでは国を守れず、時には妥協と計算が必要であることを悟ったのである。
メルティナは、王都の騎士団を統括する立場として、政治にも深く関与するようになった。しかし、官僚たちとの摩擦や騎士団内の不満が彼女の負担となっていた。特に、ルピス女王の寵愛を受ける彼女に対し、騎士たちの間には嫉妬が渦巻いていた。
王国の選択と策謀
戦の勝敗がどちらに転んでも、ローゼリア王国にとって損失は避けられなかった。ザルツベルグ伯爵家が勝てば王権がさらに弱体化し、御子柴亮真が勝てば彼の影響力が増す。
しかし、王国としては戦に介入することができなかった。私戦を禁じる国法があっても、それを徹底する力が不足していた。豊臣秀吉の惣無事令のように、強大な権力がなければ法の強制はできない。ルピスにはその力がなく、介入すれば貴族の反発を招くだけだった。
そこでメルティナは、戦の推移を見守る方針を決定した。表向きは戦の鎮静化を図るが、実際には介入せず、どちらかが疲弊するのを待つという策である。
密使の派遣と策略
メルティナは戦の調停を試みる形を整えるため、使者を送る計画を立てた。しかし、それは本心からの停戦交渉ではなく、御子柴亮真が王命を無視したという名分を作るためのものだった。
その役目を担う人物として、ミハイル・バナーシュが選ばれた。かつてルピスに忠誠を誓い、今は謹慎の身であるミハイルは、メルティナの計画を受け入れた。そして彼は、使者としてベクター・クロニクルを推挙した。
ベクターは元親衛騎士であり、ルピス女王の警護経験もあった。しかし、彼は腐肉病を患い、余命が限られていた。生き延びる希望がない以上、彼の最後の役割として使者の役目を担わせることが最善と判断された。
ミハイルはメルティナの意図を理解し、密使としてベクターを送り出す準備を進めた。だが、正式な国王の書状を用いない密使という形をとることで、何か不安が残る決断でもあった。それでも二人は酒を酌み交わし、互いの覚悟を確認し合った。
その夜、ミハイルの屋敷の裏門から、一人の男が北へと向かった。懐には主から託された密書があった。
第一章 双刃と紅獅子
戦端の再開と戦術の展開
戦が始まり二日目の朝を迎えた。イピロス城塞の門が開かれ、六百の騎兵が出陣した。昨日の戦いで、敵の横陣に対し突破力のある陣形が有効と判断されたため、選抜された騎兵のみで編成された。この偏った布陣を実現できたのは、ザルツベルグ伯爵の信頼が背景にあった。
ロベルト・ベルトランとシグニス・ガルベイラが先頭を務め、彼らは快晴の天候のもと進軍した。ロベルトは天気の良さに戦への高揚を感じていたが、シグニスは違和感を抱えていた。彼の手に握られた戦斧は、昨日失われたものと同じ形状の予備品だったが、微細な違いが感覚的な違和感を生じさせていた。道具の重要性を思い返しながらも、シグニスは戦場で生死を分ける細かな差異を意識し、戦への集中を強めた。
戦場での策略と戦術の応酬
敵軍が再び現れた。昨日と同じ千の兵数を擁し、意気盛んに構えている。リオネはその光景を確認し、敵の主力であるロベルトとシグニスを前にして気乗りしない様子を見せた。彼女は御子柴亮真の命令を受け、彼らを討たずに足止めするという難題に直面していた。単に勝つことだけなら容易だったが、敵の武将を殺さずに制圧するという条件が加わることで戦術の難易度は跳ね上がっていた。
一方、敵軍の布陣には変化があった。盾と槍を構えた重装歩兵が前面に立ち並び、防御を重視した編成に切り替えられていた。ロベルトとシグニスは突撃を試みるが、すぐに敵の陣形の異変を察知する。単純な横陣ではなく、陣形を自在に組み替える高度な練度を持つ部隊だった。
ロベルトの号令で左右からの挟撃を試みるが、敵は即座に対応し、包囲網を形成。彼らを巧みに誘い込んだリオネの策が機能し始めた。シグニスとロベルトは瞬時に罠であると悟ったが、加速した騎兵隊を止める手段はなく、そのまま敵の陣形に引き込まれることになった。
戦場の罠と決断の瞬間
シグニスとロベルトは退路を探しながら突撃を継続した。目の前には盾で構築された壁があり、後方では包囲が狭まっていた。戦場での瞬時の判断が求められる状況に陥る中、彼らは敵の布陣の一部に微かな隙間を見出し、そこを突破口と定めた。ロベルトとシグニスは同時に加速し、敵の包囲を振り切るために突撃を仕掛けた。
だが、これは敵の計画の一部であり、包囲を完全に閉じる前に彼らを分断するための策略だった。二人と数百の騎兵は辛うじて脱出できたが、後続の兵は包囲の中に閉じ込められた。これにより、ロベルトとシグニスは多くの部下を失い、戦術的敗北を喫した。
リオネはこの作戦の成功を確信していた。重装歩兵の壁を活かし、戦場を巧みに操作することで、敵の主力を分断し、彼らの力を封じ込めた。御子柴亮真の立てた策略が見事に的中し、敵軍に大きな打撃を与えることに成功したのである。
撤退と戦局の行方
ロベルトとシグニスは敗北を認め、撤退を決意した。彼らは怒りに震えながらも、今の戦場での勝利が不可能であることを理解し、冷静に後退した。一方で、リオネは戦場の制圧を続け、取り残された騎兵たちを一掃する準備を整えた。
戦場に響く重装歩兵の足音が、勝利の確定を告げる音となる。リオネは亮真の策略が敵の心理を巧みに突いたことを改めて実感し、その用兵の巧みさに感嘆していた。今回の戦いにおいて、御子柴亮真の軍勢は戦術の優位性を活かし、圧倒的な武力を誇る敵軍を見事に翻弄したのである。
第二章 より良い明日の為に
城塞都市イピロスの戦況と戦略の変化
戦争の始まりと予想外の展開
御子柴亮真が宣戦布告し、城塞都市イピロス郊外での戦いが始まった。多くの者は、彼の軍がローゼリア北部十家の連合に圧倒されると考えていた。しかし、戦況は予想外の展開を見せ、十日が経過しても膠着状態が続いていた。ウォルテニア半島の経済的価値は上昇していたが、貴族たちは税収を重視し、その潜在的な力を軽視していた。また、亮真が平民出身かつ他国民であることも不利と見なされていた。だが、実際にはザルツベルグ伯爵軍は、初日から手痛い損害を受け、完全な勝利には至っていなかった。
貴族内部の不満と軋轢
イピロスにあるザルツベルグ伯爵の屋敷では、北部十家の当主や世継ぎが戦況を批判し、ロベルトとシグニスを嘲笑していた。ロベルトは自分が次男であることを馬鹿にされ、シグニスも血統を疑われるなど、心無い中傷が飛び交った。さらに、彼らは初戦の敗北や戦果の乏しさを理由に非難され、ロベルトは怒りを露わにした。一方で、シグニスは冷静に状況を分析し、動揺するロベルトを宥めようとした。二日目の戦闘では、御子柴軍の重装歩兵の前に騎兵の多くを失い、敗北を喫していた。
戦略の転換とイピロスへの脅威
戦況が膠着する中、イピロスの外では異変が生じていた。夜間、見張りの兵士たちは城壁の外に人々の影を見つけた。当初は夜襲と疑われたが、実際には大量の難民であった。彼らはローゼリア北部の各地から流れ込み、イピロスを目指していた。難民の波は止まることなく、城門の前に押し寄せた。その中にはエリングランド子爵家の伝令もおり、緊急の報告を求めていた。城門を開くべきか否か、兵士たちは判断を迫られた。
難民の流入と都市の混乱
難民たちは領地を捨て、家族を守るためにイピロスへと逃げ込んできた。父親と娘のように、疲弊しながらも生き延びるために必死で歩を進める者もいた。やがて、都市には限界を超えた数の難民が溢れ、治安が急速に悪化していった。住民たちは難民を敵視し、貴族たちは混乱を収拾できず、各領主は自領の民だけでも受け入れるよう伯爵に嘆願した。しかし、ザルツベルグ伯爵は備蓄が限られていることを理由に拒否し、状況は悪化の一途を辿った。
軍議とザルツベルグ伯爵の決断
戦局が膠着し、内部の混乱が深まる中、ザルツベルグ伯爵はシグニスとロベルトを呼び出し、戦略を問い質した。シグニスは早期停戦を提案し、ロベルトも敵の練度の高さを認めた。しかし、伯爵は未だに戦力的な優位を主張し、降伏を考慮しなかった。難民問題が軍の統制を乱し、戦争の継続が難しくなっているにもかかわらず、伯爵は己の誇りを捨てることができなかった。
御子柴亮真の策略と次の一手
一方、御子柴亮真は別動隊による襲撃で領地を焼き、難民をイピロスへと誘導していた。これは都市の物資を枯渇させ、内部崩壊を引き起こすための計略であった。亮真は難民を戦略的に活用し、イピロスの統治能力を奪うことを目論んでいた。さらに、ザルツベルグ伯爵が停戦に応じないと判断し、次の作戦を準備していた。
イピロス陥落への布石
亮真はすでにイピロス内部にスパイを潜り込ませており、都市内の混乱を引き起こす準備を進めていた。戦闘だけでなく、政治的な策謀も駆使し、戦いを有利に進めようとしていた。ザルツベルグ伯爵の頑なな態度が、北部十家の内部対立を生み、ますますイピロスの防衛を脆弱なものにしていく中、亮真は次の一手を打つべく、密かに動いていた。
第三章 蝗の群れ
城塞都市イピロスの戦局と御子柴亮真の動向
周囲の予想と戦局の変化
イピロス郊外で始まった戦は、予想外の展開を見せていた。御子柴亮真の軍勢は、当初はローゼリア北部の十家連合に敗北すると考えられていた。しかし、戦況は膠着し、十日が経過しても決着がつかなかった。貴族たちはウォルテニア半島の価値を過小評価し、亮真の出自も問題視していた。だが、実際には彼の領地は経済的に成長し、軍も予想以上に強固であった。
ザルツベルグ伯爵邸での緊張
イピロスの中央にある伯爵邸では、戦況についての議論が続いていた。ロベルトとシグニスは他の貴族たちから批判されており、特にロベルトは苛立ちを隠せなかった。初日の戦闘では彼の監視役であったシドニーが討ち取られ、二日目には騎兵部隊が壊滅した。彼らの失態は貴族たちの批判を招き、伯爵家の立場を危うくしていた。
難民の流入と都市の混乱
戦の影響で北部の領民がイピロスに流れ込み、都市の環境は急激に悪化していた。領民の保護を求める貴族たちの圧力に対し、ザルツベルグ伯爵は都市の収容能力に限界があると応じた。内部では食料が逼迫し、住民と難民の対立が激化していた。さらに、城壁の外には無数の難民が溢れ、都市の防衛を圧迫していた。
御子柴亮真の策と戦局の変化
亮真はこの状況を利用し、イピロス内部に潜む者たちを通じて混乱を引き起こす策を練っていた。彼は都市の外に部隊を展開し、内部で不満を抱える者たちを扇動することで、敵の支配を崩そうと考えた。ザルツベルグ伯爵の軍は兵数こそ多かったが、難民問題による食料不足と貴族間の対立によって戦意が低下していた。
ザルツベルグ伯爵の決断
シグニスは早期停戦を提案したが、伯爵はこれを拒否した。彼はまだ兵数の優位を信じ、戦を続行する意志を示した。しかし、シグニスとロベルトは、御子柴軍の練度の高さと戦略の巧妙さから、決戦は不利だと判断していた。敵の兵士たちは統率が取れ、装備も優れており、正面からの勝負では勝ち目が薄かった。
亮真の次の一手
亮真はイピロスを内部から崩壊させるため、忍びを使い、都市内に仕掛けを施していた。また、エレナ率いる軍を動かすかどうかを慎重に検討し、戦局を見極めていた。彼の目的は単なる勝利ではなく、今後の戦いに向けて戦力を温存しつつ、最も効率的な形で敵を崩壊させることにあった。
結末への布石
戦場では亮真の策が着々と進行していた。彼の軍は都市外で圧力をかけ続け、内部では不満を抱える者たちが動き出していた。ザルツベルグ伯爵は都市の堅固な防御に依存していたが、それすらも難民問題によって崩壊しつつあった。やがて、戦況は御子柴亮真の思惑どおりに動いていくこととなる。
第四章 ガラチアの街
光神教団の一団の到着
ローゼリア王国南端にあるガラチアの街へ、光神教団の使者団が到着した。一行は豪奢な馬車を先頭に、純白の鎧を纏った聖堂騎士らが護衛する厳重な隊列を組んでいた。国境の管理官は、事務的に入国を許可し、先導役のロドニーは馬車へと報告へ向かった。馬車の中にはローランド枢機卿が座しており、入国までの遅れに対し寛大な態度を示した。彼は教皇からの勅命を受けた使者であり、ロドニーにとっては重要な後ろ盾の一人であったが、表向きには護衛の立場を崩すことはなかった。
ローゼリア王国の警戒と一行の足止め
このガラチアの街は南部諸王国との国境に接し、歴史的に激しい戦乱を経験してきた拠点である。そのため、入国審査は厳しく、特に国外勢力に対してローゼリア王国は神経質になっていた。光神教団の使者団も例外ではなく、二ヶ月もの間、タルージャ王国側で足止めを受けることとなった。これは、ローゼリア王国が外国勢力の介入を極度に警戒しているためであり、一方で光神教団側も、教皇の命令を受けた以上、容易に引き下がることはできなかった。結果として、ロドニーらは旧知の貴族の伝手を頼り、ようやく入国許可を得ることに成功した。
旅の苦難と飛鳥の苦悩
一行が宿泊する宿屋の一室では、桐生飛鳥が窓際で紅茶を口にしながら、己の立場を思案していた。彼女は異世界から召喚され、ロドニーやメネアの庇護を受けながらこの大地世界を生きていた。しかし、その厚意の裏には、飛鳥を光神教団の影響下に留めようとする意図があることも理解していた。飛鳥は自由を奪われたわけではなかったが、日本での生活とは比べものにならない制約の中で生きていた。
そんな飛鳥の元を訪れた立花は、旅の過酷さを語りつつ、今後の方針について問いかけた。飛鳥にとって、肉親である御子柴亮真に会うべきか、今の立場を維持するべきかは重大な問題であり、容易に決断できるものではなかった。光神教団と亮真の関係は不透明であり、もし敵対することになれば、飛鳥の選択が争いを引き起こす可能性があった。
ウィンザー伯爵邸の危機と浩一郎の決断
一方、ガラチアの街の隠れた宿屋では、御子柴浩一郎が状況を静観していた。彼は組織の支援を受け、この地で動向を探っていたが、予想外の情報がもたらされた。今夜、組織の最強戦力である【猟犬】が、ガラチアの領主ウィンザー伯爵邸を襲撃するというのだ。その理由は、伯爵が何らかの方法で銃火器を手に入れたことであり、組織はその技術の拡散を防ぐため、徹底した行動を取ることを決定していた。
しかし、問題はそこにロドニーやメネアが滞在している可能性が高いことだった。彼らが巻き込まれれば、戦闘に発展し、飛鳥を守る後ろ盾を失うことになりかねない。浩一郎にとって、飛鳥の安全は最優先事項であったが、同時に組織の目的を無視することもできなかった。深い沈黙の後、浩一郎はついに覚悟を決め、刀掛けに手を伸ばした。
エピローグ
怒りの連鎖と城塞都市イピロスの不穏
イピロスの城塞都市では、人々の怒りと憎悪が限界に達しようとしていた。貧民街に建つ酒場では、負傷した男たちが呻き声を上げ、女将や従業員たちが懸命に手当てを施していた。男たちの傷は深く、医者が到着するまで持ちこたえられるかは不明だった。怒りと悲しみが充満するその場では、誰もが今できる最善を尽くしていたが、状況は悪化の一途を辿っていた。
難民との対立と治安の悪化
イピロスには北部各地から難民が押し寄せ、都市の治安は急速に悪化していた。多くの難民が路地裏に身を寄せ、地元住民との間に軋轢が生じていた。食糧や水の分配を巡る不満、生活空間の狭まりが衝突の引き金となり、小さな諍いが積み重なって対立へと発展していた。初めは些細な言い争いだったが、一度火がつくと、双方の敵意は瞬く間に広がり、暴力が日常となりつつあった。
ジャニスと難民との衝突
その日、ジャニスは難民たちへの炊き出しを終え、帰路についていた。彼女に声をかけた難民の若者の意図は不明だったが、その場にいた自警団の若者たちは、彼女が難民に絡まれていると判断した。すぐに言い争いが始まり、騒ぎを聞きつけた周囲の人々が集まり、ついには乱闘へと発展した。初めは殴り合いに過ぎなかったが、次第に石や刃物が持ち出され、争いは命を奪うほどの激しさを増していった。
アランの兄の死と激昂
ジャニスの恋人であるアランが駆けつけた時、彼の兄はすでに重傷を負っていた。酒場の床に倒れた兄は、命が尽きる寸前だった。アランは必死に兄を呼びかけたが、その手からは力が抜けていった。静寂が支配する中、彼の慟哭は誰の心にも深く響いた。ついに彼の兄が息を引き取ると、その場にいた者たちの怒りは爆発し、難民への憎悪が臨界点を迎えた。
暴動の幕開け
静寂を破ったのは、一人の男の叫びだった。彼は怒りを露わにし、難民を受け入れる領主に対しても激しい憤りをぶつけた。その声は瞬く間に酒場中に伝播し、怒りの渦が膨れ上がっていった。憎悪は狂熱へと変わり、人々は立ち上がり、暴動の気運が高まった。そして、その怒りは街全体へと広がり、イピロスにおける戦いの最終局面が迫っていた。
同シリーズ
ウォルテニア戦記シリーズ





























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