どんなラノベ?
学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。
召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。
帝国から逃げれたと思ったら、ローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。
少年少女の奴隷を買って、彼等に武法術を教えて兵士として育成し、半島の希少な魔獣を狩って資金を稼ぐ。
邪魔な海賊のアジトを攻め滅ぼし。
その時に、奴隷にされていたダークエルフと知己を得て貿易を始め。
そして彼等特有の技術で魔剣、魔法防具を量産してもらい兵士の装備をより強固にして、重傷を負ってもダークエルフ特性の薬で快癒させて損耗率下げる事に成功。
そんな兵士達を率いてザルーダ王国への援軍に行き、オルトメア帝国の侵攻を止め。
辺境伯と北部十家との戦争にも勝利。
読んだ本のタイトル
#ウォルテニア戦記 XV
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏
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あらすじ・内容
北部動乱を勝ち抜き、占領した旧ザルツベルグ伯爵領を拠点とするため着々と手を打つ御子柴亮真は、シグニスとの会話から、迫りくる脅威の到来を予感する。
ローゼリア王国の貴族院が、きっと亮真の戦争行為を罪に問うであろうと。
貴族たちとの本格的な開戦に備え、亮真が次に面会を求めたのは豪商・クリストフ商会のシモーヌだった。
そして、虜囚として監禁されていたロベルトはシグニスとの和解の果てに、ある決断をする。
「小説家になろう」発の王道ファンタジー戦記、亮真に新たな敵と味方が現れる、第15巻!!
ウォルテニア戦記 XV
感想
伯爵領を占領し、選民意識が強く有能では無い北部十家の領主、騎士達をほぼ皆殺ししてしまう。
唯一、御子柴男爵家に取り立てられたのが、武人の2名と伯爵夫人の商家のみ。
それぞれが現状に折り合いを付けて御子柴男爵家の一員になるのだが、、
その布石にされた、十家の領民の扱いが気になる。
しっかり保護しているのだろうか?
あまりにも杜撰な扱いをしていたら反乱を起こされるぞ?
そして、女王と貴族達との暗闘はどうなるのだろうか?
まぁ、中央からしたら完全に私闘だし、北部を御子柴家に任せる事なんて出来ないよな、、
その辺りをどうするのか?
そもそも、御子柴家は叛逆する気満々だからな?
自国の法律に従うはずが無いって意識があるのだろうか?
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備忘録
プロローグ
赤星亭での静かな対峙
須藤秋武が王都ピレウスの雑踏に姿を消してから数時間後、【赤星亭】の一室では、ローランド枢機卿とリカルドが無言で向かい合っていた。リカルドは光神教団に仕える密偵であり、枢機卿の影の仕事を一手に担ってきた男である。彼は枢機卿から絶大な信頼を得ていたが、今回の尾行の失敗がその関係を揺るがす可能性を秘めていた。
光神教団の影響力と内部構造
リカルドは光神教団が単なる宗教組織ではなく、西方大陸の国家と同等、あるいはそれ以上の影響力を持つ巨大組織であることを理解していた。信者は国境を超えて広がり、教皇の号令一つで戦場へ赴くほどの忠誠心を持つ。一方で、内部の権力闘争は熾烈を極め、単なる宗教組織とは言い難い実態を備えていた。
尾行の失敗とリカルドの覚悟
リカルドは須藤の尾行に失敗したことを深刻に受け止め、自らの責任を痛感していた。地の利を得られなかったこと、急な命令に対応する準備が不足していたこと、そして何より須藤秋武が単なる素人ではなかったことが原因であった。しかし、それらを言い訳にするつもりはなかった。彼は短剣に手をかけ、責任を取る覚悟を決めていた。
ローランド枢機卿の寛容な対応
しかし、ローランド枢機卿はリカルドの失態を責めることはなかった。むしろ、急な仕事を命じたことを詫び、彼らの努力を労った。須藤が並外れた手練れであったこと、そして王都ピレウスが教団の勢力圏外であることを考慮すれば、尾行の失敗はやむを得ないと判断したのである。さらに、リカルドの存在を今後も必要とすることを明言し、彼の忠誠心を揺るがせなかった。
王都での諜報網構築
ローランド枢機卿は、王都ピレウスでの諜報網を構築するようリカルドに命じた。この地における教団の影響力は限定的であり、情報収集には資金と人脈が必要となる。リカルドはその規模を懸念したが、枢機卿は資金の調達を自ら請け負うと明言し、計画の実行を指示した。リカルドはそれに従い、速やかに行動を開始した。
須藤秋武との因縁
リカルドが部屋を去った後、ローランド枢機卿は須藤秋武の存在について深く考え込んでいた。彼とは二十年来の関係であり、多額の寄付を受けて孤児院の運営を助けてもらった過去がある。しかし、その資金提供の目的が何であったのか、今となっては疑問が残った。須藤の動きは光神教団にとって利益をもたらすことが多かったが、同時に組織の根幹を揺るがすほどの情報を握っていることが明らかとなった。
御子柴亮真と新たな脅威
枢機卿が受けた密命は、御子柴亮真の調査とその影響力の測定であった。しかし、須藤がローランドに持ちかけた提案は、御子柴にとって利益とはならない内容であった。須藤が御子柴と敵対しているのか、それとも別の目的があるのかは不明だったが、確かなことは、御子柴の存在がローゼリア王国、ひいては西方大陸全体に嵐を巻き起こすという点であった。
決断と行動
ローランド枢機卿はため息をつき、聖都への使者の派遣を決意した。光神教団の兵力ではこの事態に対応しきれないと判断し、増援を求める必要があると考えたのである。そして、羽ペンを手に取り、王都ピレウスの夜の闇の中で新たな命令を記した。
第一章 汚された矜持
聖堂騎士団の剣術とロドニーの鍛錬
【赤星亭】の庭で、ロドニー・マッケンナは剣を振り続けていた。彼の動きは、光神教団の聖堂騎士団に伝わる剣術を極限まで研ぎ澄ましたものであり、その技の冴えはメネア・ノールバーグをも唸らせるほどであった。剣術は九十九の型で構成され、実戦の中で磨かれてきた。だが、この剣術の真価は、型を組み合わせて連携させた時に発揮される。ロドニーの鍛錬は、その連携をより完璧なものとするためのものであった。
庭の変貌と宿主の苦情
【赤星亭】の庭は、本来は宿泊客が安らぎを得るための場所であった。しかし、ロドニーが鍛錬の場として使用するようになってから、その景観は一変した。踏み荒らされた芝、剣の打ち込みで薙ぎ払われた花壇。宿の主人は苦情を申し立てたが、ローランド枢機卿は迷惑料として多額の金銭を支払い、問題を表面化させないようにしていた。ロドニー自身は、ただ広く人目のつかない場所を探していただけであり、意図的に庭を荒らしたわけではなかったが、結果としてこの場所は彼の専有する鍛錬場と化していた。
ロドニーの変化とメネアの懸念
メネアは、ロドニーが以前と異なる様子を見せていることに気づいていた。彼は元々、誇り高く、剣の道を追求する求道者であったが、ガラチアのウィンザー伯爵邸での襲撃事件以来、何かが変わってしまった。特に、王都ピレウスに向かう途中で遭遇した盗賊団との戦闘では、かつての慎重さが失われ、ためらいなく敵を斬り伏せた。その中には、人質に取られた商人を盾ごと突き刺すという選択も含まれていた。結果として商人は助かったものの、メネアはその冷徹な判断に恐怖を覚えた。
極限の鍛錬と自責の念
ロドニーは夜通し剣を振り続け、限界を超えた鍛錬に没頭していた。それは鍛錬というよりも、自らを罰する行為に近かった。メネアは彼を止めようとしたが、ロドニーはその言葉を拒絶した。彼の心を支配していたのは、あの夜、自分を斬った襲撃者に対する復讐心と、命を奪われなかったことへの屈辱であった。
ウィンザー伯爵邸襲撃の真相
ロドニーの変貌の原因は、ウィンザー伯爵邸での襲撃にあった。彼の腕を一刀の下に斬り落とした者の正体は不明であったが、その技と剣の切れ味から、メネアはある人物を疑っていた。それは、裏大地世界から召喚された少女・桐生飛鳥と関係のある存在、すなわち御子柴浩一郎であった。もし彼が光神教団を敵視する「組織」に属しているのであれば、その力は光神教団と同等か、それ以上かもしれないという恐れがメネアの胸をよぎった。
御子柴亮真との関係
さらに、メネアは新たな疑問を抱えていた。ウィンザー伯爵邸の襲撃者が御子柴浩一郎であるならば、なぜ彼は桐生飛鳥を連れ去ろうとしなかったのか。そして、ローゼリア王国の新興貴族となった御子柴亮真という男の存在も、無関係とは思えなかった。二人は偶然同じ苗字を持つのか、それとも意図的に何らかの関係があるのか。
メネアは北東の空を見上げ、その疑問の答えを求めるように静かに目を閉じた。
第二章 囚われの戦人
赤い月と囚われの身
曇天の夜とロベルトの不安
ローゼリア王国の城塞都市イピロスを、赤く染まった月が照らしていた。ロベルト・ベルトランは、この夜が不吉な兆しであると感じながら、鉄格子の向こうに広がる景色を睨んでいた。戦は御子柴男爵側の勝利に終わったと聞かされていたが、城の外で何が起きているのかは分からなかった。高級なブランデーを呷りながら、彼は籠の鳥となった自らの状況を思い返した。
ベルトラン男爵家の立場とロベルトの境遇
ロベルトの実家であるベルトラン男爵家は、王国北部に領地を持つが、決して裕福な家ではなかった。主要産業は農業と畜産であり、貿易や鉱業による収益はほぼ皆無だった。領主は慎ましい生活を送りながらも、貴族としての体面を保たねばならず、その負担が重くのしかかっていた。さらに、ロベルト自身は嫡男ではなく、予備として扱われていたため、家族の中でも立場が微妙だった。彼は戦場での武功によってその実力を示してきたが、家族との関係は冷え切っていた。
捕虜としての異例の待遇
ロベルトが幽閉されているのは、イピロス城内の貴人専用の部屋であった。食事は豪華で、寝具は清潔に保たれ、風呂や書物も自由に使えた。唯一の難点は、世話をするのが武装した騎士たちであり、彼の行動が厳しく監視されていることだった。この異例の待遇に彼は疑念を抱いていた。捕虜でありながら、何故これほどの配慮がされるのか。その理由を考える中で、身代金や交渉材料として利用される可能性が思い浮かんだが、ベルトラン男爵家が彼を助けるとは到底思えなかった。
シグニスとの再会
そこへ訪れたのは、親友でありながら彼を裏切ったシグニス・ガルベイラだった。憔悴しきった表情を浮かべる彼を見て、ロベルトは苦笑した。シグニスは裏切った側であるにもかかわらず、罪悪感に苛まれている様子だった。ロベルトは彼を責めることなく、むしろ酒を勧めた。だが、シグニスは自らの裏切りを認めながらも、ロベルトが何も言わないことに困惑していた。
エルメダの存在とシグニスの動機
シグニスの裏切りの背景には、エルメダという女性の存在があった。彼女はかつてガルベイラ男爵家に仕えていた元メイドであり、シグニスにとっては母のような存在だった。彼女が御子柴男爵家に人質として囚われたことで、シグニスは選択を迫られたのだ。しかし、驚くべきことに、エルメダ自身が御子柴男爵家でメイドとして働くことを選んでいた。彼女の行動は、シグニスの将来を守るための決断だった。
ガルベイラ男爵家の変革
さらに、シグニスはガルベイラ家の家督を継ぐことになっていた。これは彼の意思ではなく、御子柴男爵の命令によるものだった。御子柴は、シグニス以外のガルベイラ家の人間を生かしておくつもりはなく、もし彼が家名を継がないならば、一族は断絶させられる運命にあったのだ。ロベルトはこの話を聞き、御子柴亮真という男がいかに徹底した支配戦略を持つ人物であるかを再認識した。
御子柴男爵の計略
御子柴亮真は、ローゼリア王国北部の貴族たちの内情を詳細に把握し、計画的に戦を仕掛けていた。その準備は、ウォルテニア半島の領有が決まった直後から始まっていた可能性が高かった。戦争の目的が単なる領土拡大ではなく、徹底した支配と統制にあることをロベルトは悟った。
ロベルトの決断
シグニスはロベルトに対し、御子柴男爵に仕えるよう誘った。その言葉には、ただの勧誘ではなく、長年押し隠してきた本心が込められていた。ロベルトはこの誘いを受け入れるかどうかを一考し、ある条件を提示した。それは、御子柴男爵が自分以上の武人であることを証明することだった。彼は戦場こそが自らの生きる場所であり、主君として仕えるならば、それにふさわしい人物でなければならないと考えていたのだ。
第三章 未来図の指し示す先
政務に追われる領主
イピロスの支配者となった御子柴亮真は、日々膨大な政務に追われていた。天候に恵まれた穏やかな日でも、彼のもとには安寧が訪れることはなかった。朝から書類と格闘し、ようやく終わりが見えたかと思えば、新たな文書が積み上がる。この状況に、彼は賽の河原の石積みを連想し、終わりの見えない労働に嫌気が差していた。信頼できる家臣たちを総動員しても、領主としての判断を求められる案件は後を絶たず、彼の負担は増すばかりであった。
ユリア夫人との会談
そんな中、ザルツベルグ伯爵夫人であるユリアが亮真のもとを訪れた。彼女は喪服姿で現れ、夫を討ち取った相手である亮真に対しても穏やかな態度を崩さなかった。彼女の父ザクス・ミストールの恭順を受け入れたことへの礼を述べ、今後は忠誠を誓う意志を示した。亮真もまた、イピロスの占領が円滑に進んだのは、ユリアとザクスの協力によるものと認め、その貢献を評価した。
新たな統治方針と商会の影響
亮真は、新たな統治の一環として経済改革を進めようとしていた。これにより、商会連合の在り方も変わらざるを得なかった。特に、利息の上限設定や契約内容の規制が商人たちに与える影響は大きく、ユリアはその変革の意味を即座に理解した。彼女は一抹の不安を抱えつつも、この新たな体制がもたらす可能性に興味を持っていた。
ザクスの見解とユリアの決断
ユリアは商館に戻り、亮真の意図を父ザクスに伝えた。ザクスは彼の発想の独自性と実行力を高く評価し、自らの商会の発展のために亮真と手を結ぶことの重要性を再認識した。そして、かつて対立していたクリストフ商会との関係修復が必要であると判断し、その役目をユリアに託した。ユリアは父の提案に複雑な心境を抱きながらも、新たな時代に適応するために動き出す決意を固めた。
第四章 双刃の主
ユリア夫人の訪問
ユリア夫人は、父であるザクス・ミストールとの会談を経た翌日、クリストフ商会の商館を訪れた。目的は亮真との会談内容を伝えることと、今後の共存について話し合うためであった。彼女は約束の時間より少し早く到着し、応接室へと案内された。豪奢な部屋の調度品を目にしながら、商会側の対応を探るが、意外にも敵意を強く感じることはなかった。過去の圧力によりシモーヌたちの恨みを買っているという自覚があったが、商会側の態度は予想に反していた。
シモーヌとの再会
扉が開くと、そこには白いドレスをまとったシモーヌ・クリストフが立っていた。ユリア夫人は立ち上がり、急な面会を快く受け入れたことに感謝を述べた。その瞬間、シモーヌの表情がわずかに動いた。ユリア夫人は、これまで数多くの交渉を経験してきたがゆえに、そのわずかな変化を見逃さなかった。シモーヌは礼儀正しく座るよう促し、本題へと入った。
過去の因縁とザルツベルグ伯爵
ユリア夫人とシモーヌは、かつては競争相手でありながらも一定の交流があった。しかし、ユリア夫人がザルツベルグ伯爵に嫁いだことで、その関係は崩れた。ザルツベルグ伯爵は父への強い憎悪を抱き、貴族としての家名すら否定していた。そして、彼はミストール商会を商会連合の長に据え、クリストフ商会を徹底的に排除しようとした。結果として、ミストール商会とクリストフ商会の対立が深まり、ユリア夫人もその渦中に巻き込まれることになった。
和解の兆し
シモーヌは、亮真が両商会の協力を望んでいることを理解していた。ミストール商会と対立しても商業的に得るものは少なく、クリストフ商会としても最善の選択は共存であると考えていた。彼女はお茶の準備を命じ、ユリア夫人にリラックスするよう促した。そして、二人の間には次第に穏やかな空気が流れ始めた。
亮真の狙い
ユリア夫人は、亮真の動向について疑問を抱いていた。彼は北部十家の領地を焼き討ちし、難民をイピロスに留め置いていた。統治を考えるなら悪手とも思えるその行動が、彼の狙いを計り知れないものにしていた。シモーヌは、それが貴族院との戦に備えた布石であると推測した。しかし、それだけではなく、彼の真の目的がさらに先にあるのではないかと示唆した。
英雄か、大馬鹿者か
シモーヌの推測を聞いたユリア夫人は驚愕した。亮真が貴族院との戦いを見据えていることは想定していたが、その先に何を目指しているのかは理解しきれなかった。しかし、これまでの行動を振り返ると、すべてが計算されたものだと気づく。ユリア夫人とシモーヌは、亮真が不世出の英雄か、それとも途方もない大馬鹿者なのかを確かめることになると悟った。
ロベルトとの決闘の前夜
亮真は、自室のソファーで横になりながら、翌日に控えたロベルト・ベルトランとの一騎打ちについて考えていた。この試合は単なる手合わせではなく、ロベルトが自らの主にふさわしいかを見極めるためのものだった。しかし、亮真はザルツベルグ伯爵との戦いで負ったダメージを完全には回復できていなかった。彼はマルフィスト姉妹の手を借り、身体の調整を進めていった。
チャクラの解放と亮真の決意
亮真は、自身の内なる力を確かめるべく、マルフィスト姉妹の手を借りながらチャクラを開放した。ほんの一瞬ではあったが、第七のチャクラまで到達したことで、彼の身体は以前よりも強化されていた。完全な回復ではないものの、戦いに挑むだけの準備は整った。彼は槍を手に取り、明日の決闘に向けて静かに決意を固めた。
決闘の開始
正午、ザルツベルグ伯爵邸の中庭で、亮真とロベルトは向かい合った。決闘の立会人はシグニス・ガルベイラ。観客はおらず、周囲は伊賀崎衆によって厳重に警護されていた。ロベルトは亮真に敬意を表し、試合を受け入れてくれたことに感謝を述べた。そして、決闘の幕が切って落とされた。
激戦の展開
ロベルトは戦斧を振り下ろし、亮真は槍でそれを受け止めた。近距離での攻防が続く中、亮真の槍の速さがロベルトを圧倒した。戦場で鍛えたロベルトの技術をもってしても、亮真の突きには対応しきれなかった。ロベルトは一撃に全てを懸ける覚悟を決め、猛攻を仕掛けた。しかし、亮真は冷静に対応し、ロベルトの攻撃を見事にいなしてみせた。
決着
ロベルトの渾身の一撃は、亮真の槍によって弾かれ、隙を突かれて倒れ込んだ。彼は最後の反撃を狙ったが、すでに亮真の槍は彼の顔に突きつけられていた。シグニスが決着を宣言し、ロベルト・ベルトランは敗北を認めた。その瞬間、ザルツベルグ伯爵家の双刃と謳われた武人が、亮真のものとなったのである。
エピローグ
密使の訪問と手紙の受領
御子柴亮真はローゼリア北部を統治し始めて二ヶ月が経とうとしていた。統治者としての経験を積み、自信を持ち始めた頃、一人の男が王都ピレウスから馬を走らせ、彼の元を訪れた。男は三十代半ばの平凡な容姿をしていたが、密使としては適任であった。彼が持参したのは、黒い蝋で封印された手紙だった。亮真は手紙の内容を確認することなく、それが形式的なものであることを理解していた。そして、密使の振る舞いから彼の本当の価値を見極めようとした。
密使の素性と疑念
男はベルグストン伯爵からの信頼を得た人物であったが、場の空気を読む能力に欠けていた。密使でありながら、自らが運ぶ情報に興味を示し、軽率な発言をしたことが亮真の警戒心を刺激した。裏社会で生きる者としては不適切な行動であり、それが単なる無知なのか、計算された行動なのかを見極める必要があった。亮真は、この男が伯爵に命じられたのではなく、独自の意図を持って行動している可能性を考えた。
カールの過去と現在
カール・アッカーマンは、かつてドイツの医大生だったが、異世界に召喚された後、戦禍に巻き込まれた。オルトメア帝国によって召喚国が滅ぼされ、彼は放浪の末に組織と呼ばれる集団に加わった。彼は戦闘向きではなく、その平凡な容姿を活かして密偵として活動していた。ローゼリア王国ではベルグストン伯爵家に仕え、長年にわたり情報収集を行ってきたが、最近になって情勢が変わり、組織から御子柴男爵領の調査を命じられた。
情報収集と新たな発見
カールは、亮真が北部十家の領内を焼き討ちし、イピロスに難民を押し付けたのが単なる兵糧攻めではなく、戸籍管理を目的とした計画の一環であることを知った。彼は亮真が現代日本のシステムを導入しようとしていることを察し、その影響を分析した。さらに、ギルドの技術を活用する可能性を考えたが、交渉か強奪か、亮真の行動が予測不能であることに懸念を抱いた。
襲撃と捕縛
カールは須藤に報告するため南下していたが、尾行に気付くのが遅れた。森の中で襲撃され、手裏剣に仕込まれた毒によって動けなくなった。襲撃者の指揮を執っていたのは咲夜であり、彼女は亮真の命令を受け、カールの素性を暴こうとしていた。カールの所持品から詳細な北部の地図が見つかり、亮真の直感が正しかったことが証明された。
亮真の対応と警戒
深夜、亮真は厳翁からカールが密偵であることを報告される。彼は密偵の数が増えていることに憂慮し、今後の対策を講じる必要を感じた。また、カールの持っていた地図に地球の数字が混在していることから、彼が異世界の出身者である可能性を疑った。
貴族院の召喚状と策謀
七日後、ローゼリア王家の紋章を掲げた騎士団がイピロスに到着し、亮真に貴族院への召喚状を届けた。リオネやボルツは、召喚状には罪状の記載がなく、亮真を証人として出廷させる形を取っていることに疑念を抱いた。貴族院の目的は、王都におびき出して罪に問うことにあった。
ハルシオン侯爵の思惑
一方、貴族院院長であるハルシオン侯爵は、亮真の処遇に頭を悩ませていた。貴族たちは彼に対する報復を求めていたが、娘であるシャーロットの進言により、直接的な武力行使を避け、法の場で裁く方向へと舵を切った。彼は計画通りに進めば、貴族たちの不満を抑えつつ、亮真を排除できると考えていた。
亮真の決意
亮真は貴族院の動きが予想通りであることを確認し、対抗策を講じる準備を進めた。円卓を囲む仲間たちと共に、彼は王都への出廷を決意し、新たな戦いに向けて動き出した。
同シリーズ
ウォルテニア戦記シリーズ





























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