小説「ウォルテニア戦記 XVI(16)」王家と御子柴家の暗闘が始まる 感想・ネタバレ

小説「ウォルテニア戦記 XVI(16)」王家と御子柴家の暗闘が始まる 感想・ネタバレ

簡単な感想

戦が無かったが、色々と暗闘が勃発。
女王側の暗殺者は御子柴側に軽く捻られる。

読んだ本のタイトル

#ウォルテニア戦記  XVI
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏

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あらすじ・内容

北部動乱でザルツベルグ伯爵を滅ぼしたことを問題視する貴族院に召喚された、御子柴亮真。

ローゼリア王国に反旗を翻すことを心に決めた亮真は、中間派の貴族を取り込むために大がかりな夜会を計画する。

繁栄をはじめたウォルテニア半島の財力を見せつけ、貴族たちの度肝を抜く亮真だが、その陰で亮真を暗殺するようメルティナから命じられた騎士団が王都セイリオスに入りつつあった……。

ローゼリア王国に再び内乱の嵐が吹き荒れる!!

ウォルテニア戦記 XVI

感想

勝手に他家と戦争を起こし、ザルツベルク伯爵と北部十家の当主達を全員殺し。

大半の家は断絶状態になってしまった。

そんな事をしたので首都の貴族院から呼び出しを受ける。

その反撃のための布石を色々と打ってるこの巻。

白き軍神エレナ、ベルグストン伯爵、ゼーレフ伯爵と共に今迄付き合いの無かった、ゲルハルト侯爵派閥から弾かれた貴族達を中心に関係を構築しようとパーティーを開催する。

それに出される料理や皿等で御子柴家の力を示し、敏感な貴族は御子柴家の力に戦慄する。

さらに御子柴家に尻尾を振ったと決め付けた騎士達がパーティーに来た貴族を襲うのだが、警護をしていた忍達が相手を見つけ、戦力を呼び込んで殲滅してしまう。

お陰で、招待した貴族達には死亡者は出なかったがかなり際どかった貴族も居るから貴族達はかなり困惑していた。

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備忘録

プロローグ

故郷の変化とディルフィーナの帰還

変わりゆく景色と故郷への想い


北の山脈に雲がかかり、陽光が森の木々を照らしていた。かつての魔境は結界柱によって安全が確保され、街道には石畳が敷かれ、セイリオスの街へと続いていた。ディルフィーナは懐かしさと哀愁を感じながらも、変わり果てた風景に戸惑いを覚えた。以前は怪物の襲撃に常に備えねばならなかったが、今では旅人が安全に往来できる環境が整っていた。

黒エルフの歴史と苦難

ディルフィーナの父であるネルシオス率いる黒エルフの一族は、四百数十年前の聖戦で敗北し、ウォルテニア半島へ逃れた。以降、彼らは人間の追及を逃れながら厳しい環境で生き抜いてきた。ディルフィーナ自身もまた、怪物との戦いや飢えによる友人の死を経験し、この地での過酷な日々を知る者であった。彼女にとって故郷は苦難の象徴であったが、それでも変わらぬ愛着を抱いていた。

ディルフィーナと御子柴亮真の関係

ディルフィーナは御子柴亮真との関係について考えを巡らせた。彼との出会いが運命を変え、今では彼の近習として寝室の警護を任されるほどの信頼を得ていた。しかし、黒エルフの立場を考えれば、彼との関係が深まることは容易ではなかった。彼女の父であるネルシオスもまた、亮真との婚姻を望んでいたが、その実現には多くの障壁があった。

ウォルテニア半島の新たな秩序

ディルフィーナが率いる【黒蛇】は、亮真の側近として活動していた。戦場では伊賀崎衆とともに奇襲や工作活動を担い、影の部隊としての役割を果たしていた。しかし、黒エルフの少数精鋭部隊であるため、大規模な戦局を左右するほどの戦力ではなかった。彼女たちは戦場での武功よりも、亮真の護衛や密命を遂行することで、存在価値を示していた。

ネルシオスとの再会と新たな任務

村に戻ったディルフィーナは、父ネルシオスと再会した。彼は娘の無事を喜びながらも、御子柴亮真との関係について慎重な姿勢を示した。亮真は黒エルフに対し優遇策をとっていたが、それは一方的な厚意ではなく、厳格な交渉のもとでのものであった。ネルシオスは亮真の戦略眼と為政者としての手腕を高く評価しつつも、決して侮れない相手であると警戒していた。

交易と新たな課題

亮真からの依頼により、ネルシオスはヨツユダケや月光草といった貴重な薬草の供給を確保していた。これらは人族には容易に入手できない品であり、ウォルテニア半島における交易の重要な資源となっていた。また、亜人との交渉を進めるという難題も抱えていたが、シモーヌの協力により取引を成立させ、必要な品を揃えていた。

次なる任務への決意

ディルフィーナはネルシオスとの会話を終え、すぐに王都へ向かう準備を整えた。今回の輸送任務は、御子柴亮真の信頼をさらに高める絶好の機会であった。彼女は深く息を吸い込み、己の使命を果たす決意を新たにした。

第一章  見えない悪意

王都の門前での対峙

黒一色の鎧を身にまとった三百名の兵士が、王都ピレウスの城門前に整然と並び立っていた。彼らは朝から直立不動のまま待機し、隊列を乱さぬ姿勢を維持していた。掲げる旗には、双頭の蛇の意匠が施されており、その象徴が持つ意味を王国の者なら誰もが理解していた。門を守る衛兵たちは警戒の色を隠せなかったが、貴族院の正式な許可なしに武装した兵士を入城させることは不可能であった。

亮真と兵士たちの試練

御子柴亮真は、兵士たちを長時間待機させる処遇に不満を抱きながらも、横暴な振る舞いを避け、粘り強く待ち続けた。彼の指揮する兵士たちは、精鋭であり、黒い鎧兜に統一された装備を身に着けていた。その武具はエルフの付与法術が施され、軽量化と温度調整が可能な特殊なものだった。彼は兵士の消耗を防ぐため、細やかな配慮を施していたが、それでも移動と待機の疲労は蓄積していた。

王都入城の許可

ようやく城からの許可が下り、中隊長が恐怖に震えながら亮真に通行を告げた。亮真はその態度に憐れみを覚え、報復する意図はなかった。衛兵たちは命じられた通りに職務を全うしただけであり、亮真は彼らの立場を理解していた。彼は騎乗したまま門を通過し、懐から金貨の入った袋を中隊長へと投げ渡した。

ルピス女王の懸念

その夜、王城の執務室では重苦しい空気が漂っていた。ルピス女王は、亮真が驚くほど素直に貴族院の召喚に応じたことに困惑していた。側近のメルティナは、彼が潔白を証明するために来たと報告したが、彼の真意を測りかねていた。貴族院の呼び出しに応じるのは当然の行為だが、これまでの亮真の行動からすると、単純に従うはずがないと考えていた。

御子柴亮真の脅威

ルピスは、亮真が北部を支配することを危険視していた。貴族院の召喚を利用して彼を排除する策が進められていたが、彼の動向は読めなかった。彼は短期間で領地を統治し、貴族たちの支持を得ていた。王国の三分の一に匹敵する領地を持つ彼が独立を目指す可能性は高く、王国にとって看過できない存在となっていた。

メルティナとミハイルの策謀

深夜、メルティナは軍務に携わるミハイルを訪ね、亮真の行動について協議した。ミハイルは、ザルツベルグ伯爵家の屋敷で夜会が開かれるという情報を入手していた。その準備が急ピッチで進められており、ユリア・ザルツベルグ伯爵夫人が亮真と手を組んだ可能性が浮上していた。ミハイルは、夜会が御子柴亮真の力を誇示する場となることを懸念しつつも、それを利用して亮真に与する貴族たちを洗い出す策を考えていた。

暗闘の始まり

メルティナは、この機会を利用し、亮真に協力する貴族を排除することを提案した。ミハイルもその考えに同意し、王国の安定のために必要な手段を講じることを決意した。二人は夜通し策を練り、王国の未来を左右する決戦に向けて動き出した。

第二章  王者と覇者

王都の変わらぬ日常と水面下の動き

王都ピレウスに御子柴亮真が到着してから数日が経過した。大通りには笑顔の人々が行き交い、行商の隊列が次々と城門を潜り、市内を進んでいく。表面的には平穏が続いていたが、その裏では既に大きなうねりが生じつつあった。このうねりは次第に拡大し、やがて王都全体を飲み込もうとしていた。

森の屋敷での密談

王都郊外の森にひっそりと佇む屋敷で、二人の人物が会談していた。一人は老け顔の青年、もう一人は栗色の髪を美しく結い上げた妙齢の美女であった。彼らは屋敷の執務室で寛ぎながら、まるで自らの所有物であるかのように振る舞っていた。しかし、実際にはこの屋敷の主はトーマス・ザルツベルグ伯爵であり、彼は既に亮真の手によって討ち取られていた。現状、この屋敷の主人は夫人であるユリア・ザルツベルグが務めているが、二人の立場は客人であるにもかかわらず、明確な立場の差が存在していた。それは、王者と臣下としての関係であった。

夜会の準備と街道整備の課題

亮真は目の前に座るシモーヌ・クリストフへ夜会の準備状況を尋ねた。シモーヌによると、ウォルテニア半島からイピロスまでの街道はボルツによって整備されていたが、イピロス以南の街道は北部十家の討伐の影響で補修が進まず、予定よりも日数を要していた。しかし、夜会には十分間に合うと報告された。亮真は街道の維持に関する問題を改めて認識し、貴族が果たすべき義務について考えを巡らせた。

料理人の選定と疑念

夜会の食材の確保に問題はなかったが、楽団と料理人の手配についてシモーヌは慎重な態度を見せた。特に、推薦された料理人・鮫島菊菜の経歴に対し、シモーヌは違和感を抱いていた。彼女はエルネスグーラ王国の首都ドライゼンで商会の料理長を務めた実績を持つが、その名からして亮真と同じく地球出身者である可能性が高かった。この偶然が単なる巡り合わせか、それとも何者かの作為かを判断するため、亮真はシモーヌの直感を確認した。シモーヌは証拠こそないが、彼女の存在に何かしらの意図を感じ取っていた。

夜会と貴族院の審問を控えた不安

シモーヌは夜会に向けた準備を進める一方で、貴族院の審問が迫る中、果たしてどれほどの貴族が亮真側に靡くのかを懸念していた。亮真はその不安を理解しつつも、既に様々な準備を進めており、状況を見極めながら計画を実行する意志を固めていた。彼にとって、この夜会は単なる宴ではなく、貴族達の動向を測るための試金石となるものであった。

新たな支持者の参入

その夜、亮真はベルグストン伯爵と密談を交わしていた。伯爵は義弟エルナンの命を救われたことに対する謝意を述べつつ、正式に臣従の意思を示した。彼の決断はローゼリア王国の政治構造を大きく揺るがすものであり、今後の展開に影響を与えることは明白であった。これにより、亮真は新たな支持者を得たが、同時に王国内部での対立も激化することが予想された。

王国の混乱と貴族の動向

国内情勢は不安定化し、貴族達は各々の立場を模索しながら動いていた。重税による反発で南部の村々が蜂起し、王都近郊も次第に不穏な空気に包まれていく。貴族達の間ではルピス女王の統治能力に疑念を抱く者が増え、代わりにラディーネ・ローゼリアヌスを擁立しようとする動きが加速していた。亮真はこうした情勢を冷静に分析しつつ、自らの戦略を進めていた。

密談と新たな計画

ベルグストン伯爵との密談を終えた後、亮真はゼレーフ伯爵と対話を交わした。ゼレーフ伯爵は当初、主君を変えることに葛藤を抱えていたが、亮真の計画を聞くことで自身の決断が正しかったことを再確認した。そして、オルグレン子爵を訪ねることで、さらなる支持基盤を固める方針を決めた。

夜会を前にした不穏な空気

夜会を控えた状況で、亮真は敵対勢力が自らの面目を潰すために動く可能性を予測していた。特に、舞踏会の場で何らかの策略が仕掛けられることを想定し、対策を練っていた。亮真にとって、この夜会は単なる社交の場ではなく、王国の未来を決定づける重要な戦いの舞台となることが明白であった。

第三章  宴の始まり

馬車での移動と対照的な二人の人物

夜の街道を進む馬車には二人の人物が乗っていた。片方は四十代後半の巨漢で、まるで熊のような体格を持ち、戦傷の名残で右目を覆う眼帯をしていた。もう一方の人物は中性的な美貌を持つ青年で、金糸の刺繍が施された上質な衣服を纏っていた。二人は王都郊外にある目的地へ向かっていたが、その道中、巨漢の男は不満を口にしていた。成り上がり者の男爵が自分たちを招待するとは何事か、と憤っていたのである。

貴族の矜持と御子柴男爵家の影響力

巨漢の男はマクマスター子爵と呼ばれ、ローゼリア王国の名門貴族の一員であった。かつては王国の宰相と結びつき栄華を誇ったが、今ではその威勢も衰えつつあった。それにも関わらず、彼は貴族の格式を重んじ、成り上がり者である御子柴男爵家を見下していた。しかし、青年は冷静に状況を分析し、御子柴男爵家が単なる成り上がりではなく、戦場での実績を積み重ねてきたことを指摘する。さらに、御子柴男爵の招待状には有力貴族の署名が添えられており、無視できるものではなかった。

夜会の開催と迎え入れられる貴族たち

到着した屋敷では、絹のメイド服を着た使用人たちが整然と並び、礼儀作法に秀でた出迎えを見せた。御子柴男爵家の主が直々に迎える中、マクマスター子爵はその態度を観察し、成り上がり者とは思えない統制の取れた対応に驚きを隠せなかった。屋敷の中へ案内されると、そこには王宮の謁見の間にも匹敵する広間が広がり、多くの貴族たちが談笑していた。その場には、過去に勢力を誇った名門の貴族たちも姿を見せており、マクマスター子爵は御子柴男爵の夜会が単なる社交の場ではなく、政治的な意味を持つことを察した。

再会する旧友と貴族社会の変化

会場の隅で、マクマスター子爵は久しく会っていなかった従兄弟のオルグレン子爵と再会した。彼は洗練された貴族であり、王都の社交界に顔が利く人物だった。彼との会話の中で、今回の夜会が単なる宴席ではなく、御子柴男爵家が貴族社会の力関係を変えようとしていることが明らかになった。さらに、用意された酒や料理の質の高さから、御子柴男爵家が並々ならぬ財力を持っていることも示されていた。

夜会の目的と策略

夜会の主催者である御子柴亮真は、参加した貴族たちに向けて挨拶を述べ、乾杯を促した。その料理には、各地の名産品を巧妙に取り入れたものが並べられており、それぞれの貴族に自領の価値を再認識させる仕掛けが施されていた。これにより、彼らは御子柴男爵家が主導する交易圏への参入を考えざるを得なくなる。夜会の場を利用し、貴族たちを取り込む巧妙な策略が張り巡らされていたのである。

料理人・鮫島菊菜の視点と策略の背景

料理人の鮫島菊菜は、夜会の料理が単なる饗応ではなく、タレーランの逸話に倣った計算された演出であることを察していた。新鮮なスズキのパイ包み焼きや、秘薬の材料を使用した料理は、貴族たちに強烈な印象を残した。また、彼女は御子柴亮真が社交ダンスの技術を持ち、貴族社会での立ち振る舞いを習得していることに驚き、彼の動向に注意を払うべき存在だと認識した。

夜会の結末と貴族たちの反応

夜会の終盤、貴族たちは御子柴男爵家の影響力の大きさを理解し、交易圏への参加を模索し始めた。一方で、御子柴亮真に対する敵意を持つ者も少なくなかった。彼はその視線を冷静に受け止めつつ、自らの立場をさらに強固なものへと変えていく決意を固めた。貴族社会の変革を象徴するかのようなこの夜会は、新たな勢力図の幕開けを告げるものであった。

第四章  必殺の罠

王都ピレウス郊外の夜会と密談

夜の森を馬車が進む中、ディグル・マクマスター子爵は深いため息をついた。彼はオルグレン子爵の仲介によって御子柴亮真と密かに会談していた。彼の評判は様々だったが、実際に対面した印象は「規格外の化け物」としか言いようがなかった。ローゼリア王国の動乱を象徴するかのような曇った月を見上げながら、子爵は思考を巡らせた。

ロゼッタの決意と家名の存続

双子の兄グラッドが急死して以来、ロゼッタ・マクマスターは男として生きる決意をした。家名を守るため、彼女は髪型や服装、言動に至るまで兄の代わりを演じ続けた。しかし、その犠牲を理解しながらも、父であるマクマスター子爵は罪悪感を抱いていた。貴族社会において家を存続させることは至上命題であり、彼女の選択は避けられぬ道だった。

夜会で示された圧倒的な力

御子柴男爵が主催した夜会は、ただの宴ではなかった。料理や酒は最高級品が揃い、給仕の所作まで計算され尽くしていた。食器に付与法術が施され、食事を通じて秘薬や武具の供給力を誇示する意図が見え隠れした。貴族たちはその財力と影響力を思い知らされ、夜会を通じて御子柴家の力を目の当たりにしたのだった。

襲撃と逆襲

夜会の帰路、マクマスター子爵の馬車は突然の襲撃を受けた。襲撃者たちは革鎧をまとい、正式な軍事訓練を受けた動きで包囲した。彼らの目的は子爵の抹殺だった。しかし、伊賀崎衆が動き、咲夜が暗闇からの奇襲で敵を翻弄した。続いてリオネの率いる部隊が到着し、襲撃者たちは絶体絶命となった。

戦闘の決着と見せしめ

咲夜の合図とともに、伊賀崎衆は毒を塗った棒手裏剣を放ち、敵を次々と沈めた。生き残った者たちは毒によって命を落とし、襲撃は完全に鎮圧された。その後、リオネの提案で、襲撃者たちの死体は街道沿いの木々に吊るされ、御子柴男爵家の名のもとに処刑されたことが示された。これは、敵対勢力への強烈な警告でもあった。

御子柴亮真とゲルハルト子爵の交渉

一方、亮真はザルツベルグ伯爵邸でゲルハルト子爵と会談を進めていた。彼は王国の行く末を問われ、「ローゼリア王国は滅びる」と言い切った。貴族派の元首魁として、ゲルハルト子爵もまた王国の衰退を悟っており、亮真の洞察力を認めた。

突如として迫る暗殺者

しかし、そんな中で異変が起こる。ゲルハルト子爵の護衛の騎士たちが不自然な動きを見せ、亮真は違和感を覚えた。騎士たちは突如として彼に襲い掛かり、戦闘が始まる。亮真は丸腰だったが、瞬時に羅漢銭の技術を応用し、ボタンを投擲して敵の目を撃ち抜いた。その隙に接近し、二人を一撃で仕留め、残る敵も制圧した。

絶望と決断

戦闘が終わり、血にまみれた亮真は余裕の笑みを浮かべながらゲルハルト子爵に語りかけた。彼の圧倒的な戦闘力と冷徹さを目の当たりにした子爵は、「人の形をした悪魔」と亮真を恐れた。そして、王国の未来を悟った彼は、自らの選択を決めたのだった。

エピローグ

王都への移動と軍議の準備

亮真たちはゲルハルト子爵との密会を終え、数日後に王都の貴族街にあるもう一軒のザルツベルグ伯爵邸へ移動した。屋敷の執務室には、ローラとサーラのマルフィスト姉妹を筆頭に、リオネや伊賀崎厳翁、その孫娘の咲夜が集まっていた。加えて、ザルツベルグ伯爵家の元双刃であるロベルトとシグニス、密かに亮真へ臣下の礼を取ったベルグストンとゼレーフ、エレナ・シュタイナーの姿もあった。内政を担うボルツやシモーヌ、領内の防諜網を再構築する伊賀崎衆の長老たちは不在であったが、軍事・内政・諜報において亮真を支える面々が揃い、翌日の重要な決定を控えていた。

ディルフィーナと黒エルフの立場

亮真は鎧兜で顔を隠したディルフィーナとその配下の五人の女性へ視線を向けた。本来であれば、ウォルテニア半島の亜人たちを統括するネルシオスがこの場にいるべきだが、彼は半島の内政と交易の調整のため出向くことができなかった。そのため、ディルフィーナたちが代表として同行することになった。しかし、彼女たちは黒エルフ族の一部に過ぎず、ウォルテニア半島の亜人種全体の代表ではなかった。ディルフィーナたちは亮真の護衛として配属されており、その戦闘力はロベルトやシグニスに匹敵するほどだったが、亜人であるがゆえに公の場に姿を現すことが難しいという制約もあった。

マルフィスト姉妹の対抗意識

ディルフィーナたちが護衛として同行することに対し、マルフィスト姉妹は表面上は穏やかな態度を取っていたが、密かに対抗意識を燃やしていた。黒エルフは妖艶な雰囲気を持ち、姉妹とは異なる魅力を持っていたためである。亮真は二人の美貌を十分に評価していたが、彼女たちは自分にないものを持つ存在に対して敏感に反応していた。リオネに対しては敵意を抱かず良好な関係を維持していたが、ディルフィーナたちには違った感情を抱いている様子だった。

軍議と証人尋問の準備

翌日の裁判に向けた軍議が開かれ、シグニスとロベルトには証人尋問と王都からの帰還時の警護が任された。亮真は彼らの実力を信頼していたが、前回の夜会とは異なり、今回は確実に戦闘が発生することが予想されたため、不安を抱いていた。王都での戦闘において援軍は期待できず、限られた戦力で対処しなければならなかった。シグニスとロベルトは自信を持って亮真の指示に従うと答えたが、新参者と古参の間に生じる軋轢が懸念された。

エレナの葛藤

軍議が終わると、エレナだけが席に残り、亮真と静かに向き合った。彼女は亮真の決断に対して葛藤しつつも、国の民を守るためにはルピス・ローゼリアヌスの討伐が最善であると理解していた。しかし、彼女の手元には須藤秋武からの手紙と、亡き娘サリア・シュタイナーのロケットペンダントがあった。その存在が彼女の決意を揺るがせていた。エレナは窓の外の晴れ渡った空を見つめながら、自らの心との折り合いをつけようとしていた。

王都への移動と廷吏の出迎え

翌日、亮真たちは王都の貴族院へ向かうため、護送車のような馬車に乗り込んだ。天候は曇天で、まるでこれからの展開を暗示するかのようであった。ザルツベルグ伯爵邸の前で廷吏のダグラス・ハミルトンが亮真を出迎えたが、彼の笑みには不穏なものが滲んでいた。亮真は表面上は友好的な態度を取りながら、巧妙に賄賂を渡し、彼の出方を探った。ダグラスは驚きつつもそれを受け取り、亮真を馬車へ案内した。亮真は馬車に乗り込むと、鬼哭の鞘を指で撫でた。その瞬間、まるで女のすすり泣くような風音が馬車内を吹き抜けた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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