小説「ウォルテニア戦記 XVII(17)」遂に御子柴浩一郎が合流?感想・ネタバレ

小説「ウォルテニア戦記 XVII(17)」遂に御子柴浩一郎が合流?感想・ネタバレ

どんなラノベ?

学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。

召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。

帝国から逃げれたと思ったら、ローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。

少年少女の奴隷を買って、彼等に武法術を教えて兵士として育成し、半島の希少な魔獣を狩って資金を稼ぐ。
邪魔な海賊のアジトを攻め滅ぼし。
その時に、奴隷にされていたダークエルフと知己を得て貿易を始め。

そして彼等特有の技術で魔剣、魔法防具を量産してもらい兵士の装備をより強固にして、重傷を負ってもダークエルフ特性の薬で快癒させて損耗率下げる事に成功。

そんな兵士達を率いてザルーダ王国への援軍に行き、オルトメア帝国の侵攻を止め。

辺境伯と北部十家との戦争にも勝利。

それを貴族院で審問されるが、死刑が始まる前から決まっているので亮真は貴族院のメンバーを全て殺して自領へ逃亡。

読んだラノベのタイトル

#ウォルテニア戦記   XVII
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏

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あらすじ・内容

ついに貴族院の審問がはじまり、有力貴族の激しい追及を受ける御子柴亮真。ロベルトとシグニスが証人に立ったおかげで亮真優位に進む審問だが、ルピス女王が判決を直接くだすことになり、一気に亮真に不利な情勢に。待機していたリオネの部隊とともに王都を脱出しようとする亮真だが、彼を待っていたのは意外な伏兵だった……!!

ウォルテニア戦記 XVII

感想

前の巻での段取りが終わり遂に敵地の王都に乗り込む。

そして、プロローグでいきなり根底を覆す人物。
主人公に最初から協力してくれていた女将軍の行方不明になっていた娘が、主人公と敵対している人物の案内で登場して女将軍の裏切りが決定。

ただもう既に物事は動き出しており。
主人公は王都に行き、主人公の死刑が内定している裁判に出席する。

だが、それはトップの貴族と女王だけの内定であり王都組織の下部の連中からしたら知らない事だった。

そこに主人公は付け込んで、自身の組織の諜報員達を忍ばせる。
そして、組織の中間管理職の奴の妻と娘を誘拐して協力させる。

そして、貴族達との論争をするのだが、、
主人公と貴族達の論点がズレており話はほとんど進まず。

そんな状態で、裏で聴いていた女王が痺れを切らして出て来た時に主人公は。

攻め滅ぼした辺境伯が王領だった半島(現在は主人公の領地)の岩塩を横領しており、それを隠蔽するため賄賂を貴族達に贈っていたメモを出す。

その事実に女王は動揺するが、当初から決めていた主人公の死刑判決を下すのだが、、、

主人公は潜入していた部下達と共に、その場にいた貴族達だけを殺し。
女王に宣戦布告をして意気揚々と王都を脱出するが、女将軍の軍と合流する地点に行くが誰も居ない。
そこに女将軍の副官が単騎で現れて女将軍の手紙を主人公に渡す。

それは決別の手紙だった。

そして、主人公の軍は予定の半分の軍勢しか揃えられず窮地に陥っていたが、、
食い破りおった。

元奴隷だったが、貴族しか使えない身体能力を高める法術を習得した10代の兵士達1000人で3つに分かれていたとはいえ3倍近い敵軍を突破したか。。

更に、ズーーーと離れ離れになっていた主人公の祖父と合流。
コレが主人公にはどうプラスになるのだろうか?

そして、エピローグでとんでもない事実が判明する。
いつも暗躍していたあのオッサンが実は、、
マジかよ、、
反則的な存在じゃないか。。

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備忘録

プロローグ

陽光と穏やかな空気の中で

王都ピレウスの一角にある【赤星亭】の中庭に、穏やかな陽光が降り注いでいた。本来ならば宿泊客の憩いの場であるはずの美しい庭園は、今や荒れ果てた姿をさらしていた。その庭に立つメネアは、心地よい風を感じながらも、重い足取りで歩を進めていた。原因は、情報収集のために王都へ派遣した部下からの報告にあった。

ロドニーの葛藤と飛鳥の存在

ウィンザー伯爵邸襲撃の際に利き腕を失ったロドニーは、一時は狂ったように剣の修練に没頭していた。無謀な鍛錬を経て彼はようやく落ち着きを取り戻したが、破壊された庭の景観は元に戻らず、未だに彼の占有状態が続いていた。そんなロドニーに対し、メネアは新たな情報を伝えなければならなかった。それは、飛鳥という少女とその血縁者についてのものだった。飛鳥の祖父である御子柴浩一郎が大地世界で作られた法術を付与された刀を所持していたこと、さらに彼がウィンザー伯爵邸襲撃の実行者である可能性が高いという事実は、ロドニーの心を乱すことは明らかだった。

貴族院の審問と情報の遅れ

メネアたちは、御子柴亮真が本当に御子柴浩一郎の血縁者であるかを確信していなかった。飛鳥の話を信じるしかない状況であり、大地世界では写真も動画も存在しないため、彼の顔を確認する手段がなかった。しかし、偶然が重なりすぎる状況に、メネアは必然性を感じざるを得なかった。さらに、貴族院による御子柴亮真の審問が行われるという情報を、彼女たちは当日になって初めて知った。王国による情報統制の厳しさと、急ごしらえの情報網では限界があったのだ。

限られた兵力と交渉の難しさ

光神教団の影響力が低い大陸東部において、メネアたちの持つ兵力は限られていた。ローランド枢機卿がタルージャ王国やブリタニア王国の駐留部隊を増援として要請していたが、到着には時間がかかる状況だった。武力の裏付けがなければ、王国側と交渉しても意味がない。時間稼ぎをされた挙句、交渉は有耶無耶にされるのが関の山であった。メネアはため息をつきながら、剣術の稽古を続けるロドニーへと歩を進めた。

ルピス女王の葛藤と疲労

その頃、王城の執務室では、ルピス・ローゼリアヌスが書類仕事に追われていた。彼女は疲れの色を隠せず、側近のメルティナ・レクターから貴族院への廷吏の派遣が報告されると、わずかに顔を曇らせた。ルピスは小さく頷いたが、その声には葛藤と罪悪感が滲んでいた。彼女はメルティナに視線を向け、何かを訴えようとしたが、メルティナはそれを無視するように踵を返した。

策謀の継続と王の弱さ

メルティナは、ルピス女王が決断のたびに迷うことを理解していた。人としては自然な感情であるが、王としては最悪の性質だった。貴族院への根回しはすでに完了し、費用と時間をかけた以上、今さら取りやめることは不可能だった。かつてのメルティナであれば、ルピス女王の意志を最優先していただろう。しかし、今の彼女は違った。策謀を途中で放棄したとしても、国の状況は変わらないと確信していたからだ。

王国の疲弊と関係修復の遅れ

ルピス女王の心労は限界に近かった。オルトメア帝国の動向が読めず、国内の火種も多い状況で、彼女が決裁すべき案件は山積みだった。特に、ベルグストン伯爵との関係悪化が、政治運営に大きな影響を与えていた。王がすべてを処理することは不可能であり、関係修復が急務であったが、御子柴亮真との対立がそれを躊躇させていた。そして、ザルツベルグ伯爵邸での夜会が決定的な転機となった。

王国の未来と血の代償

メルティナは、今日という日が王国の未来を決めると確信していた。それがどのような結末を迎えようとも、ルピス女王にとって重大な転機となることは避けられなかった。策謀が成功しようと失敗しようと、王国の行く末が大きく変わることに変わりはない。そして、その結果として流れる血の量もまた、すでに決まっているように思えた。メルティナは冷静な表情を崩さぬまま、何もせずにただ事態の推移を見守ることを選んだ。

第一章  戯劇の幕開け

王城への馬車移動と貴族院の警戒

亮真を乗せた馬車は王城へと進んでいた。馬車の座り心地は悪く、木製の椅子にクッションが置かれているものの、衝撃を十分に吸収することはできなかった。彼の護衛兼メイドであるマルフィスト姉妹は別の馬車に乗せられ、亮真は久しぶりの一人の時間を過ごしていた。これから行われる審問は、表向きには正当な手続きとされていたが、彼を弾劾しようとする貴族院の意図は明白であった。護送の途中で襲撃される可能性は低く、貴族院としても裁判の正当性を示す必要があったからである。しかし、貴族院の有力者たちにとって亮真は身内を殺した敵であり、彼を合法的に裁くことが目的とされていた。

王城での武装解除要求

王城に到着すると、廷吏のハミルトンが亮真に武器の引き渡しを求めた。王城内では貴族が帯剣することが許されているが、国王への謁見や貴族院での審問に出廷する際は例外とされている。亮真は「事情聴取のための出頭である」と主張したが、ハミルトンは法律に従うよう強調し、貴族院直轄の騎士たちが周囲を固めた。亮真は鬼哭を手放さざるを得ず、さらに戦輪も没収された。身体検査まで要求され、彼は騎士たちに全身を調べられることとなった。怒りを抑えながらも、亮真はこの状況を耐え抜いた。

貴族院での監禁と嫌がらせ

審問が行われるまでの間、亮真は窓のない狭い部屋に閉じ込められた。食事も水も提供されず、メイドや護衛たちとも引き離されるなど、貴族に対する待遇としては異常であった。亮真はこれを嫌がらせと捉えつつも、計画の範囲内として冷静に受け止めた。貴族院の騎士たちは彼の態度に困惑しつつも、監視を続けていた。彼は時間を潰すために口笛を吹き、騎士たちをさらに困惑させた。

証人たちの予想外の証言

審問の場では、ロベルトやシグニスが貴族院に対して徹底的な抵抗を見せた。特にロベルトは慇懃無礼な態度を貫き、貴族院の圧力にも屈しなかった。さらに、ユリア・ザルツベルグ夫人が亮真を擁護する発言を行ったことは、貴族院にとって大きな誤算となった。夫を殺されたにもかかわらず、彼女が亮真の行動を肯定したことで、貴族院の策略は崩れかけていた。

貴族院の焦燥と計画の変更

貴族院の幹部たちは、証人たちの予想外の態度に困惑していた。ハルシオン侯爵をはじめとする貴族院の上層部は、亮真を裁くための計画を練り直す必要に迫られていた。特にユリア夫人の証言は貴族院の意図に反するものであり、貴族たちはこの事態を収拾する方法を模索していた。一部の貴族は拷問も視野に入れていたが、審問の形式を維持するためには公正さを装う必要があった。

エレナ・シュタイナーと須藤秋武の密会

その頃、エレナ・シュタイナーは須藤秋武と接触し、娘サリアが生存している可能性について話し合っていた。エレナは疑念を抱きながらも、須藤が持ってきたロケットペンダントを確認し、その信憑性に揺れていた。実際に娘と対面すると、彼女の左肩には幼少期に確認したほくろの特徴があり、エレナは涙を流した。須藤秋武はこの状況を静かに見守り、何かを企んでいるような態度を取っていた。

審問開始と亮真の対抗策

亮真は一昼夜放置された後、貴族院の審問の場へと案内された。食事が提供されたものの、それが毒入りの可能性を考慮して手を付けることはなかった。騎士たちの護衛が強化されており、貴族院の警戒の度合いが増していることが伺えた。審問が始まり、ハルシオン侯爵が議長を務める中、亮真は法廷の中央に立たされた。侯爵は自己紹介すらせず、威圧的に審問を開始した。亮真はその態度を観察しながら、まずは一手を打つべく口を開いた。

第二章  舌戦

亮真の審問と貴族院の策略

礼儀正しい謝罪と貴族たちの反応

亮真は審問が始まる前に、ザルツベルグ伯爵家との行き違いによる混乱について謝罪し、貴族たちに丁重な礼を示した。その作法は完璧であり、武人としての威厳を備えていた。しかし、貴族たちは彼の態度を殊勝と受け取るのではなく、成り上がり者が貴族院の圧力に屈したと侮蔑の眼差しを向ける。亮真はそれに動じることなく、貴族院の副院長であるアイゼンバッハ伯爵に謝罪を向けた。この行動は意図的なものであり、最高権力者であるハルシオン侯爵を無視する形となる。貴族たちはその意図をすぐに察し、場の空気が張り詰めた。

貴族院の動揺とハルシオン侯爵の怒り

亮真の謝罪の仕方は、貴族院の力関係を公然と揺るがすものだった。ハルシオン侯爵は顔を真っ赤にし、憤怒に震えたが、公の場で感情を露わにすることはできなかった。貴族社会において、面子を潰されることは決闘や派閥抗争に発展することもあるほど重要であった。しかし、亮真の行動は挑発ではなく、正式な礼儀を保ったものだったため、侯爵が非礼を咎めることも難しい状況に追い込まれた。

アイゼンバッハ伯爵の対応と亮真の追及

アイゼンバッハ伯爵は侯爵の面子を守るために、亮真の謝罪が誤解に基づくものであると説明し、審問を主導するのはハルシオン侯爵であることを明言した。しかし、それは亮真の策略にはまる結果となる。亮真は、自分が従者と引き離され、窓もない一室に閉じ込められたのは侯爵の命令によるものかと問いただした。この発言により、審問の公正性に疑問が投げかけられ、貴族院の権威に打撃を与える危険が生じた。

ハミルトン伯爵の介入と亮真の反撃

貴族院の有力者であるハミルトン伯爵が介入し、侯爵の公正さを保証すると主張した。しかし、その主張には証拠も論理もなく、ただの権威による圧力であった。亮真はそれを即座に看破し、貴族院の廷吏であるハミルトン伯爵の縁者が自分を軟禁した事実を指摘する。これにより、審問の公平性がさらに疑問視され、貴族たちは沈黙するしかなかった。

ダグラス・ハミルトンの追い詰められた立場

廷吏のダグラス・ハミルトンは、亮真の策略により罪を問われることとなる。彼は貴族院の権力者の縁者として特権を享受していたが、亮真によって逆転の状況に追い込まれた。ダグラスの家族は人質に取られ、彼は亮真の命令に従わざるを得ない状況となる。亮真は、貴族社会で当然とされる「親の責任を子が負う」という論理を逆手に取り、ダグラスを利用した。

地下通路の開放と亮真の計画

亮真はダグラスに対し、貴族院の地下通路を開けるよう指示する。通常、その通路は緊急時に貴族たちが逃亡するためのものであり、開放には貴族院長の命令書が必要であった。しかし、ハミルトン伯爵家の影響力を利用すれば、その手続きを回避できる可能性が高かった。ダグラスは拒否することができず、亮真の指示に従うしかなかった。

亮真の勝利と貴族院の混乱

審問が再開される直前、亮真は自身の計画が順調に進んでいることを確信する。貴族院の権力者たちは亮真の策略によって揺さぶられ、ハルシオン侯爵は公の場で彼に降伏を示唆する言葉を発した。亮真は、この状況を利用してさらなる手を打つ準備を進める。そして、貴族院の内部に潜む敵対勢力の存在や、今後の戦いに備えた防諜の必要性についても考慮し始める。亮真の戦略は着実に成果を上げつつあった。

第三章  決別の日

再審の広間への帰還

廷吏に先導されながら、亮真は午前中に舌戦を繰り広げた広間へと再び足を踏み入れた。広間に集う貴族の顔ぶれも、壁際に立つ完全武装の騎士たちも変わらぬままだった。ただ一つの違いは、資料置き用の台の傍に新たに置かれた椅子の存在である。質素ながらも頑丈な造りのその椅子は、亮真に座ることを促す意図が込められているようだった。しかし、彼は軽率に座ることを避けた。貴族社会において些細な行動が命取りとなることを理解していたからである。

苛立ちを隠せぬ侯爵

亮真が礼儀正しく頭を下げると、ハルシオン侯爵は舌打ちを漏らした。午前中と同じような展開になることを危惧している様子だった。彼の左右に座るアイゼンバッハ伯爵とハミルトン伯爵もまた、亮真への不満を隠しきれずにいた。特にハミルトン伯爵の視線には、怒りと殺意が滲んでいた。亮真の要求によって、貴族の慣例を破り、縁者であるダグラス・ハミルトンを引き渡すという異例の事態に追い込まれたためである。亮真はその敵意を静かに受け止めながら、彼らが自分を生かして帰すつもりがないことを改めて確信した。

審問の開始と不公平な裁き

ハルシオン侯爵が木槌を打ち鳴らし、再審が始まった。貴族院が自らの行った調査に絶対の自信を持っていることを示すように、侯爵は「今更御子柴男爵に話を聞く必要はない」とまで言い放った。それは明らかに公正さを欠く発言であり、審問が形式的なものに過ぎないことを露呈していた。アイゼンバッハ伯爵が侯爵の発言の不適切さを指摘し、形ばかりの弁明の機会が与えられたが、その場の空気はすでに決まった結論に向かっていた。

亮真の弁明と貴族院の反発

亮真は自らの行動を否定することなく、ザルツベルグ伯爵家との戦いが王国のためであったことを主張した。しかし、貴族たちは彼の言葉を受け入れるどころか、敵意をむき出しにし始めた。アイゼンバッハ伯爵は、北部の防衛を担っていた名家を滅ぼしたことを責め、法に背いた行為だと断じた。亮真はそれに対し、ローゼリア王国の貴族としての責務を果たしたに過ぎないと返したが、貴族院の面々は彼の言葉に耳を貸さなかった。

貴族院の誤算と亮真の切り札

貴族たちは亮真の言葉を挑発と捉え、罵声を浴びせた。しかし、彼は動じることなく、自らに課せられた特権を明かした。ウォルテニア半島を領地として下賜された際に、ルピス女王から与えられた「立法、軍事、外交、経済の自由」――それは、彼をローゼリア王国の法から独立した存在として認めるものだった。この事実を突きつけられた貴族院の面々は、一様に驚愕し言葉を失った。

混乱する貴族と亮真の視線

ハルシオン侯爵は驚愕の表情を浮かべ、かつて亮真の要求を軽視していたことを思い出した。彼らは亮真を王国の法の支配下にあるものと誤解していた。しかし、ウォルテニア半島に関する特権が事実である以上、彼を裁く権限は本来貴族院にはなかったのだ。亮真はそのことを冷笑しながら指摘し、さらに王国の混乱の原因が貴族の苛政にあると強く批判した。しかし、貴族たちは自身の非を認めるどころか、責任を転嫁しようとした。

王の登場と広間の静寂

亮真は、これ以上議論しても意味がないことを悟り、ついに最後の手段に出た。「王に直接問いただそう」と。彼の挑発的な言葉に、広間は沈黙に包まれた。貴族たちが困惑する中、ハルシオン侯爵は一瞬だけ視線を扉の方へと向けた。その様子を見逃さなかった亮真は、扉の向こうにいる存在を確信した。

扉が開かれ、黒髪をなびかせた女騎士が先導する中、ルピス女王が姿を現した。その光景に、広間の貴族たちは驚愕した。貴族院に王が自ら姿を見せることなど、前例がない事態だった。しかし、王は確かにそこにいた。彼女がここに来た理由――それこそが、この審問の真の結末を決めることになるのだった。

対峙する二人の決意

広間には、息を飲むような重圧が渦巻いていた。亮真とルピス女王は互いに視線を逸らさず、ただ対峙していた。両者の格が決まるのは、地位ではなく生物としての本質においてである。貴族たちはこの緊迫した空気を感じ取り、静まり返っていた。亮真はルピスの成長を認める一方で、その表情に憎しみと怒りを読み取った。ルピスがこの場に現れた理由はただ一つ、自らの手で決着をつけるためだった。

英雄と国王の対立

ルピス女王は元より、この場に出るべきではなかった。彼女が直接関与することで、ローゼリア王国の正統性が問われかねない。しかし、亮真の挑発に乗り、ここに現れたのは自らの覚悟の証だった。彼がウォルテニア半島に追いやられたのは、王の決断によるものであり、その結果として対立が避けられない状況へと発展した。亮真にとっては、生存のための選択であり、ルピスにとっては王としての責務であった。

貴族院の腐敗と陰謀

亮真はザルツベルグ伯爵の悪政を知りながらも貴族院に訴えなかった。その理由は、貴族院そのものが腐敗しており、賄賂によって動かされていたからである。彼は証拠となる文書を提示し、貴族院と伯爵家の不正を暴こうとする。しかし、それは単なる数字の羅列に過ぎず、決定的な証拠とはなりえなかった。貴族たちは狼狽しながらも、それを否定し、亮真の発言を貶めようとする。

審問の結末と策謀

審問は亮真にとって不利に進み、貴族院とルピス女王の決断は既に固まっていた。ハルシオン侯爵の主導のもと、彼は北の塔へ幽閉されることが決定される。この塔に送られた者が生きて戻ることはない。亮真は冷静に状況を分析しつつも、すでに戦う覚悟を決めていた。彼にとって、この審問の場は戦場へと変わりつつあった。

亮真の反撃と戦闘

突如として、亮真は騎士の一人を倒し、場を支配し始める。武器を持たずとも、彼の戦闘力は圧倒的だった。指弾を用いた奇襲、暗器の活用、そして鎖を駆使した戦闘術によって、貴族院の騎士たちは次々と倒れていった。貴族たちは恐怖し、亮真の前に立つことすらできなくなった。ハルシオン侯爵は命令を下すが、もはや兵たちは動かない。

戦場と化す広間

亮真の攻撃によって、広間は修羅場と化した。騎士たちは怯え、貴族たちは逃げ惑う。亮真の動きはまるで竜巻のようであり、彼に刃向かう者は次々に倒れていった。ついには、衛兵すらも動かなくなり、ハルシオン侯爵の命令すら無視される。もはや、亮真を止める手立ては残されていなかった。

逆転する立場

貴族たちは絶望し、亮真の前に立つことすら恐れた。彼は冷静に、しかし確実に敵を排除し、貴族院の策謀を打ち砕いていった。ハルシオン侯爵すらも震え、貴族たちはただ静かに彼の行動を見守ることしかできなかった。亮真は最後に、彼らに冷ややかな視線を向けながら、一歩ずつ歩みを進めるのだった。

貴族院の混乱と亮真の策略

貴族院では、突如として衛兵の剣が振るわれ、貴族の一人が首をはねられた。その場にいた者たちは、目の前の光景を理解できず、混乱に陥る。これまで自分たちの味方だと思っていた衛兵が裏切り、貴族を手にかけたことに恐怖を覚えたのである。亮真はそんな彼らの様子を見て嘲笑し、左手を掲げた。その合図とともに、衛兵たちは一斉に剣を抜き、貴族院の者たちを取り囲んだ。貴族たちは驚愕し、亮真の背後にある意図を探るが、その答えが浮かんだ瞬間、ハルシオン侯爵の背筋に冷たい汗が流れた。

貴族たちの抵抗と壊滅

絶望に駆られた貴族たちは、亮真に対して怒りの声を上げる。しかし、彼らの誇り高き声は虚しく響くのみであり、実際にはどうすることもできなかった。椅子を蹴倒して逃げようとした者は、すぐに衛兵の剣に貫かれた。戦闘に長けた貴族たちも必死に抵抗するが、一刀のもとに切り伏せられ、次々と倒れていく。そんな中、ハルシオン侯爵は自らの命を守るため、扉へ向かって走り出した。しかし、その先はすでに塞がれており、彼は壁際へと追い詰められる。彼は女王の傍らにいるメルティナに助けを求めるが、彼女は動こうとしなかった。そして、亮真の命令により、無数の剣がハルシオン侯爵の体を貫き、貴族院の多くの者がその場で命を落とした。

ルピス女王の動揺

この光景を目の当たりにしたルピス女王は、震える体をメルティナに支えられながら、亮真の行動に圧倒されていた。彼のやり方はまるで宣戦布告のようであり、これを受けて王国がどのように動くのか、彼女の中には不安が募る。亮真は彼女に一礼し、再び会う日を楽しみにしていると言い残して立ち去る。その背後には、従者のように付き従う衛兵たちが影のように並び、新たな覇王の気配を漂わせていた。ルピス女王は、彼が去るのを見届けた後、深いため息をついた。そして、メルティナの腕を掴みながら涙を浮かべ、今回の出来事がもたらした影響を痛感する。

メルティナの策略と王国の行方

メルティナは、ハルシオン侯爵らの死を利用し、反逆者として亮真を名指しすることで、国内の貴族たちの敵意を一つにまとめる計画を提案する。これにより、貴族たちの意識を統一し、ルピス女王が主導権を握る機会が生まれるという考えであった。女王はその提案を聞き、メルティナがこの展開を予測していた可能性を疑う。彼女はこの結果を望んでいたのか、それとも受け入れるしかなかったのか。ルピス女王の心にわずかな疑念が芽生えたが、メルティナは冷静に対応し、計画を進める意思を示した。

亮真の脱出と次なる動き

亮真は、ダグラス・ハミルトンの案内で秘密の脱出路を使い、王都を後にした。ハミルトンは娘の命を救うため、亮真に協力していたのである。脱出路の先には、既に準備を整えた仲間たちが待機していた。亮真は彼らと合流し、今後の動きを確認する。リオネやローラたちの報告によれば、重要な協力者たちはそれぞれの手はずを整え、王国を去ったとのことであった。亮真は、王都を離れることで新たな戦の舞台へと進んでいく。しかし、彼の知らぬところで、王国内ではさらなる動乱が巻き起こる兆しが見え始めていた。

第四章  カンナート平原の戦い

カンナート平原での焦燥

王都ピレウスを脱出した亮真は、カンナート平原に陣を敷いていた。この平原は王家直轄地であり、王都近郊の食糧供給地の一つであった。天幕の中で地図を見つめる亮真の表情は険しく、周囲の者たちも緊張していた。予定されていたエレナとの合流が遅れ、斥候からの報告も途絶えていた。亮真は、この遅れが単なる誤解では済まされない可能性を考え、焦燥感を募らせていた。

エレナの立場と亮真の疑念

エレナ・シュタイナーは【ローゼリアの白き軍神】と称される実力者であり、亮真の重要な協力者だった。しかし、彼女の忠誠は微妙なものだった。ルピス女王にとってエレナのような有能な者は脅威となり得るため、仮に亮真を選ばなかったとしても、警戒の対象となることは避けられなかった。亮真は、彼女が安全であるうちに確保する必要があると考えていたが、合流の遅れは不安を募らせた。

クリスの来訪と決別の報せ

天幕の外が騒がしくなり、伊賀崎衆の忍びが一人の男を連れてきた。その男はクリス・モーガンであり、エレナの忠実な副官であった。彼の衣服には目立った汚れや傷がなく、それが亮真の嫌な予感を裏付けるものとなった。クリスはエレナからの書状を亮真に渡し、その内容を確認した亮真は、事態を察した。エレナは亮真のもとを離れ、敵となる道を選んだのである。亮真は落ち着いた様子で「また会う日を楽しみにしている」とクリスに伝えた。クリスは驚きながらも深々と頭を下げ、その言葉を伝えることを誓った。

突然の狙撃と未知の脅威

クリスが去った後、亮真は戦略を練っていたが、その矢先、鬼哭が異変を警告するように鳴動した。瞬時に武法術を発動させたが、次の瞬間、強烈な衝撃が腹部を襲った。遠距離狙撃による攻撃だった。亮真は苦痛に耐えながらも即座に周囲を警戒し、マルフィスト姉妹の援護を受けた。銃撃が存在しないはずのこの世界で、遠距離からの狙撃を受けたことにより、敵の戦術が未知の領域に達していることを痛感した。

敵の布陣と包囲戦の策謀

伊賀崎衆の偵察により、敵軍の布陣が明らかになった。カンナート平原中央部には大軍が配置されており、その背後の森林地帯にはさらに二つの軍勢が潜んでいた。敵は亮真の軍を包囲し、殲滅しようと企んでいた。この周到な配置は、単なる貴族連合の烏合の衆ではなく、計画的に指揮された精鋭部隊によるものだった。亮真は、これが偶然ではなく、誰かの策略によるものであることを確信した。

王国騎士団の関与と策略の核心

亮真は、この包囲戦を仕組んだ黒幕として、王国騎士団の関与を疑った。王都の貴族派が即座にこれほど精巧な作戦を実行できるとは考えにくく、メルティナ・レクターやミハイル・バナーシュの関与を推測した。しかし、敵の正体が騎士団であるならば、これまでの予想を大きく覆すことになる。亮真は、敵がどのような意図でこの作戦を立案したのかを見極める必要があった。

決戦に向けた戦略と命運を分ける一手

亮真は、敵の包囲を突破するために、ロベルトとシグニスに騎兵隊を率いさせる決断を下した。中央の敵軍を突破し、後方の伏兵を引きつけることで包囲を崩す作戦である。ロベルトはこの決定に喜び、シグニスもまた理解を示した。彼らの突撃が戦局を左右する鍵となることは明白であった。

祖父との再会と未知なる展開

戦略を練る中で、天幕の中に三人の見慣れぬ人物が現れた。その中心に立つ老人を見た瞬間、亮真は驚愕した。そこにいたのは、かつて別れを告げた祖父、御子柴浩一郎であった。再会するはずのない人物との対面に、亮真の心は大きく揺れ動いた。浩一郎は静かに微笑み、「久しいな……我が孫よ」と語った。その夜、天幕の灯りは深夜まで消えることはなかった。

カンナート平原の戦闘開始

太陽が照り付ける正午、亮真の軍勢はカンナート平原の中央部に布陣する敵軍と交戦していた。リオネが率いる重装歩兵が前線を押し上げ、亮真が指揮する騎馬隊は後方で待機する鋒矢の陣を形成していた。伊賀崎衆の戦忍びが周囲を警戒し、敵の奇襲に備えていた。一方、敵軍は馬防柵を築き、重装歩兵の防御陣を敷く堅実な布陣を展開していた。攻撃重視の鋒矢の陣と防御を固めた敵軍との対峙は、まさに矛と盾の戦いであった。

リオネの進撃と敵の抵抗

戦闘開始から二時間が経過し、リオネ率いる重装歩兵は第一・第二防衛線を突破し、着実に敵陣を押し込んでいた。しかし、敵軍の士気は高く、簡単には崩れなかった。本来、鋒矢の陣は機動力を活かした突破戦法に適しているが、リオネは機動力を捨て、防御力を高めながらじわじわと前進する戦法を選択していた。その圧倒的な威圧感が敵軍を追い詰めていたが、敵陣の形状が次第に三日月型へと変化していることに気づいた。これは、後方の援軍が合流するまでの時間稼ぎである可能性が高かった。

クレイ・ニールセンの指揮

一方、敵軍の指揮を執るクレイ・ニールセンは、次々と届く戦況報告を受け、冷静に指示を出していた。彼は五十代の大男であり、戦場で鍛えられた歴戦の猛者であったが、指揮官としても優秀だった。敵軍が重装歩兵を前線に押し出す戦術を採ることは予想外だったが、戦況はまだ想定の範囲内であった。彼の本当の狙いは、森林地帯に伏せている味方の部隊と連携し、包囲殲滅戦を仕掛けることであった。しかし、友軍からの報告が未だ届かず、わずかに焦燥感を抱いていた。

戦術の逆転と包囲網の崩壊

クレイの予想通り、戦術が成功すれば亮真の軍勢を一気に殲滅できるはずだった。しかし、事態は逆転していた。亮真は敵の策を逆手に取り、ロベルトとシグニス率いる騎兵隊に敵の後方へ潜入させていた。彼らは奪取した王国軍の軍旗を掲げ、敵軍の一部に紛れ込むことで、味方であるかのように錯覚させていた。そして、ついにその瞬間が訪れた。ロベルトの号令と共に、御子柴男爵家の軍旗が掲げられ、敵本陣への奇襲が開始された。

敵本陣への猛攻とクレイの最期

ロベルト率いる騎兵隊が敵本陣の後方から突撃を開始し、シグニスの部隊も別方向から攻撃を仕掛けた。戦斧を振るうロベルトの姿は、戦場を蹂躙する猛獣のようであった。敵兵たちは、自軍の中に突如として現れた強襲部隊に混乱し、次々と斃れていった。クレイ・ニールセンも奮戦したが、シグニス率いる部隊によって討ち取られ、敵軍の統率は崩壊した。これにより、カンナート平原の戦いは亮真の勝利に終わった。

ルピス女王の決断と新たな戦乱

カンナート平原での敗北を知ったルピス女王は、亮真を国賊として認定し、ウォルテニア半島への征伐軍を派兵することを王国全土に宣言した。これにより、王国と亮真の間の戦乱は避けられないものとなった。カンナート平原での戦いは、単なる一戦に留まらず、ローゼリア王国全土を巻き込む大戦の幕開けとなったのである。

エピローグ

久世昭光の静かな日常

窓に風雨が打ち付ける大雨の日、久世昭光は暗い部屋の中で咳き込んでいた。彼は長年寝たきりの生活を送り、病に侵されながらもまだ死ぬわけにはいかないと耐えていた。枕元の水差しに手を伸ばした時、突如として部屋に居るはずのない人物の声が響いた。そこに立っていたのは、須藤秋武だった。

須藤秋武の訪問

いつの間にか入り込んでいた須藤に対し、久世は礼儀正しく迎え入れ、灯りをつけようとした。しかし、須藤がそれを制し、自らランプに火を灯した。須藤は久世の体調を気遣い、水を差し出すと、薬を飲むよう促した。久世はそれに従い、再び謝罪の言葉を述べた。須藤はそれを気にも留めず、気軽な態度で椅子に腰を下ろし、久世を見つめた。

久世の問いと須藤の目的

須藤は、自身が頻繁に移動することの負担を口にしながら、久世が急ぎ呼び戻した理由を尋ねた。久世は、どうしても確認したいことがあったため、直接話をしたいと伝えた。そして、須藤が浩一郎の孫である御子柴亮真に対し、策謀を巡らせている理由を問うた。エレナ・シュタイナーの件や狙撃事件など、その背後に須藤が関与していると確信していたからである。

須藤の答えと久世の懸念

須藤は久世の問いに対し、「より良い明日のため」とだけ答えた。それは、組織の理念として掲げられてきた言葉であり、須藤の忠誠心を示すものにも聞こえた。しかし、久世にはその言葉の裏に別の意図があるように思えた。須藤の行動は、策の成功や失敗に執着していないように見え、まるで危険を楽しんでいるかのようだった。

久世の葛藤

須藤の狂気を帯びた眼光が脳裏に焼き付く中、久世は己の無力さを痛感した。彼もまた到達者の一人であり、限られた時間ながら戦うことはできる。しかし、それだけでは須藤を止めることは不可能だった。須藤は組織の創始者であり、久世にとって絶対的な存在だったのだ。久世はただ、浩一郎と再び会う日まで生き延びることを決意し、眠りにつこうとした。

迫りくる戦乱の兆し

しかし、久世が知らぬところで、新たな戦乱の火種が生まれていた。ローゼリア王国南端の国境の街ガラチアに、数千の軍勢が集結していたのだ。彼らの軍旗には天秤の紋章が刻まれていた。そして、戦乱の到来を告げる角笛が、静寂を破るように響き渡った。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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