どんな本?
学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。
召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。
帝国から逃げれたと思い、傭兵をしていたらローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。
それでも少年少女の奴隷を買って、彼等に武法術を教えて兵士として育成し、半島の希少な魔獣を狩って資金を稼ぐ。
邪魔な海賊のアジトを攻め滅ぼし。
その時に、奴隷にされていたダークエルフと知己を得て貿易を始め。
そして彼等特有の技術で魔剣、魔法防具を量産してもらい兵士の装備をより強固にして、重傷を負ってもダークエルフ特性の薬で快癒させて損耗率下げる事に成功。
そんな兵士達を率いてザルーダ王国への援軍に行き、オルトメア帝国の侵攻を止め。
辺境伯と北部十家との戦争にも勝利。
それを貴族院で審問されるが、死刑が始まる前から決まっているので亮真は貴族院のメンバーを全て殺して自領へ逃亡。
反乱を討伐するためルピス女王が率いる20万の大軍がウォルテニア半島へ攻めて来たが、軍を派遣している貴族の領地を別動隊で荒らして後方を撹乱して20万の軍を瓦解させ、退却し始めたルピス女王軍を追撃して王都を包囲。
王都内の反乱を誘導して首脳陣を殺して王都を陥落させて、新女王ラディーネを王にして亮真は大公となり国の実権は握らずウォルテニア半島を開拓しようとしていたのだが、、
読んだ本のタイトル
#ウォルテニア戦記 XXⅢ
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏
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あらすじ・内容
王都ピレウスを陥落させ、ルピス女王を追放した亮真は新女王であるラディーネとの交渉を開始した。 戦後処理に忙殺されつつ、しばらくは平和を保ちたい亮真だが、その間にも隣国のミスト王国、ザルーダ王国で異変が相次ぐ。さらに、亮真がかつて一戦を交えた大国・オルトメアも動き出して――!? 亮真の新たな戦いを描く王道戦記、待望の新編スタート!!
ウォルテニア戦記 XXIII
前巻まであらすじ
王都を女王軍の約半数以下の兵力で包囲したが、女王軍は籠城の構え。
それに必死に対抗していたが、、
女王の軍隊は敗戦続きで兵士達の指揮は下がり続け。
そんな時に一部の騎士が反乱を起こす。
同時に城壁に穴を開けて場内に雪崩込み王都を陥落。
女王は逃げるも忍びに殺され。
貴族も子爵は不正を指摘されて没落。
全く新しい組織が出来上がって国は再建されるのか??
プロローグ
須藤秋武はバーミンゲンの安宿で猛毒に侵されたルピス・ローゼリアヌスを保護している。彼女はローゼリア王国の王族で、絶世の美女と評されるが、現在は危機に瀕している。須藤は彼女を助けるが、彼女の高い自尊心と誤った権利意識に配慮しつつ治療を進める。ルピスは目覚め、王都の現状を知りたがり、須藤から新体制が安定していることを伝えられる。彼女は未来について思索にふける。
第一章:偽りの平穏
御子柴男爵軍が王都ピレウスを攻城し、ローゼリア王国軍が敗北してから二週間が経過した。ザルーダ王国の国王ユリアヌス一世は、ローゼリア王国の不安定な情勢に心を痛めている。彼は新国王ラディーネの成功には有能な臣下がいることを推測している。ラディーネは御子柴亮真との関係を築くために、シャーロット・ハルシオンにその意向を探るよう求めている。
第二章:獣と狩人
王都ピレウスは重苦しい空気が支配している。市民の間で暴力が横行し、亮真はこの暴力を抑えるために介入し、圧倒的な力で制圧する。彼の行動は市民を救う一方で、貴族たちに対する警告となる。亮真はロマーヌ子爵家の不正行為を追及し、マリオ・ロマーヌの処罰を決定する。エレナとマクマスター子爵は亮真の意図を理解しつつも、その過激さに戸惑う。
第三章:一殺多生
亮真はエレナとマクマスター子爵と会談し、貴族たちの自己保身や派閥の問題を指摘する。彼は断固たる行動が必要であると説き、貴族たちに警鐘を鳴らす方針を確認する。亮真は新国王ラディーネから大公位への昇叙と領地の提案を受け入れる決意をする。この決断は国の未来を左右する重要なものとなる。
第四章:立ち込める戦雲
数日後、亮真は新国王ラディーネと再会し、大公位への昇叙と領地の提案を受け入れる。彼はルピスの生死について尋ねられるが、正確な情報は持っていない。エレナとマクマスター子爵は複雑な感情を抱くが、亮真は冷静に対応する。一方、オルトメア帝国はザルーダ王国に侵攻を開始し、ジョシュアは対応に追われる。彼は自国の利益を裏切る可能性のある貴族に対する処刑を後悔しているが、現状では王都に戻るしかないと決断する。
エピローグ
ジョシュアはオルトメア帝国の侵攻に対処するため、王都へ戻る決意をする。同時に、オルトメア帝国のシャルディナ・アイゼンハイトは進軍の準備を整え、ザルーダ王国への侵攻を開始する。ジョシュアは貴族たちの裏切りを恐れながらも、国を守るために全力を尽くす覚悟を固めている。
感想
プロローグからいきなりやってくれた。
ルピス元女王が生きていだと!?
毒の手裏剣を受けて河に流されたのに死んでないとかどんだけ運が良いんだよ。
だけど彼女を回収したのが須藤ってのが話を面白くしてくれそう。
さらにエレナの娘も須藤の下に戻っていたとか、、
須藤のせいで誘拐されて、ボロボロにされて回収されて看病されて、忠誠を誓うか、、
須藤も罪深いよな、、
後ろから刺されないかな?
そして、ルピスが居なくなり、後釜に入った女王ラディーネ。
数奇な運命に翻弄されて王族としての教育を受けていないせいで凝り固まった王族の価値観を持っておらず。
柔軟な発想が出来る女王になっていた。
そんな彼女を主としてエレナ大将軍、マクマスター伯爵が国家の運営を担い。
周りには、宮廷の中で策謀を生き残り侯爵の地位が転がり込んで、来た才女シャーロットを筆頭にラディーネの実務を支えていた。
王家と貴族大連合の軍を打倒した亮真は自領に引きこもって領土発展に尽力する事を希望するが、、、
世間はそれを許してくれなかった。
先ずは貴族連合で特に素行の悪い奴を現行犯で糾弾して抵抗したので殺害。
女王ルピスの時代だったら御子柴男爵の方が悪いと判決が出ていたが。
御子柴男爵軍に敗北した現在は違う。
それが判らない貴族に対して、亮真は犯行を冒し抵抗して死んだ貴族の家に損害賠償を請求した。
その額が多額でハンパなかった。
完全に取り潰しに来ている。
もしも武装蜂起しても御子柴軍の方がはるかに強い。
完全にツミの状態。
亮真の狙いとしては、今回の件で騒いでいる貴族家は全て取り潰したい。
そうやって見渡すと全体の3分の1もいた。
そして王家から御子柴男爵を公爵にして、ウォルテニア半島と元伯爵領等を合併して公国の扱いにすると決定。
それで今回騒動を起こした貴族には、未来の公爵に無礼を働いて無礼打ちにされたとなる。
戦争が終わっても、貴族への粛清の嵐はまだまだ続く。
それに反比例して女王になったラディーネの業務は増えていく。
まだまだ安定にはほぼ遠い状態のなのに。。
隣国のザルーダ王国の国王が吐血して昏倒。
それに合わせるように、オルトメア帝国軍が東進して来た。
風雲急を告げて来る。
今度はザルーダ王国で戦闘かな?
遠い所だと教団も蠢いており、まだまだ戦乱は続く。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
ウォルテニア戦記シリーズ
その他フィクションン
備忘録
プロローグ
須藤秋武はバーミンゲンの安宿でルピス・ローゼリアヌスが横たわる部屋に足を踏み入れた。
彼女はかつてはローゼリア王国の王族で、絶世の美女と評される人物であるが、現在は重傷を負い、猛毒に侵されている。
須藤は、彼女が再びローゼリア王国で戦乱を巻き起こす可能性を秘めていると見て、彼女を保護している。
しかし、治療が必要な状態でありながらも、須藤は彼女の裸体を見ることには躊躇している。
彼は彼女の性格を考慮しており、誤解を招く行動を避けようとしている。
須藤は彼女を救ったことで命の恩人となっているが、ルピスの高い自尊心と誤った権利意識により、彼女がその行為を誤解する可能性があると懸念している。
厚生労働省の公式見解によると、悪意がなければ救命活動の一環で異性の服を脱がせた場合でも、痴漢等の罪で訴訟になる可能性は低い。
ただし、被害者の主観によって被害届が出される場合があり、警察は受理しなければならない。
このような状況は、警察に複数回事情を説明する羽目になる可能性があり、もし正当性を証明できない場合には、起訴される恐れもある。
民事訴訟では立証のハードルが低く、見知らぬ人のために高いリスクを背負ってまで救命活動を行うことに疑問を持つ人も出てくるだろう。
須藤の心境は、現代社会に生きる男性陣の悲哀に似ているかもしれない。
月明かりもない夜、暗い部屋の固いベッドで、ルピス・ローゼリアヌスは目を覚ました。
喉の渇きを訴えるルピスの声に応じ、若い女性が水を差し出した。
ルピスは、自分がどこにいるのか、女性が誰なのかを尋ねたが、部屋には別の男性の声も聞こえ、その男が須藤秋武であることが判明した。
ルピスは驚きとともに猜疑心を抱いたが、須藤は彼女に対する見方を改めず、その場をやり過ごすための言葉を選んだ。
ルピスは自分の立場について深く考え込み、現在の彼女には利用価値がないかもしれないと自問するが、須藤はそれを将来の投資として見ていた。
この会話から、ルピスが王としての資質に欠けると須藤が分析していることが明らかになった。
ルピス・ローゼリアヌスは、重傷から目覚めたが、体を動かすと激痛に襲われた。
須藤秋武は彼女に無理をしないよう告げ、完全回復までに数ヶ月かかると説明した。
ルピスは、自身の状態を理解しながらも、王都の現状が気になり、それを知るために須藤に尋ねた。
須藤は、ローゼリア王国がラディーネ王女の下で新体制に移行し、状況が安定していると伝えた。
また、御子柴亮真についても触れ、彼が政治の地位を拒否し、ウォルテニア半島に帰ることを選んだことをルピスに告げた。
ルピスは驚き、その選択が信じられなかった。
須藤は、御子柴が独立を画策していると推測し、彼が大きな軍事力を持つ一方で政治的な影響力は限定的であることを指摘した。
須藤は、ルピスに現状を説明した後、部屋を後にし、ルピスは深い思索に耽った。
須藤秋武にとって、サリアを救った行動は善意からではなく、彼女を利用するための計算と気まぐれの産物である。
サリアにとって須藤は大切な存在だが、それは彼女が知らない裏事情によるものかもしれない。
須藤は、サリアがルピス・ローゼリアヌスの側近として適していることを理解し、将来的に再びエレナに対する謀略の道具としても役立つと考えている。
須藤は現在の状況を料理人が材料を前にするように楽しんでおり、御子柴君に対する次の計画に興味を持っている。
その一環としてブリタニア王国での青年に対する試金石の機会を設けている。
須藤は新たな組織幹部の可能性を見極めつつ、これから起こるかもしれない戦乱を待ち侘びている。
第一章 偽りの平穏
御子柴男爵軍による王都攻城戦の結果、ローゼリア王国軍が敗北し、二週間が経過していた。
ザルーダ王国の王都ペリフェリアでは、国王ユリアヌス一世が日常通り政務に励んでいたが、内心は穏やかではなかった。
彼の不安の原因は、ローゼリア王国の不安定な情勢に関する報告書であり、密偵たちが送ってきた情報の重みに心を痛めていた。
国王ユリアヌスは、若くして政治的手腕を発揮している新国王ラディーネについて考えながら、彼女の成功が彼女だけの力によるものではないと推測していた。
彼は、国王としての自身の経験から、有能な臣下がいてこそ国はうまく機能すると語り、それが国王の真の力であると考えている。
この会話中、ジョシュアはローゼリア王国の現状について、それがエレナ・シュタイナーや新宰相マクマスターの影響だと指摘するが、ユリアヌスはそれだけではないと応じ、良い臣下がいれば国は安定すると述べた。
ジョシュアは、その考えを肯定しつつ、最近の自身の観察を共有し、二人はこれまでの出来事を反省していた。
ユリアヌスは独りになりたいと述べて部屋を後にし、その後、一人で将来について深く思索にふける。
彼は、ザルーダ王国としての今後の対策として、隣国ローゼリア王国だけでなく、他の大国との関係をどう保つか、どう安定させるかを考えていた。
彼の考えは、自国の将来と安全を確保するための連携と協力の重要性に焦点を当てていた。
ザルーダ王国での才知に長けた人物に仕事が集中してしまう問題が生じている。
この状況は、国内の統制を優先させるためにオルトメア帝国との講和を決定したが、目的は未だ達成されていない。
突然の咳と喉の問題に見舞われたユリアヌス国王は、症状が深刻化しているにも関わらず、必要な休息を取ろうと決意する。
彼は国のために生き延びる必要があると自覚している。
一方、ローゼリア王国では、新たな国王であるラディーネ・ローゼリアヌスが、若いながらも王国の重責を担っている。
彼女の前には終わりの見えない書類の山があり、彼女はその責任を感じつつも、それに対処している。
また、彼女は官僚に書類を追加され、その状況に苦笑いを浮かべる。
さらに、ラディーネの補佐をしている者たちも疲労が蓄積していることから、休憩を提案される。
シャーロット・ハルシオンが自らティーセットを用意し、ラディーネ国王に提供した。
この行動は、単なる親切からではなく、何らかの意図があることを示唆している。
実際、シャーロットは有力な貴族の子であり、通常はメイド役を務める必要はない立場である。
ラディーネはこの状況を認識し、シャーロットの動きに意図を見出している。
二人は御子柴男爵家との関係について話し合うことになる。
この対話は、ローゼリア王国の現状と御子柴男爵家との関係性をどう扱うかについて重要な意味を持つものである。
属国の形態には多様性があり、完全な支配から一定の自治権が認められる形態まで存在する。
ラディーネは御子柴亮真との関係をどう築くかを深く考慮している。
御子柴亮真がローゼリア王国を完全に切り捨てることは地政学的にも経済的にも不可能であり、その交渉次第で属国としての関係も柔軟に設定可能であることを示唆している。
また、御子柴亮真は特定の貴族階級に対する嫌悪感を持っており、それが彼の行動に影響を与えている。
ラディーネは御子柴亮真とのさらなる協議を望んでおり、シャーロットにその意向を探るよう求めている。
シャーロットはこの状況を理解し、ラディーネが提案する政略結婚の可能性を含め、状況を慎重に進めるべきであると考えている。
お茶会は貴族令嬢にとって単なる社交の場ではなく、家同士の勢力争いの戦場である。
ハルシオン侯爵家の当主シャーロットが開催するため、それがただのお茶会で済むわけがない。
シャーロットはこの状況をよく理解しており、メイドに伝言を頼む際、金貨を渡して確実に伝言を届けさせる。
参加者は高位貴族の家の人間であり、シャーロットに匹敵する才媛ばかりである。
彼女たちが的外れな決断を下すとは考えにくいが、今後の交渉において相手の面子を立てる形での話し合いが望ましいとシャーロットは考えている。
第二章 獣と狩人
ローゼリア王国の王都ピレウスは、分厚い城壁に守られた城塞都市であり、王国建国から五百年にわたり、難攻不落を誇ってきた。
多くの市民にとって、王都は特別な存在であり、現代でいうところの東京のような憧れの場所だ。
しかし、現在の王都は以前ほどの活気を失い、重苦しい空気が支配している。
これは、王位がルピス女王からラディーネ女王へ移り変わったこと、さらに支配者が変わったことによるものだ。
特に、若き覇王が支配する現状は、敗者の象徴ともいえる重苦しさを物語っている。
王都の下町では、激動の波を受けた人々の悲劇が繰り広げられている。
食堂を営む若い夫婦は、戦での食料流通の滞りにより一時的に店を休業し、再開したばかりだが、再開後すぐに悲劇が訪れる。
ある事件がきっかけで、店の再開を喜ぶ常連客であるアダムの願いは破られ、店は暴行の現場と化す。
加害者は市民を守るはずの衛兵であり、彼らはロマーヌ子爵家の次期当主を中心に暴力を振るう。
市民はその暴力に対抗できず、ただ見守るしかない状況が続いている。
この暴力の背後には、ローゼリア王国の貴族階級の傲慢さと無法があり、市民と貴族の間の深い身分の壁がある。
戦争が長引けば被害が拡大し、短期間で決着すれば被害は抑えられる。
王都ピレウスの被害は、国の存亡がかかった大戦としては軽微だった。
その理由は、御子柴男爵家とローゼリア王国軍の攻防戦が短期間で終了したからである。
一般的に、敗戦国の男性は戦死か重傷が多く、女性も戦闘以外の被害に遭うことが多い。
戦場では男性の多くが生物的本能の発露として異性の温もりを求めることがあり、それが相手にとって望ましくない行為であっても行われることがある。
アダムもかつて兵士として徴兵され、悲惨な現場を目の当たりにしている。
彼は敵にも情を感じることができるが、納得はできない。
一方で、目の前で起こっている非道な行為には、ただじっと耐え忍ぶ他なく、助けを求めることもできないのが現状である。
獣たちが男に対して敵意を抱きながらも攻撃をためらう中、アダムは男が御子柴男爵だと確信する。
その確信は、近くの馬車に描かれた御子柴男爵家の紋章を見て強まった。
御子柴男爵はローゼリア王国において英雄としても、恐るべき反逆者としても知られている。
その場の獣たちも男が御子柴男爵である可能性に動揺するが、自身の立場を守るため攻撃を仕掛けようと決断する。
しかし、その攻撃は亮真によって容易く退けられ、獣の一人が瞬時に倒される。
亮真の力により、場の空気は一変し、アダム達もその様子をただ見守るのみだった。
亮真は自身の部下である双子に、完璧に制御された暴力を示し、獣たちを殺すよう命じる。
双子は武法術と文法術を使い、獣たちに圧倒的な力を見せつける。
瞬く間に、双子は戦場で敵を倒し、亮真の命令を完遂する。
その間、マリオは自分の部下が次々と倒される様子を見て恐怖し、圧倒的な力の前で無力感を感じる。
一方、亮真は静かにそれを見守り、自分が市民を救ったことに問題がないかを問いかける。
この出来事によって、周囲の住民もマリオに対して批難と嫌悪の目を向ける。
亮真はマリオの発言に嘲笑し、その場の状況に対する理解の欠如を指摘する。
ルピス女王が王都から遁走した後、貴族院や王宮の態度が変わり、従来のように貴族の専横を庇い合う体制は変容している。
従来ならば、貴族間の問題は力関係で解決されていたが、亮真の場合はその枠組みを超えている。
亮真はマリオに近づき、マリオは彼を止めようと叫ぶが、亮真は容赦なくマリオを攻撃する。
マリオは自らが優位な立場にある場合のみ他人の命を軽視していたが、自身が脅威に直面するとその恐怖に耐えられなかった。
結果として、亮真はマリオを致命的に攻撃し、彼の死を引き起こす。
この凄惨な結末は周囲の住民に衝撃を与えるが、亮真は平然としており、事件後の処理についても動じることなく対応する。
その様子は、彼がこの世界での法の運用と道徳の基準において異質な存在であることを示している。
亮真の行動は、彼の強力な権力と冷徹な判断に基づいていることを明らかにし、彼の行動に対する周囲の反応はその極端な性格を強調するものであった。
第三章 一殺多生
マリオ・ロマーヌ事件から数日後、夜遅くの時間帯に王都ピレウスにあるエレナ・シュタイナーの屋敷で、新宰相マクマスター子爵と御子柴亮真が会談を行っていた。
マクマスター子爵は、子爵の身でありながら王国の宰相という重責を担い、心機一転の意味で名前をディレクに改めていた。
会話は和やかであったが、亮真の言葉にマクマスター子爵は一瞬力を籠めるなど、若干の不快感を示していた。
亮真はマクマスター子爵との友好的な関係を保ちたいと考えていたが、その言葉が軽率だったかもしれないと感じていた。
一方、エレナが登場し、話の本題に入る前に、最近の亮真の行動について言及する。
彼の行動は街の治安を乱し、エレナとマクマスター子爵に後始末を強いる事態を引き起こしていた。
亮真は自分の行動を「ゴミ掃除」と称し、自らの正義に基づいて行動していると主張していた。
この発言は、現場に残された状況が極めて凄惨であったことを物語っている。
エレナとマクマスター子爵は、ロマーヌ子爵が亮真の行動に激怒するだろうと予想していたが、亮真はそうした批判に動じる様子はなかった。
マクマスター子爵が亮真による処置の過激さに恐れを感じたことは事実である。
亮真はマリオ・ロマーヌの処遇について、ロマーヌ子爵が激怒することを予想していたと述べ、ロマーヌ子爵家がその息子の死に対して反応することは必至だと説明した。
また、亮真はエレナとマクマスター子爵に請求書を提示し、マリオによって引き起こされた事件の被害に対する補償をロマーヌ子爵に求めた。
請求された金額は非常に大きく、マクマスター子爵はその支払いが困難であることを示唆した。
亮真が請求する金額は、被害者である若夫婦への慰謝料や医療費、店舗の修復費用などを含む。
この金額には、若夫婦を護るための警護費用や、高額な秘薬の使用に関連する費用も計上されていた。
マクマスター子爵とエレナは、亮真のこの行動に対して驚愕し、亮真が本気で請求書の内容を推進するのか疑問に思った。
亮真は、この金額の支払いがロマーヌ子爵家にとって非常に困難であることを認識していながら、彼らを経済的に追い詰める意図があったことを示唆している。
重傷者の命を救った秘薬の効能は疑いようがなく、誰もがその価値を認めるものだ。
この秘薬を用いた亮真にとって、貴重な物ではあるが、ウォルテニア半島を領有し、黒エルフ族の長ネルシオスと友好関係にある彼には、それほど手に入りにくいものではない。
また、亮真はこの秘薬を用いることによって、設定する価格に対する反論を難しくする利点を見出している。
ロマーヌ子爵にとって、平民の命は価値が低いかもしれないが、それを公にするわけにはいかないため、亮真の要求を受け入れざるを得ない状況にある。
さらに、この秘薬が必要とされたのは、他に適当な治療手段がなかったからである。
亮真が設定した法外な請求額は、脅しの道具としての役割も果たしており、彼はロマーヌ子爵が素直に息子の罪を認め、謝罪すれば支払いの減額交渉に応じる意向を持っている。
しかし、そのような展開はほとんど期待できないと彼は理解している。
また、亮真は、ロマーヌ子爵が過去に子爵家の権力を使って事件を隠蔽してきた事実を把握しており、これを理由に彼を追い詰める計画を立てている。
亮真とエレナは息の合った関係を持ち、亮真はラディーネ女王の支援のために、不適切な貴族を排除するための行動を正当化している。
マクマスター子爵は、より穏やかな手段を求めているが、エレナは、国王と国のために必要な行動を取るべきだと主張している。
このようにして、亮真はローゼリア王国内の不適切な貴族を整理するために動いているのである。
亮真は、マクマスター子爵との会話で貴族たちの自己保身や派閥の問題を指摘し、現在のローゼリア王国が直面している危機を解決するための妥協点を見つけることが過去にも不可能であったことを強調した。
ルピス女王の統治時にも、政治改革の試みが失敗に終わった歴史を持ち出し、マクマスター子爵に対して、もはや穏やかな改革ではなく、断固たる行動が必要であると説いた。
亮真は、戦場と同じく、国の存続をかけた決断が求められていると説いてマクマスター子爵に行動を促した。
その後、マクマスター子爵が退出し、エレナと亮真の間でさらに話が進み、亮真が「悪役」を買って出たことでマクマスター子爵に踏ん切りをつけさせようとした計画が明らかにされた。
エレナは、マリオ・ロマーヌの問題により、貴族たちの中でも亮真に対する反感があるが、これを機に彼らの実力を試す布石としていることを示唆した。
亮真とエレナは、貴族達が国政に及ぼす影響を減らすために、一部の貴族を例として厳しく対処し、残りの貴族たちに警鐘を鳴らす方針を確認し合った。
第四章 立ち込める戦雲
エレナ、マクマスター子爵、新国王ラディーネ・ローゼリアヌスらと亮真が会談を行った数日後、王都ピレウスの王城の庭園で、亮真が新国王ラディーネと再会する。
この会談の場として選ばれた東屋は、非公式ながら重要な話が交わされることを意味しており、亮真は普段着で出席し、それがラディーネの器量を試す意図もあったようだ。
ラディーネは亮真に対して非常に敬意を示し、身分差を意識せずフランクな態度を取る。これには、亮真も驚きつつも好感を抱いている。
そして、ラディーネから亮真への褒賞として、大公位への昇叙と城塞都市イピロス及びその周辺地域を正式な領地とする提案がなされる。
この提案は、亮真にとっては名誉爵位に近く、政治に介入しない彼の立場に適していると感じられるが、一方でルピスの敗北後の政治状況においては、亮真が高位貴族としての地位を得ることによる影響も計り知れない。
亮真はこの提案に複雑な感情を抱きつつも、受け入れることを考慮している。
真実に関わらず、救国の英雄として最高位の貴族になる可能性を持つ独身男性亮真が、国民にどう見られるかは分からない。
彼が結婚相手の候補になり得るということと、実際に候補になることには大きな違いがある。
しかし、亮真はその可能性を否定できずにいる。
提案を拒否する根拠がないため、彼にはもどかしい気持ちがある。
亮真はラディーネに視線を向けるが、彼女の顔には動揺の兆しは見えない。
亮真は最終的に提案を受け入れ、「これで問題がスムーズに進められる」とラディーネに感謝される。
この提案により、マリオ・ロマーヌやその関連者を処分する名分も立つことになる。
亮真はこの策略に感心し、ラディーネが大した策士だと評価する。
しかし、ラディーネはシャーロット・ハルシオンとその友人が策を練ったと説明する。
亮真はこれを認め、ラディーネが信頼できる側近を持っていることに安堵する。
そして、ラディーネは亮真にルピスの生死について尋ねるが、亮真はルピスの生死が不明であることを伝える。この答えに、エレナやマクマスター子爵は複雑な感情を抱く。
亮真にはルピスが生きているか死んでいるかについてどちらでも問題ないが、生きていれば面倒な存在になる可能性が高い。
最後に、亮真はルピスの部下だったメルティナの死に関連して、彼女とミハイルの遺体を引き取って埋葬することを提案し、それに同意する。
エレナたちは亮真に対して感謝と罪悪感を持っており、為政者としては甘いが、人間としては優れた選択をしたと考えている。
普通の為政者ならば、メルティナとミハイルの亡骸を国民の不満の矛先に使うことも考えるが、エレナたちはそれを選ばず、亮真はそれを評価している。亮真は景色の良い場所でメルティナとミハイルを埋葬することを約束する。
しかし、オルトメア帝国は再びザルーダ王国に侵攻を開始し、西方大陸中央部の強大な軍事国家が戦争を引き起こす。
オルトメア帝国は東部、西部、南部、北部から精鋭部隊を集結させ、約十万の軍勢を結集しており、その後の主力軍も含めると二十万から三十万規模になる。
ジョシュア・ベルハレスはザルーダ王国の司令官として、これに対抗する準備を進めているが、オルトメア帝国の戦略に不安を感じている。
最後に、ザルーダ王国の王が病に倒れ、ジョシュアに早急に帰還するよう要請が来る。
ジョシュアは貴族たちの動揺を抑えるために奔走しなければならない状況にある。
ジョシュアは自国の利益を裏切る可能性のある貴族に対する処刑を後悔している。
しかし、ユリアヌス一世の認めなかったため、彼にはそれを行う権限がなかった。
ジョシュアは現在の防衛体制が未完成の状態でオルトメア帝国が動き出すと、国が滅びるかもしれないと懸念している。
オルトメア帝国のザルーダ再侵攻が目前に迫っている中、国王が危篤状態に陥り、貴族たちが動き出していることを知る。
ジョシュアは、これを待っていたかのようにオルトメア帝国が攻めてくると予想しているが、現状では王都に戻るしかないと決断する。
同時に、ノティス平原でシャルディナ・アイゼンハイトは勝利を確信し、進軍の準備を整えている。
彼女は、敵国との戦いを前にして祖父の仇を討つ決意を固め、オルトメア帝国軍はザルーダ王国に向けて進軍を開始する。
エピローグ
ジョシュアは、自国の利益を敵に売る可能性のある貴族たちに対して強い憤りを感じており、早急に処理すべきだったと後悔している。
国王ユリアヌス一世がこれを許可しなかったため、ジョシュアは手を出すことができなかった。
現在、オルトメア帝国が侵攻を計画している中で、ユリアヌス一世が危篤状態になり、貴族が王都で動き出すという情報がジョシュアに届いた。
ジョシュアはウシャス砦で防衛体制を整えるか王都に戻るかの難しい選択を迫られるが、王都へ戻ることを決意する。
一方で、オルトメア帝国のシャルディナ・アイゼンハイトは、ジョシュアの状況を見計らって進軍を開始する計画を進めている。
そして、彼女はザルーダ王国侵攻のために十万の軍を展開している。
ジョシュアは、自国を裏切る可能性のある貴族たちについて考えていた。
確証はないものの、彼らは個人の利益のために祖国を敵に売り渡すことに何の痛みも感じない人物であると感じていた。
しかし、国王ユリアヌス一世がそれを認めなかったため、ジョシュアには手出しができなかった。
一方、オルトメア帝国はザルーダ再侵攻を控え、ジョシュアは王都への帰還を決意する。
同時に、シャルディナ・アイゼンハイトとセリア・ノールバーグは秘蔵の発泡性葡萄酒を楽しんでおり、すべてが予定通りに進んでいることを確認していた。
そして、オルトメア帝国軍がザルーダ王国への進軍を開始する。
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