小説「ウォルテニア戦記 XXVI(26)」御子柴亮真、敵中孤立 感想・ネタバレ

小説「ウォルテニア戦記 XXVI(26)」御子柴亮真、敵中孤立 感想・ネタバレ

どんな本?

学校の屋上で弁当を食べていた高校生、御子柴亮真が突然異世界に召喚される。
しかし、彼は普通の高校生ではなかった。
召喚した魔術師を殺害し、逃亡中に双子姉妹を仲間に加え、大国であるオルトメア帝国から逃れる。

安全だと思ったところで傭兵活動を始めると、ローゼリア王国の後継者争いに巻き込まれ。
その争いに勝利し、ルピスを女王として即位させるも、亮真は自由になるどころか、住民がいない荒廃したウォルテニア半島を領地として与えられ、貴族にされてしまう。

彼は歳若い奴隷を購入し、彼らに武術を教えて兵士に育成し、半島の貴重な魔獣を狩り資金を稼ぎ。
また、海賊の巣窟を攻撃し、そこで奴隷にされていたダークエルフと知り合い、彼らの特有の技術で魔剣や魔法防具を量産し、兵士たちの装備を強化に成功する。
さらに、ダークエルフの特性を持つ薬で重傷者も迅速に回復させ、損耗率を大幅に減らすことにも成功。

そんな兵士たちを率いてザルーダ王国に援軍を送り、オルトメア帝国の侵攻を食い止め。
辺境伯と北部十家との戦争にも勝利するが、貴族院での審問中に死刑が決定される前に、亮真は貴族院のメンバー全員を殺害し、自分の領地へ逃亡。

反乱を討伐するためにルピス女王が率いる20万の大軍がウォルテニア半島に攻め込むが、亮真は別動隊で貴族の領地を荒らし、後方を撹乱し、20万の軍を瓦解させる。
退却を始めたルピス女王の軍を追撃し、王都を包囲する。王都内で反乱を誘導し、首脳陣を殺害して王都を陥落させ、新女王ラディーネを擁立。

亮真は大公となるが、国の実権を握ることはせず、ウォルテニア半島の開拓に専念することを決意するのだが、、、

読んだ本のタイトル

ウォルテニア戦記XXVI (Record of Wortenia War)
著者:保利亮太
イラスト:bob

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あらすじ・内容

ミスト王国貴族の裏切りが亮真を襲う!!

ザルーダとミスト、二正面の戦いどちらにも早急にカタを付けたい亮真はミスト南部の都市ジェルムクの包囲を突破してミスト軍との合流に成功する。 しかしミストの王都エンデシアでは、亮真の奮闘を裏切るような密約が進行していた。北部貴族と南部貴族の対立を抱えたミストでは、南部貴族のなかにブリタニア王国との同盟を唱える一派が居たのだ。 ブリタニア同盟派貴族の蜂起によって、南北から挟み撃ちにされた亮真は最大の危機を迎えるが――。 王道異世界戦記、第26巻!

ウォルテニア戦記XXVI

感想

南部都市ジェルムクへのタルージャ&ブリタニア連合の侵攻は、”組織”が主人公、御子柴亮真を殺すための罠だった。

知らずに国王への挨拶もせず、包囲されたミスト南部の都市ジェルムクの援軍に赴いた亮真。タルージャ&ブリタニア連合軍を撃退し、ジェルムクに入城。奇襲を受け、15%ほどの兵1万を損耗した連合軍は包囲を解き、軍の再編を行っていた。

一方、守備軍は亮真が率いる御子柴軍4万が最大戦力。
ジェルムクでは1万ほどの兵が損耗し、将軍が不在。いるのは千人長(地球人で組織の回し者)で、将としての器量はなかった。
さらにミスト王国内では北部と南部貴族の政争が勃発。
ジェルムクへの援軍第一陣は、暴風のエクレシアが率いるわずか3千人の兵だった。あまりの少なさに頭を掻く亮真。

後続として約10万人規模の援軍を送る予定だったが、南部貴族が非協力的で到着時期が不確か。
軍を率いる将軍は”組織”から送られた地球人で、これが”組織”の用意した”埋伏の毒”だった。

何十年も潜伏し、ミスト王国のために戦ってきたデュラン将軍は、飛鳥と共に転移してきた元警察官の楠田が企画した作戦に協力。
怨念を溜め込んでいた宰相を唆し、国王暗殺を実行させる。
その後、宰相もデュラン将軍によって斬られ、国王と宰相が暗殺されたと演出される。

次期国王にはオーウェン・シュピーゲルが就任。
新国王はダルージャ&ブリタニア連合に協力し、デュラン将軍が率いる約13万の軍勢がジェルムクへ侵攻する。

後退したザルーダ&ブリタニア連合軍は10万以上に膨れ上がり、合計でおよそ25万の兵が亮真を南北から攻め寄せる。

亮真の軍はわずか4万。

孤立無縁な状況の亮真は自国への撤退を決意するが、状況は極めて困難。

まだ包囲網が完成していないと判断し、ルブア平原で10万以上のダルージャ&ブリタニア連合軍の戦象部隊を双子姉妹の”雷帝爆轟槌”と仕掛けた罠で壊滅させ、連合軍の出鼻を挫く。

一方、ウォルテニア半島で政務を務める御子柴浩一郎は、海賊を討伐して保護した者の中から、、
何者かを救助。
コレが新たな騒動の元になるらしい。

続きはよ!

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フィクション あいうえお順

備忘録

プロローグ

厚い雲が空を覆う曇天の中、リオネという女騎士が東の空を見つめている。リオネは元傭兵で、現在は御子柴大公家に仕えており、約170センチの比較的大柄な女性である。その筋肉質の体は、猫科の動物の俊敏さと荒々しさを兼ね備えている。彼女の赤い髪は人々の視線を引きつけるが、その美しさは彼女の戦いの背景とは対照的である。

リオネは通常、冷静で冷徹な指揮官でありながら、感情を露にすることは珍しい。しかし、彼女の表情は今、憂いに満ちている。最近の報告により、彼女はザルーダ王国の状況について深い懸念を抱いている。ザルーダ王国は山が多く鉱脈に恵まれた国であり、特に鉄鉱石の産出が西方大陸で随一である。しかし、その国土の多くが山で占められており、農業には適していない。国民は頑強で愛国心が強いが、食料自給率は低く、天候不良が起これば飢饉に陥りやすい状態にある。

リオネは、オルトメア帝国との戦争においてザルーダ王国が孤立していることを憂えており、政治的な一枚岩になることの難しさを痛感している。そのような状況の中でも、彼女は将としての責任を果たそうとしている。

ザルーダ王国の王族、官僚、貴族、国民という異なる意思が国難を前に統一されていないのは、非常に危険な状況である。特に、貴族たちの間では意見が割れており、会議では徹底抗戦から無条件降伏まで様々な意見が飛び交っている。この意見の対立は、貴族たちの間にも愛国心がないわけではないが、自らの保身や私欲が混ざっているため、状況は複雑化している。

貴族たちが自分の意思で全てを決定できないのは、身分の壁が絶対的であるためだが、身分だけでは全ての無茶を解決できない。また、貴族たちは、オルトメア帝国に対抗できるか疑問を抱え、その不確実性から毅然とした命令を下すことができず、戦意が喪失している。国王が陣頭指揮を執れない現状も問題を複雑にしている。

結局のところ、リオネは従来の軍隊としての機能が失われることを懸念しており、戦場での逃亡兵の存在が他の兵士に動揺を与えることを心配している。そのため、軍隊の指揮を統一する指導者の不在が、戦いにおける致命的な問題となっている。

ロベルト・ベルトランが率いる小規模な部隊がオルトメア帝国の大軍を前に防衛線を維持し、逆に押し上げる戦果を上げている。
この戦果は、ロベルトの強襲戦術と、ザルーダの将、オーサン・グリードの補助のおかげである。
ザルーダ王国の防衛戦では地の利を生かしているが、国王の病床という状況は戦況に大きな影響を与えている。
リオネは現状に不満を抱えながらも、ジョシュア・ベルハレスに対する期待を持ちつつ、彼が戦の才に恵まれているものの政務には不慣れであるため、彼にはまだ成長が必要であると感じている。
シグニスはジョシュアの努力を評価しつつも、リオネの期待が高いことを認めている。

第一章  届けられた積み荷

城塞都市ジェルムクの包囲が解かれてから七日後、御子柴亮真が城壁の上から周囲を観察している。
御子柴亮真は戦時中でありながらも、マルフィスト姉妹と共に敵の動向を警戒している。
彼は強化された視力を使い、敵の影を探しているが、現時点では敵は見当たらない。
最近の奇襲によりブリタニアとタルージャの連合軍の包囲網を破ることに成功したが、戦闘はまだ続いており、敵の完全な撃退には至っていない。

亮真が使用する技術や戦略は、この大地世界での戦争においても効果的であることが示されている。
連合軍は大きな損害を受けたが、全滅には至っていないため、戦いは終わっていない。亮真の軍は、ブリタニアとタルージャの連合軍を大きく削減し、敵兵の血で大地が赤く染まるほどの戦果を上げた。
それにもかかわらず、敵はまだ大数を保っており、完全な勝利には至らない状況が続いている。

亮真は戦闘中にもかかわらず、黒エルフ族に作らせた特別な双眼鏡を使用している。
この双眼鏡は、視力強化、暗視機能、遮光機能、防水機能、曇り止め防止など、多くの高度な機能を備えており、彼の戦闘能力を大いに支えている。
亮真はこの技術を評価し、黒エルフ族への適切な報酬を考える必要があると感じている。
また、亮真は黒エルフ族を含む亜人種に対して公平な扱いを心がけており、彼らとの関係を大切にしている。

それは依存症に近いかもしれないとされる状況であり、黒エルフ族の欲求が解放されることによって、歯止めが効かなくなっている状態である。
不老長寿を持つ黒エルフ族にとって、単に生き延びるだけの生活は悪夢のようであり、楽しみが必要なのは明らかである。
亮真は、これを理解しており、彼自身も美食を好む傾向にある。
大地世界における生活環境の劣悪さは、飲み水を確保することすら困難であり、日々の生活に必要な文化や技術の水準も低い。

大地世界の芸術や料理は、質が低いわけではないが、その数が少なく、特色や独自性が乏しいため、総体的な質が低下している。
技術の向上には多くの試行錯誤が必要であり、それには切磋琢磨が不可欠である。
また、レベルの高い芸術作品が亮真の趣味に合わないこともあるため、多様な選択肢が必要となる。
一度手に入れたものは失いたくないという心理が働く。

また、職人技の問題として、製作に時間がかかり、材料の入手が難しいこと、製品の品質に差が出ることがある。
黒エルフ族は技術向上に前向きであり、生産体制の改善が必要だが、彼等が納得しなければ本当の意味での改善は望めない。
亮真は、職人の技術を尊重しながらも、より効率的な生産方法を模索しているが、それが容易ではないことを理解している。

亮真は会社勤めの経験がないが、インターネットやビジネス書で参考になりそうな事例は多く見つかる。
良かれと思った改善提案が現場の負担を重くし、生産性や安全性を下げることがある。特に、運用効率を無視した煩雑過ぎるマニュアルを作ると、現場は裏マニュアルを作ってしまうことが多い。
これは上司が部下へ求める作業量が回らないほど多いためである。
企業は利益を出す集団であり、利益が出せない企業は人員整理を行うことが多い。
しかし、現場の声を重視し過ぎると抜本的な改善は難しい。
大切なのは、上司が現場の作業内容を理解し、何が目的かを明確にすることである。
しかし、亮真は城塞都市ジェルムクにおり、付与法術師達との直接的な対話は不可能である。
亮真は、現状を改善するために現場の理解と適切な対話が必要だと考えている。

兵士の仕事は戦うことであり、その中には自己の生命を危険に晒すことも含まれる。
将の仕事は、兵士たちに命を懸けて戦うよう命じることであるが、この命令には根拠が必要だ。
エクレシア・マリネールが前線に赴いた場合、彼女が引き継いだ軍の編制を誰が担うかが問題となる。
現状では、デュラン将軍が軍の編制を行っており、その背景には彼の高い信頼と病床からの復帰がある。亮真はこの情報に驚き、エクレシアの説明にも疑問を感じている。
セイリオスから届いた荷物には、戦争の様相を変える可能性のある秘密兵器が含まれており、その使用は慎重に検討されている。
亮真はエクレシアからの詳細な質問に対しても情報を秘匿しており、実際にその効果を見るまでは秘密を保つつもりである。

第二章  埋伏の毒

王都エンデシアに位置するデュラン男爵邸に、一台の馬車が到着し、男爵邸の執事が来客を歓迎する。
来客の男は中年で、貴族服をまとった文官のような風情を持つ人物だ。
男は執事の案内も受けずに馴染みのある執務室へと直行する。
執務室には、デュラン男爵が待っており、男の到着を感じ取り扉を開いて入るよう促す。
男爵の屋敷では、通常の警護の姿もなく、男爵自身が強い自信と風格を持つ一方で、何か非常に優れた能力を持つことを示唆する。
男爵はミスト王国の三将軍の一人であり、長い戦歴を持つ。その存在感と風格は多くの人々を圧倒する。
男爵は室内で待っており、シュピーゲル宰相としての来訪者を迎え、自分が忙しいことを伝えながら書類の整理を続ける。
シュピーゲル宰相は男爵の誠実な対応を理解し、忙しい中での対応を気に留める。

問題は、エクレシア・マリネールが持つ実績と南部貴族からの反感である。
エクレシアがマリネール家の所領を持つことや、その経済力は強く、南部の貴族達とは対立関係にある。
このような状況では、交渉による問題解決が難しい。エクレシアは戦場での才能はあるが、政治的な対応には未熟な面がある。
シュピーゲル宰相とデュラン将軍は、エクレシアの若さと経験の不足を認識しており、彼女が戦の才能を持つ将軍として成長するにはまだ時間が必要であると見ている。
デュラン将軍は、戦略的な手段として噂を流すことを提案し、その効果を説明する。
シュピーゲル宰相は、デュラン将軍の政争に長けた策略に感銘を受けている。

この場合、噂の真偽は重要ではない。
真実かどうかではなく、噂が流れた段階で、貴族家にとって致命傷になりかねないからである。
彼らは謀反を企んでいないが、噂を否定することができない。否定すれば、疑惑の目を向けられる可能性が高い。
人々は過去の行動から人物を推し量るため、現在進行形で国の要請を断り続けている彼らの信用度は低下している。
そのため、彼らは噂を傍観するわけにはいかず、積極的に国への忠誠心を示さなければならない。
デュラン将軍は、噂を真実にすることもできると述べ、シュピーゲル宰相は、非常の際には非常の手段をとることの重要性を理解している。
デュラン将軍は、必要とあれば味方でも切り捨てることができると述べ、国を守ることが重要であると強調している。

この大地世界では、命を失う危険が溢れており、そのために人々は本能的に多くの子供を作ろうとしている。
デュラン将軍は「貧乏人の子沢山」という言葉を引用したが、楠田はその言葉の意味が本来は子供を多く持つことの幸福に関するものであり、文脈が異なると指摘する。
しかし、デュラン将軍はその指摘を受け入れ、楠田の精神や優秀さを評価する。楠田もデュラン将軍に対して敬意を表し、彼の率直な反応に感謝する。
このやり取りは、デュラン将軍が人の上に立つ人間としての余裕と器量を持ち合わせていることを示している。
また、楠田に対するデュラン将軍の配慮は、彼がどれほど人間性を重んじているかを反映している。

楠田が組織の構成員に救助されたのは、彼の地球人としての服装から素早く識別されたためである。
彼は組織の目的に共感し、自身も助けられた恩から組織に加わることを決める。
デュラン将軍がミスト王国に長年潜入していた事実を知り、楠田はその計画の大きさに驚く。
デュランは若い頃から組織の支援を受け、最終的にミスト王国の将軍にまで上り詰めた。
その過程で多大な支援と犠牲が伴っていたことを楠田は理解する。
今回のミッションは御子柴亮真という目標を排除するためのものであり、須藤秋武がこの計画に関与している。
楠田は須藤の意図や、御子柴の命運に対する真意が明確でないことを感じ取りつつ、彼の指示に従い行動を続けることを決意する。

第三章  エンデシアの政変

エクレシア・マリネールが三千の兵と共に城塞都市ジェルムクに入城して十日が経過しようとしている。
この日、御子柴亮真とその大公家の人々、及び三将軍の一人であるエクレシアは、伊賀崎衆からの報告を聞いていた。
伊賀崎衆の忍びが報告を終えて退室すると、部屋は重苦しい沈黙に包まれた。
その理由は、敵軍の動きが予想以上に大きく、彼らがジェルムクを包囲していたブリタニアとタルージャの連合軍が退却したにも関わらず、戦争がまだ終わっていないという現実と、次なる大きな軍事行動の準備が進んでいることである。

会議中、亮真は敵軍の動向についての詳細な情報収集と、ある秘密兵器の実用テストの準備を指示する。
彼の計画には、その兵器を使って敵に一大ショックを与える意図があるようだ。
この秘密兵器の具体的な内容や目的は詳しく語られなかったが、亮真の態度からはその兵器に大きな自信を持っていることが伺える。
また、この兵器が科学的にも重要な進歩を意味していることが示唆されている。
そのため、翌日ジェルムクの中庭でその兵器がテストされる予定であることが明かされる。

レナード・オルグレンは、御子柴大公家に仕えることに決めた経緯や、その背後にある動機が語られる。
彼は、亮真の強力なリーダーシップと戦略的な判断力を高く評価しており、彼のもとで仕えることでローゼリア王国の未来をより良くすることができると信じている。
一方で、亮真が次の戦略的一手として敵軍に対する更なる情報収集を強化し、戦いに備える方針を明確にしている。

光があれば影があるように、良いことには必ず悪いことが付きまとう。
亮真は、全ての情報を無条件で公開すべきではないと考えている。
公開されることにより技術競争が生まれ、より優れた技術が生まれる可能性はあるが、その一方で競争が必要ない技術も存在する。
例えば、セキュリティ技術などはその典型であり、公開すれば犯罪に悪用されるリスクが高まる。
武術も同様で、技の秘匿が重要視される。
敵に手の内を知られないため、技を広めることは避けるべきであるとされる。
この考え方は、情報公開を推進する現代社会のスポーツ化した格闘技とは異なる。
亮真は、同盟国であっても他国の人間であるため、技術の秘匿が重要であると認識している。

フィリップ国王は異母弟オーウェン・シュピーゲルに対して感謝と称賛の言葉を送るが、シュピーゲル宰相は自分よりもエクレシア・マリネールとデュラン将軍を称賛すべきだと答える。
フィリップはシュピーゲル宰相の功績を認め、報酬を約束するが、シュピーゲル宰相はその場をしのぎ、フィリップを刺殺する。デュラン将軍が介入し、王宮で火災が起こる。
城塞都市ジェルムクでは、この事件が政変であるとの報せが広まり、不安が拡がる。
兵士たちは様々な憶測を交わし、新国王としてのシュピーゲル宰相の即位が告げられる。

エクレシアに関する北部貴族による暗殺の噂が流れる中、亮真はその事実が国の戦略に大きな影響を与えかねないと考えている。
国王暗殺という事態により、ミスト王国の政治が大きく変わる可能性があるが、それがどのような方向に進むかはまだ不明である。
亮真は城塞都市ジェルムクでの籠城戦を検討していたが、突然の悪報により兵士の士気が低下し、その計画を続行するのが困難になっている。
さらに、エクレシアが率いる三千の援軍も不安と恐怖で戸惑っており、籠城戦が不可能になる可能性が高まっている。
亮真はエンデシアからの援軍の動向が未だ不明であり、今後の戦略を立てるためにもその情報が必要であると感じている。

第四章  怒れる雷帝

城塞都市ジェルムクへアレクシス・デュランが率いる十三万の大軍が進軍することが報告された。亮真はこの報告が正しいと予想していた。
エクレシアを含むジェルムクの首脳陣は会議を開き、籠城戦の方針を確認している。
敵軍の数が多いため、野戦よりも籠城が適切であると結論づけた。
しかし、ハンス・ランドールが密偵であり、敵側に情報を流していることが暗示されている。
ハンスはデュラン将軍の裏切りを描いており、ジェルムクの防衛戦は予想された展開とは異なる可能性がある。
亮真はハンスの行動に気づき、彼の殺害を命じている。
エクレシアはハンスがブリタニアやタルージャとは連携していないことを理解し、デュラン将軍の裏切りに気付く。

亮真は、デュラン将軍が大軍を率いてジェルムクに向かうという伝令の報告を受け、そのタイミングの良さに疑念を抱く。
エクレシアも、フィリップ陛下の死に北部貴族が関与しているとの噂がある中で、エンデシアからの大軍派遣は不自然だと感じる。
亮真は、デュラン将軍がフィリップを暗殺し策謀を巡らせた当事者であると結論付ける。
ジェルムクに籠城する選択肢は無効とし、亮真は部隊の撤退と態勢の立て直しを計画する。
エクレシアは亮真に同行し、オーウェン新国王との対峙を覚悟する。
亮真は、ジェルムクの住民を利用してデュラン将軍の進軍を遅らせる策を提案する。
そして、最終的には、エクレシアが戦略的に亮真と行動を共にすることを決める。

亮真が重装歓迎たちに斜陣形成を命じ、戦象の突進を捌くための指示を出す。
この戦術により、敵の突進を受け流し、敵が罠にかかったと感じさせる。
これは受け流しによって敵の力を逸らす太極拳の原理に類似している。
戦象の突進をうまくいなし、敵の化外の民たちの間に動揺が生じる。
これらの動物たちは一旦突進を始めると、止めることができないため、自らの命を危険にさらす状況に追い込まれる。

亮真はこの瞬間を待ち望んでおり、隠されたマルフィスト姉妹に指示を出す。
姉妹は高度な文法術を用いて範囲殲滅用の魔法を発動させる。この技術は連携法術であり、同調して術を高めることが可能である。
彼女たちの魔法は成功し、天からの雷光が敵を一掃する。

その後、巨大な爆発が敵軍を飲み込む。
これはマルフィスト姉妹の術式が大地に埋められた爆発物を誘爆させた結果である。
この一連の展開により、敵は大混乱に陥り、亮真の兵たちはこの機を捉えて全軍で敵陣を突破することに成功する。
敵の士気は完全に崩壊し、亮真の計画通りに戦闘は終結する。

エピローグ

御子柴浩一郎が城塞都市ジェルムクの郊外でブリタニアとタルージャの連合軍を相手に死闘を繰り広げている一方で、北のウォルテニア半島では、彼の祖父である老人が紙の山に囲まれて執務に励んでいた。
老人は八十を超えるが、その姿は精悍で、和装を身に着けた異国情緒あふれる風貌をしている。
この老人は嘗ての覇王の祖父であり、その地位から離れた今もなお、留守居役として重要な行政業務に追われている。
昼食時間も忘れるほどの忙しさの中、やっとの思いで書類仕事を一段落させた老人は、愛用の煙管で一服し、息抜きをする。
そして、亮真が命じた都市開発や補給物資の管理などの重責を不満げに語りつつも、実際にはそうした書類仕事の方が苦手であると感じている様子だった。

御子柴浩一郎は、城塞都市ジェルムクの郊外での戦闘中に留守居役を任されている。
不満を口にすることもあるが、それは不平不満というよりも身内へのボヤキに近い。
彼の表情からは孫に頼られていることへの嬉しさも感じられる。
また、浩一郎は自身の仕事に対して複雑な感情を持っており、自分の処理が完璧でないという思いと、適切に処理しているという自負が入り混じっている。

御子柴大公家に仕える家臣の中では、ザルツベルグ伯爵やゼレーフ伯爵のように内政に長けた人材は限られている。
彼らは亮真との信頼関係も深く、領主としての経験も豊富であるため、理想的な選択肢だが、それぞれが重要な任務を担っているため、浩一郎が留守居役を引き受けることになった。
彼の能力と経験を考えれば、戦地の最前線に立つのが適しているが、現在の状況ではその能力を後方支援や政務で使用するしかない。
これは、高い潜在能力を持つ彼にとってはやや役不足である可能性があるが、必要に応じてはその役割を果たすしかないのが現状だ。

浩一郎は自身の選択について、後悔と受け入れの間で葛藤しており、現在の仕事に対する不満も感じているが、それを受け入れざるを得ない状況にある。
仕事を通じて、人間関係の重要性や金銭の力を理解する一方で、自身の過去の決断を振り返り、若い頃にもっと学ぶべきだったと感じている。
しかし、それは過去の事であり、変えられない。今日はネルシオスとの重要な会談が予定されており、その準備で忙しい一日を過ごすことになる。
浩一郎は、政務の能力や人材の不足を感じつつも、現状を改善する望みを持ち続けているが、それが容易ではないことを自覚している。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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