小説「ウォルテニア戦記 XXⅧ(28)」感想・ネタバレ

小説「ウォルテニア戦記 XXⅧ(28)」感想・ネタバレ

どんな本?

学校の屋上で弁当を食べていた高校生、御子柴亮真が突然異世界に召喚される。
しかし、彼は普通の高校生ではなかった。
召喚した魔術師を殺害し、逃亡中に双子姉妹を仲間に加え、大国であるオルトメア帝国から逃れる。

安全だと思ったところで傭兵活動を始めると、ローゼリア王国の後継者争いに巻き込まれ。
その争いに勝利し、ルピスを女王として即位させるも、亮真は自由になるどころか、住民がいない荒廃したウォルテニア半島を領地として与えられ、貴族にされてしまう。

彼は歳若い奴隷を購入し、彼らに武術を教えて兵士に育成し、半島の貴重な魔獣を狩り資金を稼ぎ。
また、海賊の巣窟を攻撃し、そこで奴隷にされていたダークエルフと知り合い、彼らの特有の技術で魔剣や魔法防具を量産し、兵士たちの装備を強化に成功する。
さらに、ダークエルフの特性を持つ薬で重傷者も迅速に回復させ、損耗率を大幅に減らすことにも成功。

そんな兵士たちを率いてザルーダ王国に援軍を送り、オルトメア帝国の侵攻を食い止め。
辺境伯と北部十家との戦争にも勝利するが、貴族院での審問中に死刑が決定される前に、亮真は貴族院のメンバー全員を殺害し、自分の領地へ逃亡。

反乱を討伐するためにルピス女王が率いる20万の大軍がウォルテニア半島に攻め込むが、亮真は別動隊で貴族の領地を荒らし、後方を撹乱し、20万の軍を瓦解させる。
退却を始めたルピス女王の軍を追撃し、王都を包囲する。王都内で反乱を誘導し、首脳陣を殺害して王都を陥落させ、新女王ラディーネを擁立。

亮真は大公となるが、国の実権を握ることはせず、ウォルテニア半島の開拓に専念することを決意するのだが、、、

読んだ本のタイトル

ウォルテニア戦記XXVⅢ (Record of Wortenia War)
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏

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あらすじ・内容

亮真ひきいるウォルテニア軍に手に落ちたハリシャ。 果たして彼女の運命は――。

ウォルテニア軍の罠にかかり、気を失ったハリシャ。彼女を庇った ラーヒズヤはローラたちに降伏する道を選ぶ。 ハリシャの快復を待って彼女を尋問した亮真は、ハリシャやラーヒ ズヤたち「マニバドラの民」の立場を聞かされる。 マニバドラの民の高い戦闘力に強い印象を受けた亮真は、彼らを仲 間にしたいと考えるが――。

ウォルテニア戦記 XXVIII

感想

今巻は、御子柴亮真がマニバトラ部族との交渉を通じて新たな同盟を築くまでの過程と、ザルーダ王国での激しい戦闘が描かれている。

撃退した戦象部隊を率いたハリシャが昏睡から目覚め、彼女が部族のために提案した条件が中心に据えられている。
亮真は、ハリシャとの予想外の展開に驚きつつも、冷静さを保ちながら交渉を進め、新たな協力関係を築くことに成功した。

一方、ザルーダ王国では、オルトメア帝国との激しい戦闘が続いていた。
ザルーダ王国は尚武の国として知られていたが、帝国の圧倒的な軍事力に次第に追い詰められ、滅亡の危機に直面していた。
そんな中、御子柴大公家の援軍がザルーダに派遣され、特にロベルト・ベルトランが指揮する騎馬隊が戦局を大きく動かしていた。
ロベルトの圧倒的な戦闘力と策略により、ザルーダ王国軍は劣勢を跳ね返し、オルトメア帝国軍の本陣を突撃することに成功した。

ロベルトの勝利はザルーダ王国に一時的な安堵をもたらしたが、戦争は終わらず、次なる戦いへの準備が進められる。

そんな戦闘があった同時刻。
シグニス・ガルベイラもまた、新たな戦いに備え、王都ペリフェリアで武を磨いていた。
彼はオルトメア帝国の別動隊を待ち伏せし、巧妙な罠を仕掛けることで敵を壊滅に追い込み、敵将ロルフとの激しい戦闘が繰り広げた。

最終的に、シグニスは勝利を収めたものの、ロルフは須藤秋武の助けで逃亡。
この戦いによって、ザルーダ王国とオルトメア帝国の戦は新たな局面を迎えた。
そして、イラクリオンからザルーダ王国へ移動した御子柴亮真が王都ペリフェリアへ到着し、期待を膨らませた状態で次巻へ続く。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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ウォルテニア戦記IV
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ウォルテニア戦記 XXⅧ

その他フィクション

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フィクション あいうえお順

備忘録

前回までのあらすじ

元日本の高校生であった御子柴亮真は、オルトメア帝国の首席宮廷法術師ガイエス・ウォークランドによる儀式の結果、大地世界と呼ばれる異世界へ召喚された。彼はその場で機転と決断力を発揮し、帝都から脱出した。その後、彼は偶然にもローゼリア王国の内乱に巻き込まれ、その功績によりウォルテニア半島を領有することになった。

御子柴は、美しい双子の姉妹や赤髪の傭兵と共に、この半島に巣食う海賊を一掃し、領内の開発に尽力していた。しかし、この世界は彼を容易には解放しなかった。オルトメア帝国の第一次ザルーダ侵攻や、ローゼリア王国の国王ルピス・ローゼリアヌスとの対立による北部征伐など、数々の戦いが彼とその仲間たちを襲った。

その結果、御子柴はローゼリア王国の貴族として大公の地位にまで昇り詰めたが、さらなる困難が彼を待ち受けていた。隣国ザルーダ王国の国王ユリアヌスが急病に倒れ、オルトメア帝国が再び侵攻を開始したのである。御子柴大公家は対応に追われ、さらにブリタニアとタルージャ王国がミスト王国への侵攻を開始したことにより、東西二方面での戦争に巻き込まれることとなった。

御子柴は戦線を短縮するため、城塞都市ジェルムクへの遠征を決断したが、これは彼の命を狙う西方大陸の闇に潜む組織の謀略であった。ミスト王国の国王が暗殺され、宰相オーウェン・シュピーゲルが新国王となった。また、組織の工作員であるアレクシス・デュランが率いるミスト王国軍がジェルムクへ南下を開始したという報告を受け、御子柴はついにこれらの戦争が自身を狙う策謀であることを見抜き、ローゼリア王国への撤退を決めた。

現在、御子柴はローゼリア王国南部の城塞都市イラクリオンへと撤退し、新たな道を模索し始めたのである。

プロローグ

真円の月が闇夜に浮かんでいたローゼリア王国の城塞都市イラクリオンの一角に設けられた部屋で、ラーヒズヤという男が眠り続けるハリシャという女性を見守っていた。ラーヒズヤは、彼女が目覚めないことに憂いと不安を抱きながらも、ハリシャの髪を撫でることで安堵していた。

ハリシャは、マニバトラ部族の中でも有力者であり、戦象部隊を率いていたが、大規模な爆発に巻き込まれ、意識を失った。ラーヒズヤは彼女を無事に救出したものの、意識が戻らないハリシャを前にして、彼は次第に苦悩していた。彼女の愛象パオパブもまた、その爆発で命を落とし、彼女の心にさらなる衝撃を与えることを恐れていた。

ラーヒズヤは、御子柴亮真と交渉を行うための時期を見計らっていた。ハリシャの回復を待つのか、それとも自らの手で結論を出すべきか、彼は自問自答していたが、最終的にはその考えを振り払い、ハリシャの額を優しく撫でて部屋を後にした。

二日後、神はラーヒズヤの願いを聞き入れ、ハリシャは再び意識を取り戻した。これがマニバトラ部族を始めとする鬼人種たちに新たな道を提示することになるが、その先に何が待ち受けているのかは、神々でさえも知る由はなかった。

第一章  目覚めた眠り姫

灰色の分厚い雲が空を覆い、嵐が近づいている状況で、御子柴亮真はローゼリア王国の城塞都市イラクリオンにある執務室で書類に取り組んでいた。雷鳴が轟き、集中力を削がれた亮真は、普段冷静な彼にしては珍しく苛立ちを見せた。

亮真は、軍の再編制や物資の補充を指示する重要な書類を処理しており、時間が足りないことに不満を抱えていた。彼は、自身の立場と忙しさに対する皮肉を感じつつも、必要な準備を怠らないよう努めていた。

その時、亮真の補佐役であるサーラが無言で立ち上がり、ミントティーを用意した。サーラの心遣いに感謝しつつも、亮真はこの異世界の厳しい現実に向き合い続けた。

彼はミントティーと菊菜が教えたレシピで作られたクッキーを楽しみながら、心の中で神に対する不満を感じていたが、最終的にはそのひとときの安らぎに感謝していた。

亮真はサーラが用意した蜂蜜入りのミントティーとクッキーを楽しんでいたが、その背後には彼の苛立ちや焦りが隠されていた。彼の苛立ちの原因は、突如として意識を取り戻したハリシャの存在であった。

ハリシャが意識を回復したこと自体は喜ばしいことであるが、そのタイミングは亮真にとっては不都合なものであり、今後の戦略に影響を与える可能性が高いと彼は感じていた。ハリシャの回復により、交渉相手が変わることを余儀なくされる可能性があり、それは亮真にとって大きな負担となった。

亮真は、ハリシャとの会談が今後の交渉の鍵となることを理解しつつも、その結果次第では再度ラーヒズヤとの交渉を考え直す必要があると考えていた。彼は明日の会談を前に、サーラにもう一杯のお茶を頼み、神々に対する不満を心に抱きながら、窓の外の曇天を見つめ続けた。

しかし、翌日、亮真の予想を超える出来事が彼を待ち受けており、それは誰にも予測できない運命の展開であった。

第二章  新たなる局面

前日の悪天候が嘘のように穏やかな天気となったが、御子柴亮真にはその恩恵を享受する余裕がなかった。彼は、マニバトラ部族との重要な交渉のため、嫌いな貴族風の装いをし、会談に臨む準備をしていた。

交渉の場において、亮真はハリシャとラーヒズヤが彼らの文化に合った装いをするよう配慮した。彼は、彼らに惨めな思いをさせたくないと考え、彼らの民族衣装に似た服を用意していた。

会談が始まり、ハリシャは亮真の意表を突く形で、マニバトラ部族の民のために亮真の援助を受け入れる意向を表明した。彼女の言葉に、亮真は驚き、しばし言葉を失った。この会談は亮真にとって予想外の展開となり、交渉の主導権を握るための先制パンチを食らった形となった。

亮真は、彼女の申し出に対してどのように対応すべきかを考える必要があったが、予想外の展開に一瞬、冷静さを欠いた様子を見せてしまった。

御子柴亮真は、祖父・浩一郎から叩き込まれた教えと修練を基に、ハリシャとの予想外な展開に、ハリシャの本心を探ろうとした。彼女が提示した条件は、食料援助を受ける代わりに、マニバトラ部族が御子柴大公家と協力し、他国との戦いに備えるというものであった。

亮真は、ハリシャの覚悟を試すような質問を投げかけたが、ハリシャは冷静に対応し、全ての夜叉に恩恵をもたらすことができれば、友好関係を築く可能性があると答えた。最終的に、亮真とハリシャは協力関係を結び、御子柴大公家とマニバトラ部族は新たな一歩を踏み出すこととなった。この会談は亮真の戦略が新たな局面を迎えたことを示していた。

御子柴亮真は、ハリシャとの会談を終えた後、祖父である浩一郎と旧ザルツベルグ伯爵邸で密談を行った。亮真は、ハリシャとの交渉が成功したことを伝えたが、その裏には御子柴家の将来に関わる重要な計画があった。浩一郎は、亮真が秘策を持っていることを見抜き、彼に助けを求めるよう促した。

亮真は、浩一郎から手に入れた貴重なマッカランのウイスキーを提供し、組織との交渉を依頼したが、浩一郎はそれを見透かしていた。浩一郎は、亮真の計画に賛同し、共に戦う決意を新たにした。二人はグラスを交わし、亮真の決断が成功に導かれることを願いながら、その夜を過ごした。

第三章  煌めく斧槍

朝日が昇り始めた日、ザルーダ王国のウシャス盆地にて、親衛騎士団長オーサン・グリードは戦況に思いを馳せていた。ザルーダ王国は尚武の国として知られ、オルトメア帝国の侵攻に対して激しい抵抗を続けていたが、その力は次第に衰えていた。

オルトメア帝国の侵攻が原因で、ザルーダ王国は国土を次々と失い、滅亡の危機に直面していた。グリードは祖国を守るために奮闘していたが、オルトメア帝国との戦力差は明らかであり、その戦意は限界に近づいていた。

その状況下で、ザルーダ王国はローゼリア王国から派遣された御子柴大公家の援軍に依存していた。特に、援軍の指揮を執るロベルト・ベルトランの存在が戦局を左右しており、グリード自身もその力を認めざるを得なかった。ロベルトは一見洒脱な人物に見えたが、その実、獰猛で計算高い戦略家であり、その才能は周囲からも恐れられていた。

ザルーダ王国の人々は、グリードを新たな英雄として讃えていたが、彼自身はその評価を虚しいものと感じていた。戦況は厳しく、国の存亡を賭けた戦いは続いていたが、彼の胸中にはロベルトの存在が大きく影を落としていた。

その時、オルトメア帝国軍の攻撃が開始され、グリードは将兵たちに指示を与えた。ザルーダ王国の将兵は勇ましく応じ、大地を揺るがす鬨の声を上げた。この日もまた、激しい戦いが繰り広げられる運命にあった。

開戦から数時間が経過し、戦況は混乱の極みに達していた。ザルーダ王国とオルトメア帝国の軍勢が乱戦状態に陥り、どちらも退却せず陣形を立て直すことができなかった。これはザルーダ王国が仕掛けた罠であり、ついにその秘策が発動された。

ザルーダ王国軍の後方に待機していた三千の騎馬隊が、敵の本陣を狙って突撃を開始した。この騎馬隊の先頭に立つのは、御子柴亮真が信頼する猛将ロベルト・ベルトランであった。彼は巨大な斧槍を操り、敵の防御陣を次々と打ち破りながら進軍した。その圧倒的な力にオルトメア帝国軍の兵士たちは恐怖し、士気を大いに損なった。

オルトメア帝国軍の将であるジェームス・トレットは、ロベルトの存在が戦局を大きく変えていることを悟りつつも、打開策を見つけられなかった。彼は部隊を再編成し防御を強化しようとしたが、ロベルトの力はその試みをことごとく打ち砕いた。

トレットは戦線の崩壊を防ぐため、退却するべきかどうかを考えた。彼はロベルト・ベルトランの猛攻に耐えられないことを認識し、若い参謀の退却案を検討した。トレットは時間を稼ぐという戦略的理由から、最終的に退却を決断した。しかし、その決断が遅れ、ロベルト率いる騎馬隊が本陣を襲撃した。ロベルトは圧倒的な力でオルトメア帝国軍を蹂躙し、最終的に戦勝を収めた。

戦いが終わった後、ロベルトは蒸しタオルで顔を拭い、敵兵の血で赤黒く染まった姿で勝利の美酒を楽しんだ。彼はシグニス・ガルベイラが同じように勝利を収めることを確信し、王都ペリフェリアに向けて酒瓶を掲げた。

第四章  唸る鉄棍

ロベルト・ベルトランがウシャス盆地での戦いに勝利し、その余韻に浸っている頃、シグニス・ガルベイラは次の戦いに備えていた。彼は王都ペリフェリア近くの練兵場で武を磨いていた。ロベルトの情報によると、オルトメア帝国の別動隊が王都を急襲する可能性があり、その対応を任されたシグニスは準備を進めていた。

シグニスは自分の武術に対する不安を抱えながらも、己の力を確かめようと必死に鍛錬を続けた。彼は過去の戦場経験や自らの実力を疑うことがあり、心の奥底に不安を抱いていたが、それを乗り越えるために努力していた。

翌日、シグニスの不安と期待は、伊賀崎衆の斥候からオルトメア帝国軍の別動隊発見の報告を受けたことで現実となり、彼の鍛錬は報われることとなった。

王都ペリフェリアの西の森林地帯に、オルトメア帝国の別動隊が接近していた。シグニス・ガルベイラはその動きを察知し、敵軍を待ち伏せしていた。シグニスはロベルト・ベルトランの情報を半信半疑で受け止めつつも、別動隊を見つけたことで、彼の勘が正しかったことを認識した。

別動隊が進む丘の間で、シグニスは仕掛けた罠を発動し、大量の木材と岩石がオルトメア軍に襲いかかった。ロルフは異変を感じたが、間に合わず、兵士たちは混乱した。続いて、シグニス率いる兵士たちが襲撃を開始し、別動隊を壊滅に追い込んだ。

シグニスとロルフは対峙し、シグニスはロルフを強敵と認識したが、戦意を失わずに挑んだ。ロルフもまた、シグニスの力を警戒しながらも、戦いに臨んだ。戦況はシグニスに有利に展開し、ロルフは防戦一方となった。

ロルフとシグニスの戦いは、ロルフが鉄棍の攻撃を耐え続けたが、ついにシグニスの猛攻を受け、ロルフは左腕と盾を失った。この瞬間、戦場の空気は凍り付き、オルトメア帝国の兵士たちはロルフを救おうとしたが、シグニスの勢いを止められなかった。しかし、ロルフがとどめを刺される寸前、突如現れた須藤秋武がシグニスの鉄棍を断ち、ロルフを救った。

シグニスは須藤との対決を挑むが、須藤は驚異的な技量で攻撃を防ぎ、最後には文法術でロルフと共に転移し、その場から姿を消した。シグニスは追撃を断念し、残る敵兵を殲滅することに集中した。この戦いにより、ザルーダ王国とオルトメア帝国の戦は新たな局面を迎えることになった。

エピローグ

オルトメア帝国の奇襲作戦がロベルトとシグニスにより阻止されてから七日が経過した。ローゼリア王国から派遣された御子柴大公軍の黒エルフ族の一万の精鋭がザルーダ王国の首都ペリフェリアへ向けて進軍していた。彼らは黒いマントを身に着け、統一された装備を持つ精鋭であった。

その行軍中、道を譲った旅人は彼らの異様さに驚きを覚えた。彼らの装備は一流の職人によるものと見え、規格も統一されており、一般の兵士とは一線を画すものであった。さらに、掲げられた軍旗に描かれた剣に巻き付く双頭の蛇の紋章が、旅人に強い印象を与えた。

その軍旗を見た旅人は、その軍勢の正体が分からず疑問を口にしたが、すぐに農夫夫婦から「御子柴大公家の軍勢だ」と教えられた。その瞬間、旅人は自分の無知に気付き、彼らが一流の軍勢であることを再認識した。

御子柴大公軍がザルーダ王国を救ったことは、西方大陸東部では常識とされていた。その軍旗に描かれた黒地に剣に絡む金と銀の双頭の蛇の紋章を見れば、一目で彼らの所属が分かるほど有名であった。しかし、その紋章を知らなかった旅人は、周囲の農夫夫婦から疑念を抱かれ、オルトメア帝国の密偵ではないかと疑われた。

農夫夫婦は旅人を警戒し、彼を追及したが、旅人はエルネスグーラ王国から来た商人であり、密偵ではないと必死に弁明した。彼の説得により、夫婦は疑念を少しずつ解き、最終的には構えを解いたが、完全に信用したわけではなかった。

一方で、御子柴大公軍のネルシオスは、彼らの進軍を指揮しつつ、自身の古くからの戦闘相棒である鬼槍グリングランザーに思いを馳せていた。戦場を好む彼にとって、今回の出陣は久々に自身の槍を振るう機会となり、喜びを感じていた。

この進軍が、オルトメア帝国との戦いに新たな局面をもたらすことを示唆しつつ、御子柴大公軍はザルーダ王国の首都ペリフェリアへと進軍を続けた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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