どんな本?
学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。
召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。
帝国から逃げれたと思ったら、ローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。
読んだ本のタイトル
#ウォルテニア戦記 V
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏
あらすじ・内容
ローゼリアの内乱を終わらせた功績で男爵に任じられ、ウォルテニア半島を与えられた御子柴亮真。しかし実際は未開拓の土地を渡されたにすぎなかった。実力を恐れられ、厄介払いでウォルテニアに追われたことに気づいた亮真だが、彼にはウォルテニアの地を足掛かりに、勢力を発展させる秘策があった。一国一城の主となった亮真の活躍を描く新章がスタート!
ウォルテニア戦記Ⅴ
感想
主人公の従姉妹と爺様も異世界に召喚されてしまった。
それを切り抜けたのが爺様だった。。
それでも、従姉妹は。。
それにしても爺様はどんな存在なんだ?
やたらと異世界に慣れてるし。。
そして、主人公は多大な功績を立て過ぎて女王に疎まれて、本来なら国外に出させて貰うはずだったのに、、
貴族にさせられ、辺境の領地を押し付けられる。
ハッキリ言って罰ゲーム。
そんな理不尽を別の世界から来た主人公が赦す訳が無い。
力を貯めて復讐する機会を虎視眈々と狙う。
そのために領地を発展させるためにと言う前に、隣の領地の領主が曲者だった。
王領だった半島の岩塩鉱石を横領してしまうほど、、
そして、王家の目が離れている辺境であるせいで領主はかなり横暴なヤツだが、建前は守るから腹の探り合いが凄い。
話は進まないが、普通にこんなもんだろうとも思う自分もいる。
展開が遅いというより、丁寧なんだろうね、、
爺様と従姉妹と合流するのはいつになるのやら、。
それはそれで面白い。
同シリーズ
ウォルテニア戦記シリーズ
その他フィクション
備忘録
プロローグ
転落と異世界への到来
高校生・桐生飛鳥は、従兄弟の失踪を捜査していた刑事二人と共に異世界へと突然転落した。足元の感触が消えるという不可解な現象に遭遇した飛鳥は、目を開けると石造りの広間に立っていた。隣には、警察官の立花と楠田が頭痛に悩まされながらも無事であることが確認された。
謎の人物ミーシャの出現
飛鳥たちは、ベルゼビア王国の次席宮廷法術師であると名乗る女性ミーシャ・フォンティーヌに出迎えられた。しかし、立花と楠田はミーシャの言葉を理解できず、彼女が異国の言葉を話していると認識していた。飛鳥のみがミーシャの言葉を明瞭に理解できていたが、その理由を解明する間もなく、騎士たちに囲まれた。
警察官の抵抗と戦闘の勃発
警察官の立花と楠田は、武器として特殊警棒を抜いて騎士たちに対抗した。しかし、二人の武器は全身鎧の騎士たちには全く通用せず、楠田は床に叩き伏せられ、立花も続いて捕えられる形となった。飛鳥は声を張り上げて立花たちに武器が本物であると警告したが、彼らの抵抗は無意味であった。
飛鳥への拘束とミーシャの陰謀
ミーシャは飛鳥を見定め、王族への娯楽として彼女を利用する計画を語った。飛鳥が逃げ出そうとするも、その場から逃れる術はなかった。恐怖と絶望に囚われていた飛鳥に、ミーシャの手が伸びようとした瞬間、突然の救いが訪れた。
祖父・御子柴浩一郎の登場と救出
飛鳥の窮地に現れたのは、祖父である御子柴浩一郎であった。浩一郎は無慈悲にもミーシャの右腕を切り落とし、飛鳥を救出した。その冷徹な戦闘技術を前に、騎士たちは為すすべもなく次々と倒されていく。ミーシャもまた、浩一郎に首を斬られ、その場に命を落とした。
戦闘後の飛鳥と浩一郎の再会
戦闘を終えた浩一郎は、穏やかな表情で飛鳥を励まし、無事を確認した。その一方で、彼は大地世界の苛酷さを熟知しており、飛鳥を守るためならば一切の躊躇なく敵を排除する覚悟を持っていた。この再会により、飛鳥は新たな運命の一歩を踏み出すことになった。
第一章 逃避行の始まり
異質な存在への驚愕
立花は、数々の職業犯罪者と対峙してきた経験を持つ強面の刑事であったが、御子柴浩一郎の行動に対して異質な冷静さを感じていた。立花にとって、目の前で冷徹に人を殺めるその様子は、今まで経験した犯罪者たちとは一線を画するものであった。
異国か犯罪組織かへの疑念
立花は、自分たちが警察官であると名乗ったにもかかわらず、相手が全く動じなかったことから、この場所が日本ではない可能性や、強大な犯罪組織である可能性を考慮した。南米の麻薬カルテルやロシアンマフィアのような強力な犯罪組織であれば警察への恐れはなく、状況に適応するが、目の前の相手が鎧姿で武装していることがさらに不可解さを増した。
異世界への疑念と現実への葛藤
状況の異常さから、立花は冗談半分に「異世界召喚」を頭に浮かべたが、それはあくまで自分が信じたくない非現実的な考えであった。騎士たちの挙動や囁き声から、彼らが今後の行動を迷っていることが伺え、立花は状況を冷静に観察することにした。
飛鳥と浩一郎の奇妙な交流
御子柴浩一郎は、無造作に飛鳥へ愛刀を差し出した。飛鳥はそれが、屋敷の床の間に飾られていた刀であることに気付き、その場に持ち込まれた理由に疑念を抱いた。浩一郎は「残る騎士を片付ける」と言い、もう一本の刀を手に、まるで日常の散歩のような足取りで前に進んだ。
騎士たちとの対決
浩一郎の威圧感に耐えかねた騎士たちは、恐怖に駆られながらも勇気を奮い立たせ、彼に戦いを挑んだ。しかし、騎士の槍や剣による攻撃を容易にかわし、浩一郎は彼らを次々に制圧していった。その卓越した技量に、騎士たちは自らの無力さを痛感し、立花もまた浩一郎の強さに圧倒されていた。
立花の反撃と浩一郎の援護
騎士に抑え込まれていた立花は、隙を見て反撃を試みたが、騎士の鎧に遮られ効果が薄かった。しかし、立花の必死の抵抗は無駄ではなく、騎士の体勢を崩すことに成功した。最終的に、浩一郎が騎士を倒し、立花を救出した。
戦闘の終息と安堵
戦闘が終わり、立花は血まみれの体で倒れ込んでいたが、浩一郎の冷静な声に安心感を覚えた。立花は、この異常な状況で命を取り留めたことに深い安堵を感じつつも、今後の展開に不安を抱いていた。
傷の手当てと限界
飛鳥は立花の傷の応急処置として、フェイスシートで顔を拭った。メントールの強いシートの刺激が傷に沁みたものの、他に方法がない状況において、飛鳥は仕方なくこの処置を行った。立花の怪我は重大であり、病院での治療が必要であったが、現状ではそれも叶わず、飛鳥と立花は不安に駆られていた。
携帯電話と連絡不能の状況
楠田が携帯の電波を確認したが、どこに移動してもアンテナが立たなかった。現代日本では稀な電波の入らない状況に、立花たちは不安を抱いた。立花は現状での行動に制約が生じることを痛感し、この場所が普通の場所ではないことを実感していた。
浩一郎からの武器の提供
浩一郎は、立花と楠田に護身用として剣を渡した。立花が困惑する中、浩一郎は「助けが来るとは思わず、ここから逃げるべきだ」と警告を発した。立花はその言葉に反論できず、状況が思った以上に危機的であることを理解した。
異世界への疑念と疑念の受け入れ
立花はこの場所が日本ではなく異世界である可能性を提起し、浩一郎に説明を求めた。浩一郎は、ここが「大地世界」と呼ばれるベルゼビア王国であり、ミーシャ・フォンティーヌの召喚により彼らがこの世界に呼び出されたと語った。楠田はこの説明に納得できず怒りを爆発させたが、立花は冷静に浩一郎の話を聞き、真実を受け入れるしかないと覚悟した。
帰還の可能性と絶望
立花は日本に帰れる可能性を浩一郎に尋ねたが、浩一郎は「非常に難しい」と答え、帰還が運に左右されるものであると明言した。希望がほぼ断たれた立花たちは、その言葉に衝撃を受けた。
飛鳥への別れと逃走の指示
広間の扉が乱打され、敵が近づいていると察した浩一郎は、飛鳥に逃走を指示した。飛鳥の疑問に答える時間がないまま、浩一郎は飛鳥、立花、楠田を先に行かせ、自らが囮となって敵の注意を引きつける覚悟を固めた。
浩一郎の決意と戦い
飛鳥たちを逃がした浩一郎は、敵の騎士団に対して凄まじい殺気を放ち、自らの力を示した。襲撃に現れたフォンティーヌ伯爵に対し、浩一郎は妻ミーシャの仇として戦いを挑んだ。浩一郎の圧倒的な力は、王国の騎士団を次々と制圧し、騎士たちは混乱と恐怖に陥った。
事件の影響と国への余波
異世界召喚により引き起こされた事件は、フォンティーヌ伯爵を含む多くの騎士が死亡するという惨状をもたらし、王国の名声を傷つけることとなった。ベルゼビア王国は、異世界人である浩一郎の討伐を命じたが失敗に終わり、その後も国力の衰退を辿る結果となった。
第二章 北へ
ローゼリア王国の平穏と疑念
王都ピレウスでエレナは、御子柴亮真が旅立って十日以上経過していることを思いながら、彼が無事であることを願った。彼女の副官クリス・モーガンもまた亮真の武技と指導力に感心しており、彼が功績を不当に軽視されている現状に対して複雑な感情を抱いていた。
御子柴亮真の評価と功績
御子柴亮真は内乱で大きな功績を上げ、ルピス女王の勝利に貢献したが、与えられた地位は流刑地とされる辺境の地であった。ルピス女王の裁定には多くの不公平感が漂い、エレナと一部の騎士たちは亮真が正当に評価されていないことに不満を抱いていた。
ルピス女王の決断とその背景
ルピス女王はミハイル・バナーシュを新将軍に推す意向を持っていたが、彼の無謀な行動と失態に対して、エレナをはじめ多くの者が懸念を示していた。エレナは、ミハイルが信頼に足る臣下であることを理解しつつも、将軍としては未熟であると判断し、ローゼリアの未来に不安を抱いていた。
ローゼリア王国の内憂外患
エレナは、ルピス女王の未熟さや国内外の不安定な情勢がローゼリア王国を危機に追いやる可能性を危惧していた。特にルピス女王が身内に甘く、ミハイルを早期復職させたことや、亮真を辺境に追いやったことが不安材料であった。エレナは王国内部の身分差や貴族派の暗躍によって国内が再び混乱に陥る恐れを感じた。
亮真との約束と王国の未来
亮真はルピス女王に対し「ローゼリア王国には五年の猶予しか残されていない」と警告し、エレナもこの予測が現実になることを理解していた。亮真の忠告が示す五年という期間は、王国の存続に必要な時間であり、エレナはこの限られた時間の中で国を立て直す覚悟を決めていた。
亮真との別れと再会への願い
エレナは、亮真が王都を発つ前に自分に向けて残した「五年以内に全てを整えなければ王国は滅びる」という言葉を思い返し、彼の行く末と再会を祈った。
ウォルテニア半島への道程
ローゼリア国内の内乱が終結し、再び平穏が訪れたが、御子柴亮真は新たに与えられた男爵位とともにウォルテニア半島へと向かうことになった。彼の周囲には、リオネやマルフィスト姉妹をはじめ、忠実な傭兵団「紅獅子」のメンバーが集まり、半島の地に根を下ろす準備を進めていた。
亮真の苦悩と決意
馬に慣れていない亮真は、長旅の疲れと痛みを抱えながらも、男爵としての責務を果たすために馬車への誘惑を断っていた。彼は、二度と裏切られないためにも、自らの国を築く覚悟を固め、ルピス女王への復讐を胸に秘めていた。
ウォルテニア半島の情報収集
イピロス城砦都市に到着後、亮真は仲間たちにそれぞれの役割を指示し、半島の詳細な情報を集めることを決意した。ボルツには怪物の生息情報を収集させ、マルフィスト姉妹には信頼できる商会の調査を命じ、リオネには新たな兵士の選抜を任せた。領地開拓における物資の確保が最優先事項であることを理解していた。
ザルツベルグ伯爵との会見
亮真は、イピロスの領主であるザルツベルグ伯爵に面会することを決意した。エレナからの忠告を心に留めつつ、彼は伯爵がどのような人物か、自身の目で確かめようとした。リオネや他の仲間たちも伯爵との関係を慎重に築く必要性に同意し、亮真の判断を支持した。
伊賀崎厳翁への疑念
亮真は、自身を支える変わり者の厳翁にも含みのある視線を向け、信頼に足るかどうかを確かめる必要があると考えた。
密約の開始
亮真が一度解散した会議の後、部屋へ戻った厳翁との対話が始まった。亮真は厳翁の過去や動機について疑念を抱きながらも、厳翁を信頼し切れない理由を本人に問いただした。厳翁もまた、亮真に対しすべてを明かすことをためらっていたが、正直な心情を示し、深い信頼を得るためには沈黙を選んだ。
亮真からの依頼とその目的
亮真は厳翁に、港町フルザードのギルドマスター、ウォルス・ハイネケルの始末を依頼した。亮真は過去の因縁や復讐心だけではなく、ウォルスが再び牙を剥き、自分たちに危害を加える可能性があることを警戒していた。この決断は、将来的な脅威を未然に防ぐための措置であった。
報酬と条件の交渉
依頼を受けた厳翁は、報酬について特に要求をせず、逆に一つの条件を提案した。亮真はこの条件が自分に何をもたらすかを慎重に考慮し、交渉を進めた。この密約がどのような影響を与えるかは、今後の二人の関係に大きな変化をもたらす可能性があった。
第三章 北の盟主
ザルツベルグ邸への到着と歓迎
亮真が馬車でイピロス南部のザルツベルグ伯爵邸に到着すると、伯爵とその妻ユリア夫人が、丁寧かつ異例の熱意を持って彼を歓迎した。亮真は、立場の異なる伯爵の過剰な親切に警戒しながらも、貴族としての礼儀を尽くして対応した。
晩餐会の豪華なもてなし
伯爵夫妻は、亮真に贅を尽くした料理を振る舞い、その内容には王都の祝賀会にも劣らない豪華さがあった。大量の香辛料や塩が使われた料理、最高級のワインが亮真に提供され、彼はその異様なまでの豪華さに驚愕した。この晩餐会が単なる歓迎にとどまらず、伯爵の内心や経済事情を探る必要性を彼に感じさせた。
伯爵夫妻の意図と亮真の揺さぶり
亮真は、ザルツベルグ伯爵の地位や財源について、表面上は親しみやかに、内心では慎重に揺さぶりをかけた。特に塩の出どころについて質問を投げかけた際、ユリア夫人が伯爵の説明をさえぎり、話をまとめたことで亮真はさらに疑念を深めた。伯爵夫妻の豪華な生活が単なる貴族の誇示ではなく、何らかの秘密の裏付けがある可能性を亮真は慎重に探ることを決意した。
ザルツベルグ伯爵との晩餐会と宿泊
晩餐会は三時間にわたり、亮真はザルツベルグ伯爵夫妻との親交を深めた。彼らは秘蔵のワインを開け、亮真を歓待しつつ夜も更けたころ、亮真は一晩泊まるよう強く勧められた。用意された部屋は豪華で、職人の手による家具や芸術品が並び、一流ホテルのスイートルームさながらの環境だった。亮真はその豪華さに驚きつつも、伯爵の経済力の裏に何か意図があるのではと感じた。
メイドの訪問
亮真が思索にふけっていると、扉を叩く音が響き、白のベビードールを着たメイドが部屋に現れた。メイドは奥様の指示で亮真に会いに来たと告げ、彼女の緊張した態度と服装から意図を察した亮真は、彼女を優しく受け入れた。
伯爵夫妻の密談
一方で、ザルツベルグ伯爵夫妻は亮真の部屋から離れた場所で密談をしていた。伯爵は亮真を歓迎したことに不満を抱き、夫人に対して愚痴を漏らした。夫人は冷静に亮真を観察しており、彼が単なる成り上がりではなく、抜け目のない人物だと見抜いていた。亮真の動向が気になる彼らは、表面的な歓迎の裏で監視の目を光らせることを決めた。
亮真と御者マイクの会話
伯爵邸を出た亮真は、御者のマイクと昨夜の出来事について会話を交わした。マイクもまた、伯爵邸で異様なほどの好待遇を受け、裏に何かあると感じていた。亮真は、ザルツベルグ伯爵の真意を探るべく、慎重に行動を続けることを決意し、今後の情報収集に期待を寄せた。また、マイクは亮真とマルフィスト姉妹との関係に触れ、彼女たちの気持ちを亮真に伝え、亮真もその思いに応えるべき覚悟を求められた。
第四章 クリストフ商会
情報報告会の開始とザルツベルグ伯爵家の背景
亮真は、ザルツベルグ伯爵家を訪問してから二日後、仲間達と情報報告会を開き、各自の調査結果を共有した。まず、マルフィスト姉妹が報告した内容によれば、イピロスの主要な商会の多くがザルツベルグ伯爵家と密接な関係を持ち、特に伯爵夫人であるユリアが商会連合の代表であるミストール商会の一人娘であることが判明した。これにより、亮真達がウォルテニア半島の開発のために必要な食料物資を確保するためには、この連合との取引が避けられないことが明らかになった。
ザルツベルグ伯爵家の財政と軍事費の負担
続いて、亮真はザルツベルグ伯爵家の財政状態についての疑問を抱いた。ローラの調査から、ザルツベルグ伯爵家が国境警備や怪物対策のために多額の軍事費を負担し、その結果、財政が逼迫していたことが判明した。財政悪化の解決策として、伯爵家は融資を受けるために商人の娘を正妻に迎えるという決断をしたという。また、伯爵家の財源として、岩塩の鉱脈がイピロス領外のウォルテニア半島内に存在することも判明した。
ウォルテニア半島内の鉱脈問題
厳翁の報告により、ザルツベルグ伯爵が王国に無断でウォルテニア半島内の岩塩鉱脈を私的に利用している事実が浮かび上がった。これが王家に知られると伯爵家の断絶に繋がる危険性があるため、伯爵は亮真を早急に半島へ送り出し、問題の鉱脈を隠蔽しようとしていることが明白となった。この状況を踏まえ、亮真は鉱脈を利用する提案を保留し、まず自分達の基盤を強化するための時間稼ぎを決意した。
クリストフ商会へのアプローチ
亮真は、ミストール商会の影響力を避け、信頼できる商会として、かつて連合の代表であったクリストフ商会と接触を試みた。クリストフ商会は現在、ミストール商会からの嫌がらせにより経営が困難な状況にあり、会長の娘シモーヌが卓越した経営手腕で何とか支えていた。亮真はシモーヌとの交渉に望みをかけ、彼女が抱える経営難をてこにして協力関係を築こうと考え、クリストフ商会を訪問した。
亮真とシモーヌ・クリストフの出会い
亮真一行は、エントランスホールでクリストフ商会の使用人に出迎えられ、商会長代行のシモーヌとの面会を待つよう案内された。使用人は規則に従い亮真達に武器を預けるよう要求したが、亮真は安全を重視し、部下に従うよう指示した。商会の厳格な対応は、亮真にとって商会が伯爵との関係に慎重であることを示唆するものとなった。
シモーヌ・クリストフとの初対面と評価
客室に案内された亮真達の前に、シモーヌが現れた。彼女の控えめで清純な佇まいと完璧な礼儀作法は、貴族の夫人であるユリアとは対照的であり、亮真は彼女の穏やかな表情の裏に隠された覚悟と鋭い洞察力を感じ取った。この初対面で、シモーヌは亮真が持つ情報と智謀を評価し、亮真も彼女の冷静さと優れた交渉術に感銘を受けた。
シモーヌの推測と亮真の正体
シモーヌは、亮真が異世界から来た人間であると推測していた。彼女はその知識を亮真に明かし、自らの情報網の優秀さをアピールした。シモーヌの見事な推理は亮真の警戒心を煽る一方で、敵意がないことを示すために亮真へすべてを明かす姿勢に信頼感を与えた。亮真は彼女の言葉を受け、腹を割って話し合うことを決意した。
ウォルテニア半島への商談提案
商談に移ると、シモーヌはイピロスからウォルテニア半島への物資供給と、将来的な貿易計画に興味を示した。亮真は半島に港を建設し、他大陸との交易を視野に入れた壮大な計画を語った。この計画にシモーヌは驚きつつも、大規模な利益を見越してクリストフ商会を亮真の計画に賭ける決意を固めた。
補給港建設の意義とシモーヌの意図
シモーヌは、ウォルテニア半島に補給港を設けることで、交易の効率が格段に向上し、キルタンティアや他大陸との貿易が円滑に進むことを示唆した。亮真が計画を理解したことで、彼女の真意も明らかとなり、商談は大きな一歩を踏み出した。
クリストフ商会の危機と亮真の支援
クリストフ商会は、現在、取引先を失い経営危機に瀕していたが、シモーヌは亮真の計画が商会再建の鍵となると確信した。亮真も、彼女の協力がウォルテニア半島の発展に不可欠であると認め、商会との協力関係を築くことを決意した。
契約と共闘の誓い
最終的に、亮真とシモーヌはウォルテニア半島の発展と、交易における共同目標を共有し、協力の誓いを交わした。シモーヌは戦士のような強い意志を見せ、亮真もその覚悟を理解し、二人の関係は新たな段階へと進展した。
第五章 虐げられし者
亮真とシモーヌ・クリストフの同盟
亮真はシモーヌと協力する道を選び、彼女の情報網と自軍の長所を生かした共闘の構想を固めた。シモーヌの商会が持つ広範なネットワークに注目し、交易のための商隊を派遣しつつ、厳翁らの諜報活動と補完し合うことで強力な情報組織を構築する方針を立てた。この同盟により、クリストフ商会との取引を急がず、ザルツベルグ伯爵の警戒を避ける選択を取った。
取引の開始とザルツベルグ伯爵への対策
亮真は表向きにはミストール商会や伯爵側の商会と取引を行い、クリストフ商会との連携を隠した。これにより伯爵からの援助を引き出しつつ、伯爵の弱点を利用して必要な便宜を図る計画を固めた。亮真は、クリストフ商会を敵視する伯爵の油断を誘い、その支援を得るという狡猾な策を実行に移すこととした。
ウォルテニア半島の住民確保計画
ウォルテニア半島への移住を希望する住民が不足する問題に対し、ローラが奴隷の購入という方法を提案した。奴隷の身分を解放することで忠誠心を得られるとの意見により、亮真はこの方法を採用することを決めた。厳翁やボルツと共に、奴隷商人から若年層の奴隷を大量に購入する計画を実行した。
奴隷購入と意識改革
イピロスの闇市にて、亮真は奴隷商から必要な人数を確保した。買い取った奴隷たちに衣服を与え、自らの存在意義を見出させようと試みた。奴隷の子供たちは、ローラの優しい言葉により少しずつ人間らしい表情を取り戻し、亮真もまた彼らの人間性を尊重しようとする意識を固めた。
最後の準備と訓練
購入した奴隷たちの訓練をイピロス郊外で実施する準備が整い、亮真は厳翁らと共に子供たちを迎え入れる態勢を固めた。亮真は奴隷制度に対する怒りと葛藤を胸に抱えながらも、彼らを人として扱い、半島の開発に向けた歩みを進めていった。
メリッサの悲劇的な過去
メリッサは三年前、ザルーダ王国の小さな漁村で家族と平穏な生活を送っていたが、ウォルテニア半島の海賊に襲撃され両親を失い、村は破壊された。彼女は必死に逃げ延びたものの、気づけば奴隷として扱われる立場に追いやられた。彼女は、鞭打たれる度に感情を殺し、無力な存在として生き延びる方法を学んでいった。
亮真との出会いと新しい運命
亮真によって奴隷として購入されたメリッサは、服や食事を与えられ、初めての人間らしい待遇に戸惑いを覚えた。金髪の女性から「服を着ても良い」という言葉を聞き、長年の絶望から一筋の希望が心に灯った。周囲の奴隷たちも同様に困惑しながらも、やがて服を身につけることで、微かな人間らしさを取り戻した。
温かい食事と忘れかけていた感情
初めての温かいスープに触れたメリッサは、かつての家族の記憶を思い出した。粗末な食事しか経験していなかった彼女にとって、この食事はとてつもなく贅沢なものに思えた。奴隷たちはサーラの優しい言葉に勇気づけられ、初めての食事を楽しんだ。彼らの中で、忘れていた人間らしい感情が徐々に甦りつつあった。
新たな生活への挑戦
亮真は奴隷たちに人間としての尊厳を取り戻させ、強く生きるための訓練を施す計画を立てた。まずは衣食を与え、次に過酷な訓練で戦闘能力を鍛え上げることで、自立した強者としての成長を期待した。彼は、これから始まる試練を通して、生き延びる意思を持つ者だけが自由を手に入れられると考えていた。
未来への期待と不安
メリッサたち奴隷は、新しい服と食事を手にしながらも、これからの過酷な運命を前に不安と期待を抱いていた。亮真は彼らに自由と強さを与えようとするが、それは彼ら次第であり、最終的には生き延びる意思が問われることになる。今はまだ未知の道のりであったが、彼女たちは亮真との出会いにより、希望を取り戻し始めていた。
エピローグ
逃亡中の疲弊と決断
飛鳥と楠田は、立花の傷を負いながらも、暗い森の中を逃げ続けた。彼らは、無事に城を抜け出したものの、道なき道を進むうちに立花の体力は限界に達し、ついに倒れ込んでしまった。飛鳥は立花の手当てと共に、疲れきった自分たちの体力を回復させるため、休息と物資の確保が必要と提案した。
桜花の警告と飛鳥の覚醒
飛鳥が立花を見守っていると、突然、日本刀「桜花」が警告のように鳴り始めた。音に反応し桜花を手にした瞬間、飛鳥の体が熱く燃え上がるような感覚に包まれ、無意識のうちに猛獣を斬り伏せた。飛鳥は自分の体が操られているように感じ、そこで初めてこの地が現実の異世界であることを悟った。
三つ目虎の討伐と新たな出会い
飛鳥が倒した獣は、普通の虎とは異なり、異様に巨大で額に三つ目を持つ怪物だった。飛鳥はその異様さに驚愕していたが、程なくして鎧をまとった騎士団が現れ、彼女に気づいた彼らが彼女のもとに駆け寄った。騎士団の隊長が飛鳥に水を与えたが、彼女は疲労困憊のため再び意識を失った。
騎士団の葛藤と決意
飛鳥と立花の状況を確認した騎士団の隊長と副官のメネアは、二人を見捨てることなく救助を決意した。彼らは教団の命令で聖都に戻る途中だったが、救援を見過ごすことはできなかったため、飛鳥たちを背負い、聖都まで連れて行くことを決断した。
神への問い掛けと信念の確認
隊長は、目の前の困難な状況に対して自らの信仰に問いかけたが、空に輝く太陽は何も答えなかった。しかし、彼は太陽の光に包まれながら、自分の信念に従い、飛鳥たちを守り導く決意を新たにした。
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