どんな本?
学校の屋上で弁当を食べようとしていたらいきなり異世界に召喚された高校生の御子柴亮真。
ただ彼はマトモじゃ無かった。
召喚した魔術師を殺し。
逃亡途中で双子姉妹を仲間にして大国の帝国から逃亡。
帝国から逃げれたと思ったら、ローゼリア王国の跡目争いに巻き込まれてしまう。
それにも勝利させて女王ルピスを誕生させ。
そのまま解放されると思ったら。
住民は皆無で、沿岸部に海賊がおり、強力な魔物が跋扈するウォルテニア半島を領地に与えられ貴族にされてしまう。
読んだ本のタイトル
#ウォルテニア戦記 VIII
著者:保利亮太 氏
イラスト:bob 氏
あらすじ・内容
終わりが見通せないままの、オルトメア帝国軍と三王国連合軍の戦い。
この戦いの真の勝者となるべく動き始めた御子柴亮真は、自分のあるじであるローゼリア以外の同盟国ともつながりを持ち始める。
時を同じくして、北方の大国エルネスグーラが旗色を明らかにしないまま軍勢を動かし始めたため、亮真はこれを好機と見てエルネスグーラに接触を試みるが……。
ウォルテニア戦記 VIII
感想
オルトメア帝国軍の侵攻を止めるために協力し合う三王国連合軍。
育てた精兵を消費する援軍など普通ならごめん被りたいが、亮真は援軍に赴いた。
その狙いはウォルテニア半島の立地を活かした交易ルートの確保。
女王の頭を越えて他国の国王、貴族とコネクションを持ち交易の約束をするためだったが、、
山間部でゲリラ戦術を駆使して遅滞戦を徹底しているが、戦況はジリ貧な事には変わりない。
戦略状況的にはほぼツミ・・・・
その起死回生の一手に亮真が動き出す。
一部の街を占領下に置いている北方の大国・エルネスグーラの女王グリンディエナとの直接交渉がどう化けるのか、、
そして、前線にはオルトメア帝国軍のシャルディナは、暴風と異名を持つエクレシアと白き軍神と呼ばれるエレナに、釣り野伏せで手玉に取られ釣られた八千の兵を失う。
その釣られた兵たちの危機に援軍を出さなかった事により他の将兵達から。
今後、危機に陥ってもシャルディナに見捨てられるかもしれないと不信を植え付けられてしまう。
同シリーズ
ウォルテニア戦記シリーズ
その他フィクション
備忘録
プロローグ
夕暮れと飛鳥の孤独
夕日が差し込む部屋で、桐生飛鳥は訓練を終え、狭く質素な部屋で休息を取っていた。この部屋は、日本での自室とは対照的に無機質で冷たく、飛鳥にとって唯一の安息所であった。
異世界と現実のギャップ
飛鳥は、地球と似ているものの、文化や価値観が全く異なるこの異世界に馴染めず、日本での平穏な生活を恋しく感じた。彼女の心には、祖父である御子柴浩一郎との再会への思いが募り、浩一郎の激しい戦闘の記憶がよみがえった。
異世界の冷酷な現実
飛鳥は、異世界での生活を通じて、法が人々を支配するための道具に過ぎない現実を痛感した。奴隷売買や過酷な借金制度、低い識字率などの状況に驚き、日本とはかけ離れた厳しい現実に打ちひしがれていた。
飛鳥の成長への覚悟
飛鳥は、異世界の理不尽さに憤りを感じつつも、それを変えるには強さが必要だと諭された。保護者であるメネア・ノールバーグの優しさと厳しい言葉を胸に刻み、飛鳥は強くなるための道を進む覚悟を固めていた。
強くなるための試練
飛鳥は、祖父からの武術の指導と高校での弓道経験があったが、異世界で求められる実戦的な知識と技術の習得には苦しんでいた。それでも、飛鳥は強くなり、再び祖父と会い、自分の疑念を確かめるために努力を続ける決意を新たにした。
祖父の愛刀「桜花」への視線
飛鳥は、浩一郎から託された愛刀「桜花」を見つめた。この刀が持つ切れ味と神秘的な力が、異世界での生活と祖父の行動にまつわる謎を解く鍵だと確信していた。
第一章 闇にうごめく者
ザルーダ王国での亮真の奮闘
ザルーダ王国の王都ペリフェリアの王城にて、御子柴亮真は十代半ばの若い兵士たちに感謝の言葉を掛けていた。彼は兵士を労う新しい姿勢を学び、威厳を意識することの重要性を実感しながらも、自身の自然体と形式の間での葛藤を抱いていた。
ケビン達の忠誠と使命
亮真の指示に従い、ケビンを含む5人の若者は任務を無事に成し遂げた。彼らは、亮真が与えた特製の痺れ薬を奥の手として持っていたが、使わずに任務を完遂した。亮真は、兵士達が強固な結束と忠誠心を抱いていることを喜び、さらに命を大切にして生還するよう言い聞かせた。
ユリアヌス一世の判断
王であるユリアヌス一世は、亮真の意図を察知し、試合が終わる前に試合の中止を決断した。この判断により、ザルーダ騎士たちの面子を守ると同時に亮真の力量を認める場を提供した。亮真はこの判断に驚きつつも、ユリアヌス一世が自国と騎士の面子を守るための知恵と自制心を持つと見て、信頼を寄せた。
咲夜への指示と亮真の期待
亮真は、ザルーダ王国における貴族の動きを調査するよう、次期上忍として期待される咲夜に指示を出した。彼は咲夜の経験不足を心配しつつも、祖父である厳翁が認める実力に期待を寄せ、励ましを与えた。
亮真の策略と明日への決意
リオネやサーラとの会話の中で、亮真は翌日の軍議でザルーダ王国の援軍として役立つ提案をする計画に意欲を燃やしていた。彼は、力を示したことで自らの策が採用される可能性が出てきたことに安堵し、今後の展開に向けて決意を新たにした。
陰謀の円卓
ザルーダ王国の城下町の屋敷にて、高位貴族たちは円卓を囲んで、王国とローゼリアの関係を揺るがそうと計画したが、思わぬ結果に苛立ちを見せていた。彼らは、ザルーダ王国を守ろうとするシュバルツハイム伯爵を愚かと嘲笑し、御子柴亮真を危険視していたが、その戦力が脅威であるかどうかには意見が割れていた。
シャルディナとの密約と帝国への対抗策
貴族たちは、オルトメア帝国との密約を守るため、ジョシュア・ベルハレスや亮真の活動を警戒していた。彼らはシャルディナ公との密約を優先し、国の利益よりも自らの栄華を追求し続けていたが、計画が思い通りに進まない現状に不満を抱きつつも、直接的な行動を控えることに決めた。
軍議の混乱と亮真の冷静な分析
翌日、東部三国合同の軍議において、将軍や貴族たちはオルトメア帝国への対応について激論を繰り広げた。戦況を持久戦で乗り切るか、早期決戦で打開するかで意見が分かれたが、亮真たちにはこの議論はただの茶番に見えた。彼は現実的な状況判断から、ザルーダ王国が分断されれば敗北が確定することを見抜いていた。
リオネの過去とエクレシア・マリネールの存在
軍議において、亮真はミスト王国の将軍エクレシア・マリネールに注目していた。リオネは過去にエクレシアと戦い、彼女の策略と軍才に苦汁を味わった経験があり、亮真もその実力を評価していた。亮真はエクレシアの協力が鍵であると考え、彼女との関係を構築する必要性を感じていた。
戦局を変えるための亮真の策
亮真は、ザルーダ王国の劣勢を覆すために自らの策を温めていたが、その実行にはミスト王国の意図を見極めることが重要と考えていた。ユリアヌス一世やエクレシアに対し、彼は期待を寄せつつも慎重な姿勢を崩さなかった。
対立するザルーダ王国の意志
深夜、王城の密室でザルーダ王国の軍議が開かれた。将軍グラハルトは亮真の提案に激しく反対し、エルネスグーラ王国との同盟案を「絵空事」と非難した。亮真は冷静に応じたが、対立は収まらず、ユリアヌス一世が進行を和らげる役割を担った。グラハルトは反発を続けたが、最終的にエクレシア将軍が提案の価値を認めることで議論が収束した。
亮真の戦略的提案と協力の必要性
亮真はザルーダ、ローゼリア、ミスト王国の三国を連合する提案を進めた。エルネスグーラとの関係を含む策であったが、ザルーダの一部貴族たちはこれに反対の姿勢を見せた。エクレシアがこの提案を支持し、亮真の計画に基づいて次の戦略が進められることとなった。
将軍たちの決意とエルネスグーラの動き
エクレシアは亮真の提案に賛同し、ミスト王国に伝令を送ったが、必要であれば独断で行動を取る覚悟を表明した。エレナとエクレシアは、三国の協調が重要であることを認識し、この機会を逃すことが戦況を大きく左右することを理解していた。
オルトメア帝国の戦略調整
シャルディナはオルトメア帝国の将として、ザルーダ王国を南北に分断するための戦略を再検討していた。帝国内の諜報活動により、ザルーダ貴族の動向を把握しつつ、戦力を調整して勝機を狙っていた。また、エルネスグーラ王国の動きがオルトメア帝国の計画に影響を与える可能性に備え、防衛と侵攻のバランスを慎重に見定めていた。
皇帝からの命令とシャルディナの決意
オルトメア皇帝からの指示を受け取ったシャルディナは、戦争の早期決着を求める皇帝の意向を汲みつつ、次の一手を打つ準備を進めた。彼女は近衛騎士団の指揮官ロルフを前線に呼び戻し、絶対的な防御体制を整えることで、戦争に勝利し、帝国の理想を実現する決意を固めた。
覇権を目指すオルトメア帝国の思惑
シャルディナは、父である皇帝と共に西方大陸の覇権を目指し、戦争による恒久的な平和の確立を志していた。平和のために戦うという矛盾に満ちた理想を抱きつつ、各国の複雑な思惑が交錯する中で、ザルーダ王国との決戦が刻一刻と近づいていた。
第二章 焦る心
ジョシュアと輸送部隊の監視
ジョシュア・ベルハレスはザルーダ王国の山岳地帯から、オルトメア帝国の輸送部隊を観察していた。彼は葉巻を吸いながら、オルトメア帝国の兵力が大量に投入された様子を眺め、敵国の戦略を分析した。彼にとって、オルトメアとの戦いは時間との勝負であり、ザルーダの存続を賭けた戦いでもあった。ジョシュアは御子柴亮真の策に賭けることを決意し、その青年が持つ人心掌握力を認めていた。
リオネの準備と特殊兵団
紅獅子の異名を持つリオネがジョシュアに呼ばれ、共に戦う準備を整えた。リオネは元々犯罪者だった特殊兵団を統率し、ジョシュアの命に従う戦士に育て上げていた。兵士達は非常に気難しく扱いにくい存在であったが、リオネはその統率力で難なく制御してみせた。
奇襲作戦の実行
ジョシュアの合図で、リオネ率いる兵士たちは岩壁を崖から押し出し、オルトメア帝国の輸送部隊へと仕掛けた。石壁が崖下に転がり落ちると、敵部隊は混乱し、退路も遮断されて身動きが取れなくなった。さらに、リオネは火の付いた陶製の瓶を投げ込み、燃料油で火の海を作り出し、敵部隊に大きな被害を与えた。
ディルフィーナの参戦
最後の仕上げとして、ディルフィーナというエルフの戦士が登場し、敵指揮官を討つ役割を担った。彼女はウォルテニア半島の亜人が持つ付与法術の力を駆使する戦士であり、その力に期待を寄せられていた。リオネとジョシュアは、ディルフィーナの力が御子柴亮真の策にとってどれほどの価値を持つかを見極めることにした。
ディルフィーナの覚醒と奇襲開始
ディルフィーナは自らの内に眠る力を解放し、敵軍へと降り立った。彼女の周囲に光る象形文字が浮かび上がり、その瞬間、重力から解き放たれたように軽やかに着地した。オルトメア帝国の兵士たちは彼女の異様な姿に驚愕し、対抗を試みたが、彼らの抵抗は無力だった。ディルフィーナは短槍を振るい、圧倒的な力で彼らを圧倒し、戦場は血に染まった。
オルトメア帝国軍の遅延と御子柴亮真への時間の確保
ディルフィーナの戦闘によってオルトメア帝国の進軍速度は著しく低下した。この奇襲は、御子柴亮真にとって貴重な時間を確保する結果となった。ザルーダ王国北方の国境付近では、亮真が次の目的地へ向かっていた。
亮真の高速移動と焦り
亮真の一行は法術で強化された馬を用い、昼夜を問わず北へと急いでいた。彼は通常の倍以上の速度で移動していたが、それでも焦燥感を隠せなかった。彼の中には、自動車や飛行機といった移動手段への未練があったが、この大地世界では現実的ではなく、限界を感じざるを得なかった。
メンフィスへの到達と戦略的懸念
ついに亮真の視界に北の城塞都市メンフィスが現れた。この要衝がエルネスグーラ王国に占領されてから一年が経過し、亮真はその奪還に向けた策を思案していた。オルトメア帝国の大規模な攻勢に対抗するため、彼はリオネとジョシュアに山岳戦を指揮させるつもりだったが、その策には多大な危険が伴っていた。
エルネスグーラの女王への期待
亮真の最終的な望みは、エルネスグーラ王国の女王が彼の予想通りに切れ者であることに賭けることであった。彼は自らの策がザルーダ王国を救う唯一の手段であると確信していたが、その成功の保証はなかった。
第三章 北の雌狐
亮真とグリードの到着と歓迎
亮真とグリードがエルネスグーラ王国に到着すると、彼らは城内に通され、グリッソン将軍が迎え入れた。グリッソンは亮真の若さに驚きつつも、礼儀を尽くす彼の態度に好意を抱いた。しかし、亮真はエルネスグーラ側が監視を行っていたことを感じ取り、緊張を高めた。
交渉の始まりと侮蔑
亮真が単刀直入にエルネスグーラの助力を求めると、グリッソンは冷笑し、ザルーダを「物乞い」に例えて侮蔑した。この言葉にグリードが激昂するも、亮真は冷静に応対し、挑発に乗らず交渉を続ける姿勢を見せた。
エルネスグーラ王国の思惑と亮真の理解
グリッソンはザルーダに対する援軍の提供を拒否し、オルトメア帝国がザルーダを支配した後に攻勢をかける方針を示唆した。亮真はそれを察知し、エルネスグーラ側の戦略を理解した上で、自らの考えを述べる。エルネスグーラとしては直接的な対決よりも、タイミングを見計らい自国に有利な状況を作ることが目的であった。
亮真の切り札と対峙
亮真はエルネスグーラ女王グリンディエナとの直接会談を要求する。グリッソンは動揺するが、亮真は冷静に退席しようとする。ここで、グリンディエナが姿を現し、亮真の意図を理解した上で会談を受け入れる。
グリンディエナとの対話と亮真の分析
グリンディエナは亮真の洞察力に感嘆し、彼の到来を歓迎した。亮真はエルネスグーラ軍がメンフィスで足を止めた理由や、王都を離れたグリンディエナの意図を分析し、同盟を望む理由を論理的に説明した。彼の言葉に満足したグリンディエナは、本題へ進むよう亮真に促す。
条件提示と交渉の展開
亮真はザルーダ王国の存続を賭けて、エルネスグーラ王国への条件を持参していた。彼は用意していた書状をグリンディエナに差し出し、国の命運をかけた交渉に臨む準備が整った。
グリッソンとグリンディエナの会話
グリッソンは、亮真との交渉がグリンディエナの予想通りに進んだことを確認し、彼の策の巧妙さに驚きを隠せなかった。グリンディエナはその姿勢に微笑みながら、ザルーダ領内での戦闘を避ける方針を示した。二人は合理的な判断から、山岳地帯での戦闘が自軍に不利であることを理解していた。
亮真の策とエルネスグーラ王国の利益
亮真が提案した四ヶ国連合と通商条約により、各国が利益を享受できる形が整ったが、その背後に隠れた亮真の意図をグリンディエナは見抜いていた。ウォルテニア半島が交易の要所として発展する未来を察し、エルネスグーラもその恩恵を享受できる計画に対して満足感を示した。
連合の形成と四ヶ国の思惑
亮真の計画により、ザルーダ王国がエルネスグーラに援軍を求め、連合が成立。エルネスグーラ王国が他国と連携しつつも、各国の商業活動を通じて豊かさを増すという点で、グリンディエナは連合の利点を認識していた。
亮真の葛藤とリオネ達への期待
交渉が首尾よく終わったものの、亮真は自らの選択に対して不安を抱いた。エルネスグーラの女王との対話における彼の大胆さが、相手の警戒心を招いた可能性があると考えた。亮真は連合軍がオルトメア帝国の侵攻を防ぐ作戦に集中しつつ、リオネとジョシュアがウシャス盆地で戦況を支えていることに期待を寄せた。
第四章 ウシャス盆地攻防戦
御子柴亮真とエルネスグーラ王国の会談後の戦況
エルネスグーラ王国の女王グリンディエナと会談した亮真がザルーダ王国内での戦略を見直してから一月余りが経過。ウシャス盆地はザルーダ王国の食糧供給の中枢であり、農業に不適な土地が多い中、食料の自給を確保する重要地であった。さらに国防の観点からも、ペリフェリアへの進軍にはこの地域の防衛が不可欠とされ、オルトメア帝国軍は攻略に苦戦していた。
エクレシアの指揮と兵士達の士気
ウシャス砦で防衛に従事するミスト王国の将軍エクレシアは、兵士たちを鼓舞し続け、オルトメア帝国の猛攻に対して堅守を貫いた。火矢や油による攻撃で砦の防衛が強化され、敵兵に大きな被害を与えていた。エレナと共に兵の士気を維持し、次々と襲いかかる敵の圧力に立ち向かい続けた。
焦土戦術と補給問題
ザルーダ王国側が焦土戦術を採用し、現地の物資を焼き払うことでオルトメア軍の補給を絶つ作戦が展開。これによりオルトメア側は物資調達が困難になり、補給線が脆弱化。補給が不足する中でシャルディナは、兵を引くという選択肢を模索しつつも、帝国内での自身の立場から容易に撤退を選べずにいた。
シャルディナの苦悩と須藤の提案
シャルディナは戦況の悪化と物資不足に悩まされながらも、帝国の期待に応えるべく前線で戦い続けた。須藤は撤退を提案したが、シャルディナはそれを拒否。続けざまに波状攻撃の準備を指示し、ノルティア砦から援軍を呼び寄せることで総力戦に臨む意志を示した。
オルトメア帝国内の政治的圧力
シャルディナは戦費を多額に費やしている状況下で、撤退をすれば政治的立場が危うくなるという危機感を抱えていた。斉藤や須藤もそれを理解し、総攻撃を進言するしかない状態であった。
エレナの朝の観察とオルトメア帝国軍の動向
朝日が昇り始めた頃、エレナはウシャス砦の城壁からオルトメア帝国軍の動きを観察した。普段以上に活発な様子から、彼らが捨て身で砦を攻める意図を感じ取った。エクレシアと共に、オルトメア軍が持久戦ではなく夜通しの波状攻撃に出ると予測した。
エクレシアの奇襲準備と士気
エクレシアはエレナとの相談を経て、援軍として率いてきた騎馬隊を使い、オルトメア軍に奇襲をかける準備を整えた。エクレシアは防衛戦を苦手としており、この攻撃で自軍の士気を高め、敵に動揺を与えることを狙っていた。
奇襲の発動とオルトメア陣営の混乱
エクレシア率いる騎馬隊はオルトメア陣営に奇襲をかけ、矢の雨を降らせた。予想外の攻撃にオルトメア兵士たちは混乱し、指揮系統が乱れた。シャルディナはこの奇襲に対して激怒し、斥候の怠慢を叱責した。
オルトメア軍内の不協和音と反撃計画
オルトメア側ではシャルディナが指揮を急ぐが、斉藤とセリアが慎重に対応するよう進言した。シャルディナは一度冷静を取り戻し、奇襲の目的が単なる攻撃でない可能性を考慮し始めた。
暴走した部隊と須藤の助言
一部のオルトメア兵が独断でザルーダ軍を追撃し、エレナたちの罠に嵌まる危険が生じた。須藤は「損切り」を提案し、追撃部隊を見捨てる選択肢を進言。シャルディナは葛藤しつつも、次善の策を選ぶべきと理解したが、その決断の瞬間に新たな伝令が到着し、緊張が再び高まった。
エレナの夜の独白とシャルディナの評価
エレナは自室で酒を飲みながら、戦後の思いに浸っていた。彼女は、シャルディナが救援を出さなかった冷静な判断を評価しつつも、兵士の信頼をどう取り戻すかが今後の課題であると考えた。兵士たちは命を軽視されたと感じており、その不安は他の部隊にも伝染しかねないため、単なる正論では解決できないことを指摘した。
シャルディナの限界と将としての未熟さ
エレナとエクレシアは、シャルディナが未熟な指揮官であると結論づけた。シャルディナは経験が少なく、特に劣勢の中で戦い抜いた実績がないため、相手の策略に対処しきれなかった。とはいえ、彼女の軍略の才は高く評価し、今後の成長の可能性を含め警戒する必要があるとした。
ロルフの存在とオルトメア帝国の防衛力
エレナは、オルトメア帝国側には【皇帝の盾】と称されるロルフ・エステルケントの存在があり、防衛において強力な力を発揮していることを懸念した。彼の優れた防衛戦術は、オルトメア軍の兵士を守り、戦線を安定させていた。
奇襲の成果と戦の展望
エレナとエクレシアは、二重の奇襲によってオルトメア軍に大きな損害を与え、敵兵六千から七千を削った成果に満足した。しかし、これで切り札を使い果たしたため、今後は砦に籠って防衛に徹することを決めた。
エレナの信頼と亮真の動向
エレナはオルトメア軍の動きが活発化している報告を受け、ついに亮真が任務を成し遂げたことを悟った。彼の働きによって、ザルーダ王国とオルトメア帝国の戦いがついに終結を迎えようとしていた。
第五章 光神教団
聖都メネスティアとロドニーの悩み
西方大陸南部に位置する激戦区の都市、聖都メネスティアにて、ロドニー・マッケンナは書類の山と眠気に悩まされていた。ベルゼビア王国からの帰還後、様々な問題が重なり、特に異世界から来た少女飛鳥の存在が彼の心を占めていた。
メネアとロドニーの関係
ロドニーの異母妹で副官であるメネア・ノールバーグは、書類を押し付けられ、居眠りをしていたロドニーに不満を抱いていた。彼女は長い付き合いから、ロドニーの性格と生活力のなさを熟知しており、時折その世間知らずな行動に振り回されることがあった。
飛鳥の刀「桜花」の正体
ロドニーは、飛鳥が持つ刀「桜花」が法剣である可能性に気づき、その存在が裏大地から召喚された少女が持つには異常であると懸念を抱いていた。この発見は、飛鳥の召喚に関わる謎や、彼女の救助を助けた人物、御子柴浩一郎の存在についての疑念を深めた。
組織の存在と光神教団の警戒
光神教団は、その影響力を利用して異世界から召喚された人間を戦場に駆り立てるなどの活動を行っていたが、同時に裏で暗躍する「組織」と呼ばれる謎の集団にも警戒していた。過去に教団が対オルトメア戦で遭遇したこの組織の存在により、光神教団は深い影を抱え、秩序と安定を脅かされていると感じていた。
異世界からの帰還の可能性と飛鳥の危機
御子柴浩一郎が異世界から帰還し再び現れた可能性が浮上し、これが事実であれば飛鳥にも危険が及ぶことは避けられない。光神教団がこの情報を得た場合、飛鳥に対する異端審問や拷問が行われる恐れがあり、彼女を守るための方法が求められた。
立花の従者としての資質
異世界人である立花も保護され、ロドニーの従者として働き始めていた。彼は戦闘と事務能力に優れ、ロドニーは彼を正式に従者として雇用し、光神教団の中での地位を確立させる意向を持っていた。
情報局からの緊急報告
ある日、立花が教団の情報網からの緊急報告を持ち込む。報告には「御子柴亮真」の名が記されており、メネアとロドニーはこの信じがたい情報に驚愕した。メネアは御子柴亮真の存在により、背後に巨大な陰謀が動いていると感じた。
エピローグ
キルタンティア皇国とレンテンシア
キルタンティア皇国南東部、交易の中心地である港湾都市レンテンシアに、顔を隠した男が姿を現した。彼は酒場「山彦亭」に入り、昼から夜まで滞在する意向を示し、迷惑料として金貨を支払うなど謎めいた行動をとった。彼がとった「茶碗陣」の仕草により、彼が何者かの符牒を知る者である可能性が浮上した。
謎の男の行動に対するルカイヤの報告
その夜、歓楽街の酌婦ルカイヤは、謎の男の行動に関して上司である劉に報告するため商館を訪れた。ルカイヤは茶碗陣の暗号に気付き、それが組織の符牒であると判断したが、使われなくなって久しい符牒のため確信が持てず、劉に確認を求めた。
劉の判断と行動
劉は茶碗陣が組織の符牒である可能性を認め、謎の男が過去の符牒を知っていた者か、偶然の酔客か、あるいは密偵であると推察した。劉は男の正体を確かめるため、執事の鄭に手練れの人員を集めさせ、調査を指示した。
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