どんな本?
『皇帝の薬膳妃』は、アジアン・ファンタジーの舞台を背景に、宮廷内の陰謀と愛情が交錯する物語である。
主人公の董胡(とうこ)は、幼い頃に出会った麗人「レイシ」に憧れ、その専属薬膳師になる夢を抱き、男装して医術を学び続けてきた。しかし、運命のいたずらにより、彼女は皇帝の妃としての立場を強いられ、妃と薬膳師という二重生活を送ることになる。
物語の魅力は、董胡が異なる役割を演じながらも、揺るぎない信念を貫いていく姿にある。王宮の華やかな日常の裏では、さまざまな陰謀や権力争いが渦巻き、彼女は薬膳の力を駆使しながら課題を解決し、自身の正体を守り抜かなければならない。
『皇帝の薬膳妃』は、後宮の美しさと危うさが織り交ぜられた世界観と、主人公の成長が見どころである。複雑な人間関係と感情が丁寧に描かれ、登場人物それぞれに奥深い背景が用意されているため、物語を読み進めるほどに引き込まれるだろう。
華やかな宮廷の表と裏で繰り広げられるドラマを楽しみたい人に、ぜひおすすめしたい作品である。
読んだ本のタイトル
皇帝の薬膳妃 朱雀の宮と竜胆の契り
著者:尾道 理子 氏
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あらすじ・内容
朱雀の地にはびこる病の謎を解け! 壮麗なるアジアン・ファンタジー絵巻
幼い頃に会った謎の麗人「レイシ」の専属薬膳師になることを夢見て、
性別を男子と偽って医学を学ぶも、陰謀に巻き込まれ、正体を隠して皇帝の妃となった董胡。
お渡りの日、薄闇で見た皇帝の顔は、憧れの麗人「レイシ」にそっくりだった……。
動揺する董胡だが、王宮で、伍尭国の南都・朱雀から輿入れした朱璃姫と仲良くなり、徐々に居場所を見つけていく。
ある日、皇帝の「先読み」の力で、朱雀の地に謎の病が流行る、との先触れがあった。
董胡は薬膳師として勅命を受け、調査へ赴くことになったが、そこで思いもよらない出会いが――。
朱雀の地にはびこる、謎の病の原因は!?
謎の麗人・レイシの正体は、いったい誰なのか――。
物語が大きく動き出す! 壮麗な一人二役アジアンファンタジー絵巻。
感想
董胡は、幼い頃に出会った麗人「レイシ」の専属薬膳師を夢見て性別を偽りながら医術を学び、さまざまな運命に翻弄されながら皇帝の妃となった。
彼女は、皇帝・黎司の勅命を受け、朱雀の地で蔓延すると予見された謎の病の調査に赴くことになる。
現地では、男装して医師として行動するが、妓楼での調査が必要となり、董胡は妓女見習いとして潜入することを余儀なくされた。
調査の結果、朱雀の街では阿片に似た有害な香が流通しており、その背後には、地位の高い貴人が関与していることが明らかとなる。
董胡は、朱雀の后である朱璃姫との友情を深めながら、仲間たちと協力して病の蔓延を未然に防いだが、黒幕の完全な排除には至らなかった。
彼女の師匠や兄弟子との思わぬ再会もあり、物語は複雑に絡み合っていく。
終盤では、レイシの正体が明らかになるとともに、物語はさらに緊張感を増していく。
董胡は、皇帝の后としての務めに加え、侍女頭や専属医官としての役割も果たし、次々と困難を乗り越えるが、その一方で、多重の身分を演じ続けることの限界も見え始めている。
今後の展開に波乱の予感が漂い、読者を引き込む構成が見事であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
序
1. 伍尭國の概要
• 伍尭國は豊かな国であり、医術を司る玄武、武術を司る青龍、芸術を司る朱雀、商術を司る白虎の四領地を持っていた。中央では、天術の力を持つ麒麟の血筋を持つ皇帝が統治していた。
2. 国の均衡の崩壊と混乱の時代
• 初代皇帝の天術による先読みの力により国は繁栄していたが、世代を重ねるごとにその力は弱まった。次第に皇帝は四領地の貴族たちの操り人形と化していった。
• 中でも玄武公が医術で富と権力を拡大し、国の均衡を崩し、混乱の時代を招いた。
3. 黎司の即位と董胡の登場
• 混乱の時代に第十七代皇帝として即位した黎司は、歴代で最も「うつけ」と噂された。
• 四領地からそれぞれ一の姫が后に選ばれ、玄武の后として平民出身の董胡が男装して「鼓濤」と名乗り皇帝に仕えることになった。
4. 董胡の葛藤と黎司の支援
• 董胡は正体を隠しつつ、弟宮を擁立しようとする玄武公に命を狙われる黎司を陰ながら支えるようになった。
5. 一時の平穏と新たな嵐の予兆
• 危機を乗り越え、董胡は侍女たちと穏やかな日々を過ごしていたが、妓楼街として栄える朱雀の地に再び新たな嵐が迫っていることに気づいていなかった。
一、神嘗会の宴
1. 背景と王宮での神嘗会
• 伍尭國では、天術を用いた収穫祭「神嘗会」が行われ、神官と皇帝が儀式を執り行っていた。祭典は五穀豊穣を祝う厳かなもので、皇宮の神饌が奉納され、宴が開かれた。
2. 董胡の不安と立場
• 男装し「鼓濤」として皇后の代わりを務める董胡は、自分の立場の危うさを再認識していた。玄武公の思惑に従い、皇帝との関係が終わることを望みながらも、心の奥では皇帝への複雑な感情を抱えていた。
3. 侍女たちの不満と支え
• 侍女たちは董胡が皇帝に寵愛されなくなることを心配し、次にどのように接するべきか苦悩していた。董胡は一方で侍女たちとの交流を通じ、穏やかな日常を感じながらも、自身の複雑な立場を受け入れようとしていた。
4. 麒麟寮での回想と試練
• 董胡は麒麟寮での厳しい生活を思い出し、特に雄武との対立や楊庵との友情に悩まされていた。最年少で医師の資格を取得するも、皇帝の内医官として突然姿を消すことになる。
5. 楊庵の苦悩と決断
• 楊庵は董胡を探すため、麒麟寮を訪れて偵徳から情報を得た。董胡が王宮で生きている可能性を信じ、彼は偵徳と共に王宮への道を選ぶ決意を固めた。
6. 王宮への進展
• 楊庵は董胡を助けるため、どんな困難があっても彼を救う決意を胸に秘め、偵徳と共に王宮へ向かう準備を進めた。
二、五度目の大朝会
1. 大朝会と序列の変動
• 大朝会にて、朱雀の后宮が玄武を抜き筆頭の地位を得た。董胡は侍女頭代理として参加し、席次が前から二番目に下がった。朱雀の侍女頭は、帝の寵愛を強調しながら董胡に自慢話を展開した。
2. 朱雀の侍女頭との会話と誘い
• 朱雀の侍女頭は董胡を朱雀の后宮に誘った。后宮間での交流の歴史や序列の重要性を説明され、董胡は興味を持ち朱雀の后宮を訪れることにした。
3. 朱雀の后宮の様子と文化の違い
• 朱雀の后宮は赤と白を基調とした華やかな空間で、玄武の重厚な雰囲気とは対照的であった。舞台では舞妓たちが美しい舞を披露し、その雅やかな雰囲気に董胡は心を奪われた。
4. 朱雀の姫君との出会い
• 舞台で舞っていた人物が、実は朱雀の姫君であることが判明した。董胡はその圧倒的な美貌に圧倒され、失態を見せてしまったが、姫君は気さくな態度で接した。
5. 朱雀の姫君の個性と後宮の自由さ
• 朱雀の姫君は自由な性格で、自ら紅拍子として舞うことを楽しんでいた。朱雀の后宮は他の后宮と比べて自由な雰囲気が漂い、董胡はその違いに驚きながらも新しい環境に興味を引かれた。
三、朱雀の朱璃姫
1. 朱雀の后宮の内装と環境
• 朱雀の后宮は朱色と白を基調とした豪華な内装で、金の鳳凰の屛風や幻想的な飾り棚が特徴であった。董胡はその豪奢さを見て、后としての敗北を感じた。
2. 朱璃姫の正体と生い立ち
• 朱璃姫は朱雀公の娘としてではなく、妓楼で育った舞妓の母を持つ平民の出自であった。後に父が朱雀公に指名されたことで貴族の身分を得たが、本人は后宮の生活に不満を抱いていた。
3. 朱璃姫の目的と董胡との対話
• 朱璃姫は「とうれい」という女性の行方を捜すために一の后の役目を受け入れていた。彼女は董胡がその「とうれい」と何か関係があるのではないかと考え、董胡に興味を持った。
4. 朱璃姫の意図と帝との関係
• 朱璃姫は帝の寵愛を求めておらず、帝もまた朱璃姫を友人のように扱っていた。彼女は朱雀領内の病の問題を解決するため、玄武の后宮に医師を派遣して欲しいと董胡に協力を依頼した。
5. 朱璃姫の未来と后宮での影響
• 朱璃姫はやがて舞妓としての生活に戻ることを望んでおり、後宮での立場を放棄する意向を示していた。一方、彼女を慕う侍女たちは、朱璃姫が皇后となることを期待していた。
6. 朱璃姫の体調と禰古の懸念
• 禰古は朱璃姫の最近の体調不良に不安を抱いており、后宮での生活が彼女に合わないのではないかと心配していた。
四、翔司皇子
1. 董胡の后宮からの帰還と遭遇
• 董胡は朱雀の后宮を後にし、玄武の后宮へ急いで戻った途中で弟宮と遭遇した。彼女は竜胆の花に目を留め、その薬効を思い出し、後日採取を計画した。
2. 弟宮との会話と誤解
• 弟宮との短い会話で、董胡は自分の知識を隠しきれず、弟宮の興味を引いた。董胡は彼とのさらなる会話を避けるため、その場を去ることにした。
3. 董胡の料理と帝との再会
• 董胡は帝に滋養のある料理を提供し、その中には雑穀や唐辛子を使った珍しい一品もあった。帝は董胡の料理を楽しみ、過去の記憶を思い出した。
4. 帝の告白と戸惑い
• 帝は董胡との再会を喜びつつも、自分が董胡を頼りすぎているのではないかと疑念を抱いた。また、董胡が先読みに関連している可能性を示唆した。
5. 偵徳の反感と復讐心
• 一方、偵徳は内医官として皇帝に従いながら、皇帝への不信と憎悪を抱き、董胡の失踪に対する責任を追及する意志を持っていた。
6. 黎司の葛藤と董胡への感情
• 帝・黎司は董胡への特別な感情に気づかず、自分の視界に映る董胡の幻影に戸惑っていた。彼は董胡を危険にさらしたくない思いを強め、医官派遣を躊躇していた。
7. 翠明の洞察と事態の進展
• 翠明は帝の心に董胡への感情が芽生えているのではないかと考え、その影響が帝の天術に現れているのではないかと推測した。しかし、既に事態は二人の知らないうちに進行していた。
五、朱雀のお茶会
1. 偽装の策と朱璃姫への訪問
• 董胡は、玄武の后・鼓濤と侍女頭・董麗が同一人物である秘密を守るため、茶民を后として偽装した。朱璃姫の招待を断ることができず、三人で朱雀の后宮に赴いた。
2. 朱璃姫との交流と策略
• 董胡は朱璃姫に対して、自身の医術的な知識を用いて、彼女の体調を気遣いながら会話を進めた。朱璃姫は董胡の洞察力を見抜き、彼を朱雀の都での医官派遣へ説得しようとした。
3. 帝との対面とレイシの正体
• 帝が訪れる中、董胡は彼がかつてのレイシであると確信した。レイシは董胡が朱璃姫の求める医官であると知り、董胡に協力を求めた。
4. 医官派遣の準備と帝の支援
• レイシは董胡に薬膳師としての役割を全うするよう求め、彼に朱雀の都への通行を許可する木札を手渡した。董胡は帝への恩義を感じ、病の原因を解明する決意を固めた。
5. 使命への覚悟と未来への決意
• 董胡は朱雀の都での任務に向けて準備を進め、帝との関係を深めつつ、自らの医術をもって朱璃姫の問題を解決するための意欲を高めた。
六、帝の密偵
1. 董胡の出発準備と帝の密偵との接触
• 董胡は朱雀の都への調査のため、鼓濤の不在を偽装し準備を整えた。朱雀門で帝の密偵と合流し、待ち合わせの場所で楊庵と偵徳という旧知の仲間に再会した。
2. 麒麟寮との関係と密偵の背景
• 楊庵と偵徳は董胡を探し続け、麒麟寮から神官との関係で密偵となっていたことが判明。董胡も帝の命令を受けて流行り病の調査を行うため、偵徳らと共に行動することになった。
3. 妓楼での潜入調査と人間関係の展開
• 三人は朱雀の妓楼「雅舫楼」に潜入し、流行り病の手がかりを探し始めた。妓女たちとの交流の中で、内部の人間関係や客との関わりが見え隠れする。
4. 董胡の秘密と仲間との絆
• 董胡は自分の秘密を守りながらも、楊庵と偵徳との絆を深めた。楊庵は董胡のために大切な薬草を保管しており、その心遣いに董胡は感動した。
5. 課題と今後の展開への伏線
• 流行り病の原因が疱瘡や寄生虫ではないかと推測される中、三人は妓楼での情報収集を続けた。今後の展開に向けて、董胡たちは限られた時間で成果を出す必要があると覚悟を決めた。
七、朱雀の奇病
1. 流行り病の調査と雅舫楼での異変
• 董胡、偵徳、楊庵は雅舫楼での夕霧の異常な人気について疑問を持った。特に夕霧が突然多くの顧客から指名を受けるようになったことが問題視された。
2. 呪術の疑いと阿芙蓉の香
• 調査の過程で、夕霧が「阿芙蓉」という媚薬としても使われる香を使用している可能性が浮上した。この香は煙を通じて効果が増すため、顧客を虜にする手段として利用されている可能性が示唆された。
3. 綺羅の協力と危機的状況
• 董胡は妓女見習いに変装し、綺羅の助けで夕霧の部屋を調査するが、痕跡を見つけられなかった。その過程で若君という謎の貴族男性と遭遇し、危険な状況に陥った。
4. 若君と夕霧の関係の不穏さ
• 若君は夕霧を支配し、彼女を操作する様子を見せた。夕霧の精神的な不安定さも明らかになり、彼女の行動が異常であることが浮き彫りになった。
5. 帝の先読みと客の異常行動
• 最後に、夕霧の顧客たちが大金をつぎ込んで彼女に執着する異常な行動が確認された。董胡はこの現象が帝の先読みと一致すると確信し、流行り病の原因がこの執着に関連している可能性を見出した。
八、阿芙蓉
1. 董胡の変装と偵徳・楊庵との再会
• 董胡は妓女見習いに変装し、戻った部屋で偵徳と楊庵に再会した。偵徳は董胡の変装に驚き、楊庵は戸惑いを見せた。
2. 極楽金丹の危険性の確認
• 極楽金丹の煙が、痛みを和らげるだけでなく、異常な高揚感と深刻な中毒性を持つことが再確認された。偵徳が薬を試した結果、狂喜とその反動での絶望が現れた。
3. 朱雀への悪意ある計画の推測
• 極楽金丹の流布が朱雀の領地を弱体化させるための陰謀であり、若君の背後に玄武公や白虎公が関与している可能性が示唆された。
4. 阿芙蓉の影響と離脱症状
• 楊庵が阿芙蓉の影響を受け、普段とは異なる行動を見せた。董胡は、この薬が朱雀中で広まる前に対策を取る必要があると確信した。
5. 若君の追跡と危機的状況
• 若君を尾行した董胡と楊庵は、山中で若君の護衛たちに囲まれた。護衛たちも阿芙蓉の影響を受けていることが明らかになり、二人は危険な状況に陥った。
九、上楼君、紫竜胆
1. 妓楼での舞と若君の登場
• 雅舫楼では「紅薔薇貴人」の舞団による壮麗な舞が披露された。若君はその優雅な舞を観覧し、妓女見習いの紫竜胆に関心を寄せた。
2. 若君の意図と紫竜胆との対峙
• 若君は、新たに上楼君になった紫竜胆に興味を示す一方、前任の夕霧を引きずり下ろすことを計画していた。紫竜胆は若君に反論し、堂々と対峙した。
3. 董胡と仲間たちの正体と協力
• 董胡と楊庵は、尾行中に「傀儡法師」という軽業師の一団と遭遇し、彼らが朱雀公の娘、朱璃の依頼で行動していたことを知った。さらに、一団の一人は朱璃の弟、旺朱であった。
4. 若君の陰謀と董胡の作戦
• 極楽金丹の流布が朱雀の街を蝕んでいた。董胡は旺朱たちの協力を得て、阿芙蓉の中毒者たちを治療しつつ、若君の陰謀を暴こうとした。
5. 若君との対決と術の発見
• 若君は特殊な鍼術を使って董胡たちを攻撃し、混乱の中で逃亡した。赤軍も山奥の小屋で怪しげな術を使う者たちと対峙したが、完全な解決には至らなかった。
十、正体ばれる?
1. 阿芙蓉中毒の治療
• 董胡、偵徳、楊庵は阿芙蓉中毒者たちの治療に尽力した。特効薬がないため、十薬茶を用いて毒を排出し、患者たちに苦しみに耐えるよう促した。
2. 旺朱との交流
• 旺朱は董胡をねぎらい、豪華な美食膳を振る舞った。旺朱が美食家であり、阿芙蓉中毒と誤解されていたことも明らかになった。董胡は妓女や高級料理を提供するという提案を辞退した。
3. 朱璃の登場と目的
• 朱璃が王宮を抜け出し、自ら紅薔薇貴人として舞を披露していたことが判明した。彼女は董胡の性別に興味を示し、董胡を探る素振りを見せた。
4. 董胡とレイシの再会
• 任務を終えた董胡は王宮に戻り、レイシと再会した。レイシは董胡に温かく接し、董胡は彼への想いを再確認した。鼓濤としての自分との関係を隠し続ける葛藤も描かれた。
5. 朱璃の願いと新たな波乱の兆し
• 朱璃は帝に幼い頃の思い出の女性「董麗」の捜索を依頼した。また、皇太后から后宮のお茶会への招待が届き、董胡は雄武との再会を恐れていた。波乱の未来が近づいていることが暗示された。
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