どんな本?
『皇帝の薬膳妃』は、アジアン・ファンタジーの舞台を背景に、宮廷内の陰謀と愛情が交錯する物語である。
主人公の董胡(とうこ)は、幼い頃に出会った麗人「レイシ」に憧れ、その専属薬膳師になる夢を抱き、男装して医術を学び続けてきた。しかし、運命のいたずらにより、彼女は皇帝の妃としての立場を強いられ、妃と薬膳師という二重生活を送ることになる。
物語の魅力は、董胡が異なる役割を演じながらも、揺るぎない信念を貫いていく姿にある。王宮の華やかな日常の裏では、さまざまな陰謀や権力争いが渦巻き、彼女は薬膳の力を駆使しながら課題を解決し、自身の正体を守り抜かなければならない。
『皇帝の薬膳妃』は、後宮の美しさと危うさが織り交ぜられた世界観と、主人公の成長が見どころである。複雑な人間関係と感情が丁寧に描かれ、登場人物それぞれに奥深い背景が用意されているため、物語を読み進めるほどに引き込まれるだろう。
華やかな宮廷の表と裏で繰り広げられるドラマを楽しみたい人に、ぜひおすすめしたい作品である。
読んだ本のタイトル
皇帝の薬膳妃 青龍の姫と蝋梅の呪い
著者:尾道 理子 氏
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あらすじ・内容
本当に大事なものを、見つけたい。壮大な王宮アジアンファンタジー!
相変わらず、薬膳師と妃の二重生活を送る董胡。周囲にばれないかとひやひやの毎日だ。
年明けて元日、友人である朱雀の后・朱璃と一緒に輿の中でくつろいでいたところ、ライバルである青龍の宮から使いが。聞けば青龍の第一后・翠蓮姫が病気を患っているのだという。
董胡は正体がばれることを恐れつつ、医師としての強い思いから診療のため青龍の宮へ赴いた。
そこで見たのは、喉に何かが詰まり息ができないと訴えながら、苦しそうに発作を起こす姫の姿。
董胡は医薬院での経験をもとに、まずは発作を抑えることに成功するが、原因はまったくわからない。
しかも、普段翠蓮姫が処方されて飲んでいるという薬は、董胡からすればあり得ないほどひどい処方だった。
侍女や侍医は、皆口々に「黒蝋妃の呪い」のせいだと恐れる。青龍の美姫ほど、この呪いにかかり、病みがちになるのだという。
しかし姫の身体からは、はっきりと臓腑の弱りを示す色が放たれていた。董胡は姫の病気の原因を探ろうと行動を起こすが――。
一方、皇帝・黎司は、新年を寿ぐ祈祷のさなか、「先読み」の神託を受ける。
道鏡にうつったのは、玄武公の長男・尊武によってどこかへ連れ去られる董胡の姿だった。
言いようのない不安を覚える黎司だったが――。
皇帝・黎司を追い落とそうとする玄武一族の動きも不穏になり、伍尭國に嵐が吹き始める!?
本当に大事なものを、この目でしっかりと見つけたい。
華麗にして壮大な王宮ファンタジー、波瀾の第4弾!
感想
『皇帝の薬膳妃 青龍の姫と蝋梅の呪い』は、董胡が医師としての使命を果たしつつ妃としての立場も守るという緊迫感あふれる展開であった。
今回は、青龍の第一后・翠蓮姫の謎の病を診るため、董胡が青龍の宮に向かうところから物語が始まる。
董胡は、正体がばれる恐れを抱えつつも医師としての責務を果たそうとするが、その行動が彼女の医師としての強い信念と献身を物語っていた。
彼女にとって妃である事が邪魔だよな、、
診療の過程で、董胡は翠蓮姫に対して行われていた医療の酷さに驚かされる。
青龍の医師が姫に対して誤った処方を行い、その責任を董胡たちに転嫁する陰謀も明らかになる。
その冷酷さに対抗する董胡の姿は、彼女の正義感と医師としての責任を強く感じさせるものであった。
さらに、今回の物語では玄武公の嫡男・尊武が登場し、董胡の秘密に迫る存在として不気味な影を落とす。
帝が自分こそが麗人レイシであると董胡に明かす場面もありながら、董胡はまだ二重生活と自身がが女性だと帝に打ち明けられないままでいる。
このことで、帝と董胡の関係には独特の緊張感が漂い、今後の二人の関係がどう展開していくのかが楽しみである。
物語が進むにつれ、董胡の行動は複雑化し、彼女を取り巻く人々の思惑も絡み合う。
朱璃や王琳が董胡を理解し、支えようとする姿勢が描かれる一方で、秘密を抱え続ける董胡の姿には葛藤があり、物語に深みを与えていた。
董胡の献身的な行動や、次第に明らかになる後宮の陰謀により、『皇帝の薬膳妃 』は次巻への期待がますます膨らむ一冊となっていた。
今後もさらに続くであろう董胡の奮闘を楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
序
はるか昔の伍尭國と董胡の誕生
• 麒麟の力を持つ皇帝が治める国、伍尭國があった。その北部にある玄武の地で、平民の董胡は医師を目指して暮らしていた。彼女は女子であることを隠しながら、医師免状を取得するための修練を続けていた。
皇帝の后としての命令
• 念願の医師免状を受け取るために黒水晶の宮を訪れた董胡は、突然、皇帝の一の后・鼓濤として輿入れすることを命じられた。これは、伍尭國の新たな皇帝が即位すると、玄武、青龍、朱雀、白虎の四領地から各一人の姫が后として輿入れする伝統に基づいていた。
皇帝・黎司との再会
• 王宮での不本意な生活を送る中、董胡は五年前に専属薬膳師として仕えると約束した麗人が、実は皇帝・黎司であったと知った。彼女は自身の正体がばれることを恐れつつも、黎司のために薬膳料理を作り、奔走する日々を送ることとなった。
朱雀の流行病と殉死制度の廃止への関与
• 董胡は、朱雀の地で流行していた謎の病の原因を突き止めることに成功した。また、玄武が関与していた悪しき内医師の殉死制度の廃止にも一役買い、徐々に皇帝としての力を得ていく黎司にとって、なくてはならない存在となっていった。
皇帝・黎司の命綱としての董胡
• 特殊な力で薬膳料理を作る董胡は、拒食を患う黎司にとって命を支える存在であった。彼女は正体がばれることなく、黎司に薬膳料理を作り続けられることを願っていた。
正体がばれる危機
• しかし、董胡の正体が朱雀の一の后である朱璃にばれてしまう。董胡は覚悟を決め、王宮を去る時がきたのかと身構えて朱璃と対峙した。
青龍の后宮での新たな騒動
• 一方で、玄武と朱雀の后たちが緊張関係にある中、青龍の后宮でも新たな騒動が持ち上がり、後宮全体に波乱が予感される状況であった。
一、黒蝋妃の呪い
青龍の后宮とその守護
• 青龍の后宮は、群青に彩られた柱と壁で囲まれ、精悍な雰囲気を漂わせる場所であった。武術を重んじる青龍らしく、回廊には屈強な衛兵が配置され、異物が入り込む隙はなかった。
• その深部には、青銅の扉で閉ざされた一室があり、一の后である翠蓮姫が療養していた。侍女たちは姫の発作に怯え、寝所での護衛にあたっていた。
翠蓮姫の発作と侍女・鱗々の奮闘
• 突然、翠蓮姫が息苦しさを訴え、喉に何かが詰まっているかのように発作を起こした。侍女である鱗々は彼女のそばに駆け寄り、呼吸を整えるよう促したが、翠蓮姫は「黒蝋妃の呪い」に怯えた。
• 鱗々は姫を励まし続けたが、翠蓮姫はそのまま気を失った。彼女の忠実な侍女である鱗々は、ひたすら姫の容態を心配していた。
主治医・雲埆の診断
• 青龍の后宮の主治医である雲埆が診察に訪れ、翠蓮姫の発作は「驚悸の発作」であるとした。雲埆は姫の病を「心の弱さ」によるものだと片付け、厳しい口調で鱗々に対して侮蔑的な言葉を投げかけた。
• 鱗々は姫の病気が単なる甘えではないと強く反論したが、雲埆は取り合わず、症状を和らげるための処方薬のみを出すとした。
家系病「煩躁驚」の影
• 雲埆は翠蓮姫の症状を「煩躁驚」と呼ばれる家系病の可能性とみなし、この症状が家系に伝わるものであり、進行すれば回復は望めないと述べた。
• 煩躁驚は、青龍の美しい姫に多く見られるもので、黒蝋妃の呪いと囁かれていた。病が進むと、患者は恐怖や興奮に苛まれ、やがて自ら命を絶つこともあるとされていた。
蛟龍の卵による治療の提案
• 鱗々は翠蓮姫のために何か有効な薬がないかと再度雲埆に尋ねた。すると雲埆は、治験中の「蛟龍の卵」という貴重な生薬を使うことを提案した。これにより翠蓮姫が回復する可能性があると雲埆は語った。
• 雲埆は蛟龍の卵の使用許可を青龍領主・龍氏に求めるつもりであったが、鱗々は心中で雲埆への不信感を抱きつつも、頼る医師がいない現状に無力さを感じていた。
二、鼓濤と朱璃
玄武と朱雀の后の対面
• 玄武の后・鼓濤の宮に、朱雀の后・朱璃が予告なく訪れた。彼女たちの静かな睨み合いが始まり、王宮内での皇帝の寵愛を巡る序列争いが、外部からは痴話喧嘩のように見られていた。
朱璃に正体がばれた鼓濤
• 鼓濤は実は男装の医師・董胡であり、さらに侍女頭・董麗としても王宮で活動していた。しかし朱璃はすでにその全ての正体を見抜いており、鼓濤はこの事実をどのように利用するつもりかと朱璃に詰め寄った。
朱璃の問いと董胡の決意
• 朱璃は鼓濤に対して、彼女の目的が皇帝を害するものであれば告発すると告げた。董胡は朱璃に正直に自らの素性を話し、平民出身であり医師を目指していたこと、そしてやむを得ず玄武の后としての地位に就いた経緯を語った。
董胡の出生の秘密
• 朱璃は、董胡が皇女・濤麗の娘であり、さらに玄武公・奬武の子である可能性を指摘した。董胡にとって、その事実は黎司の母や皇族の暗殺に関わる「玄武一族の娘」としての立場を意味し、皇帝と敵対する玄武公の血を引いていることに絶望を感じた。
麒麟の力と董胡の秘密の力
• 朱璃は、董胡が「麒麟の力」を持つ濤麗の娘である証拠として何か特殊な力があるか尋ねた。董胡は他人の食の好みが視覚的に色として見える能力を思い出したが、それを朱璃に話すことは避けた。
朱璃への信頼と董胡の約束
• 董胡は朱璃に、皇帝の拒食症が治るまで秘密を守って欲しいと懇願した。朱璃はそれを了承し、董胡が正体を告白する日には協力することを約束した。董胡もまた、何か行動を起こす際には必ず朱璃に相談すると誓った。
三、黎司と尊武
尊武との再会と土産の贈呈
• 謁見の間で皇帝・黎司と、玄武の嫡男である尊武が対面した。尊武は長期の外遊から戻り、黎司へ異国の土産を贈呈した。
• 西方諸国の文明や建築、石造りの高層建物についての尊武の話は、黎司の興味を引いた。伍尭國では見られない異文化の話に黎司は感心し、興味を持った様子であった。
尊武の謝罪と忠誠の表明
• 謁見の中で、尊武は玄武公が先帝の突然の崩御後、皇帝に無礼を働いたことについて謝罪し、自分は父と異なる考えを持っていると述べた。
• 尊武は黎司に忠誠を誓い、伍尭國の繁栄を望んでいると主張した。黎司はその言葉を疑いながらも、彼の誠実さを信じたいと願う自分に気づいた。
殉死制度に関する質問
• 黎司は、玄武の一族が関与していると思われる「殉死制度」について尊武に問いただした。
• 尊武は、自身が外遊に集中していたため宮内局の仕事を軽んじていたと説明し、制度の存在について知識がなかったことを認めた。彼は今後、責任を果たす意志を示した。
尊武への信頼と慎重な判断
• 尊武が玄武の嫡男であることに対する警戒を持ちながらも、黎司は彼の真意を見極めようと決心した。
• 謁見が終わった後、側近の翠明は尊武への不信感を伝えたが、黎司は噂に惑わされることなく、彼自身の行動を見て判断するつもりであると述べた。
皇帝としての信念と決意
• 黎司は、自身の信念を曲げず、誰を信じるか慎重に選ぶことの重要性について述べた。
• 彼は、圧力に屈して信念を捻じ曲げることが、為政者としての道を誤る原因になるとし、自らの信念を貫くことの決意を再確認した。
• 皇帝である自身が信念を失わないことで、伍尭國をより良い方向に導く意志を固め、翠明もまた、黎司の成長を感じて彼の決意を支持した。
四、黎司の贈り物
董胡の秘密と王琳の驚愕
• 年末の玄武の后宮で、侍女頭の王琳が董胡の正体に気づき、騒然とした空気が漂った。董胡が男性として医官の役をしていることを知らなかった王琳は驚愕し、卒倒しかけた。
• 皇帝からの文に「鼓濤と董胡の対面を望む」との記載があり、董胡はついに正体を明かさざるを得なくなった。
• 王琳は、董胡の男装の事実とその大胆さに驚きつつ、体面を気にして男装をやめるよう懇願したが、董胡は状況の複雑さを説明し、理解を求めた。
皇帝への正体隠しと王琳の懸念
• 翌日、董胡は鼓濤としてではなく、医官の姿で皇帝と対面することを決意した。
• 王琳は鼓濤の姫君としての将来を案じ、皇帝に董胡としての姿しか見せない董胡の行動を残念に思ったが、最終的にはその決断を受け入れることにした。
皇帝・黎司との対面
• 夜更けに黎司は董胡との対面を果たしたが、董胡は鼓濤の体調不良を理由に董胡として皇帝と会った。
• 皇帝は董胡の言葉から自分の正体に気づいていることを察し、董胡も黎司に素直な感謝と敬意を示した。
• 二人は董胡が黎司に薬膳を作るという形で再会した過去を振り返り、黎司は董胡の料理に喜びを表した。
皇帝からの贈り物と感謝の辞書
• 董胡は黎司から贈り物として、麒麟寮医薬草典を綴じた書物を受け取った。これは貴重な知識が詰まったもので、董胡にとっては何よりの宝物であった。
• 黎司は董胡が自分のために持っていた特別な料理の記憶を喜び、董胡は感謝と喜びで溢れる思いを表した。
尊武の疑念と董胡の使命
• 董胡は、王宮で朱雀にて怪しげな金丹を広めようとした若君と酷似した人物を見かけたことを皇帝に伝えた。
• その人物が玄武の嫡男・尊武である可能性を示唆し、董胡は警戒を促しつつも、自らが事実を暴く決意を固めた。
• 董胡の情報を受け、黎司もまた尊武の意図に対して警戒を強め、董胡には慎重に行動するよう求めた。
五、過年祓の儀
『年越しの大晦日』:董胡と朱璃の年の瀬
帝の繁忙と董胡の想い
• 皇帝である黎司が董胡に身分を明かした後、董胡は黎司に后宮で料理を楽しんでほしいと誘った。しかし年末の神事が重なり、黎司は后宮に訪れることができなかった。
• 王宮では大晦日に「過年祓の儀」が行われ、帝と神官たちが一晩中、全ての村の名を読み上げて祓詞を奏上し、民の罪や穢れを清める儀式が続けられた。
朱璃と董胡の密会
• 朱雀の后宮にて、朱璃が董胡を呼び出し、酒を飲み交わしながら大晦日の夜を過ごした。董胡は后宮を抜け出すために男装し、朱璃はその姿を見て彼を舞童子に誘いたくなるとからかった。
• 朱璃は董胡が黎司に贈り物をもらったことを聞き、年越しの后の序列が玄武に戻ったことを悔しがった。董胡は黎司が鼓濤に会えなかった理由として「体調不良」を口実にしていると告げ、さらに黎司の拒食を治療するための時間を確保する難しさを朱璃に伝えた。
朱璃の提案と董胡の悩み
• 朱璃は董胡に、鼓濤が幼少期に疱瘡を患ったと説明し、顔を隠している理由にできると提案した。董胡は、それが黎司に納得してもらえるか不安だったが、朱璃は鼓濤の女心を汲んで無理をしないように伝えると約束した。
• 朱璃と話すうちに、董胡の悩みが和らぎ、彼女の励ましによって少しだけ気持ちが軽くなっていた。
大晦日のご馳走と朱璃の期待
• 董胡は朱璃に伍尭國の伝統的な大晦日料理「年夜飯」のお裾分けを持参した。平民時代の記憶を再現した春餅を朱璃が試食し、その味に驚きと喜びを示した。
• 朱璃は、董胡の料理の腕を称賛し、黎司もこの料理を楽しむことで拒食が治るだろうと期待を寄せた。そして董胡に対し、后としてではなくとも黎司のそばにいる道を一緒に考えようと提案した。
新年の始まりと意外な土産
• 大晦日の夜を朱璃と過ごした後、董胡は朱璃に持たされた生きた蟹を風呂敷に包んで玄武の后宮に戻った。
• 戻るとすぐに王琳に小言を言われたが、蟹の包みを開けた侍女たちが驚きの声をあげ、その騒動の中で賑やかに新年が始まった。
六、国民参賀の儀
『新年の神事と不吉な先読み』
四方拝礼の儀式と黎司の疑念
• 新年の最初の神事「四方拝礼」が黎司によって行われた。黎司は御内庭にて、四方の守護神に祈りを捧げ、定められた輝石を通じて伍尭國に結界を張ろうと試みた。
• 儀式を終えたものの、結界が張られた実感が持てない黎司は、形なきものを司る難しさに悩んでいた。
銅鏡の異変と尊武の影
• 儀式の最中、突如として祈禱殿の銅鏡が光を放ち、黎司の前に魔毘が現れた。魔毘が示した銅鏡には、玄武の地に関係する尊武の姿がはっきりと映し出されていた。
• 鏡の中で、尊武は長い袖に董胡を抱え込む姿を見せ、董胡は悲しげに黎司に「ごめんなさい」と口を動かした。
• 夢か現か、黎司は不吉な予感を抱きつつ儀式を終え、祈禱殿をあとにした。
『国民参賀の儀と朱璃の企み』
式典の準備と四后の欠席
• 翌日の「国民参賀の儀」では、皇帝黎司が民の祝辞に応えたが、四后のうち鼓濤と青龍の后が体調不良で欠席、白虎の后も姿を見せず、朱璃のみが参列した。
• 民衆の間では后達の冷淡さが囁かれ、賭場では次の皇后候補として朱雀が最有力視されるなど、噂話で賑わっていた。
朱璃と董胡の密談
• 参賀の儀の最中、朱璃は董胡を輿の中に呼び入れ、董胡に鼓濤の体調を尋ねる名目で侍女頭鱗々との会話を取り持った。
• 鱗々は、青龍の后の体調が芳しくないため、玄武の后の専属医官である董胡に診てもらいたいと懇願。朱璃の説得により、董胡は医術のために後宮での診察を承諾せざるを得なかった。
青龍后宮への訪問決定
• 鱗々は、青龍の后が体調を崩していることを隠し、名医の雲埆が休暇に入る間に董胡の診察を望んでいると明かした。状況に不安を抱きながらも、董胡は皇帝と后のため、青龍の后宮への訪問を決意した。
七、翠蓮姫の病
『青龍の后宮訪問と姫君の診察』
青龍の后宮への訪問
• 年明け三日、董胡は医官姿で青龍の后宮を訪問。前日に鱗々から入宮のための木札を受け取っていたため、衛兵に止められることなく后宮内へ進んだ。
• 青龍の宮は隙のない美しさを持ち、衛兵が配置された厳重な作りで、庭には梅のような低木が並び、花の開花を予感させる光景であった。
青龍の医師との対立
• 董胡は鱗々と、青龍の后の専属医師である康生と対面。康生は董胡を子供と見なし、玄武の后が本気で医師を派遣するつもりがないと批判的な態度を取った。
• 董胡はかつて麒麟寮でも年齢や外見により軽んじられた経験があるため、康生の対応にも冷静に対処した。
翠蓮姫の発作と董胡の治療
• 翠蓮姫が発作を起こし、呼吸困難に陥るが、董胡は症状が「梅核気」と「過換気症候群」である可能性を見抜き、姫君に息を吐かせることで呼吸を整えることに成功した。
• 鱗々と康生は、董胡の治療法に驚き、今までの治療との違いに戸惑いつつも、その効果に感嘆した。
発作の原因の探求
• 董胡は、発作の根本原因に注目し、翠蓮姫の家族や養子としての輿入れの背景について質問した。翠蓮姫は、龍氏の一の后候補として青龍に嫁がされたことを明かし、心労が発作の原因である可能性が示唆された。
• 翠蓮姫は、一族の間で「煩躁驚」という心の病が遺伝しているとされ、さらに「黒蝋妃」の呪いの伝承が影響していると語った。
雲埆の処方薬への疑念
• 康生から、翠蓮姫に処方されている薬「黄龍の鱗」の存在を知らされる。この薬は青龍で広く流通しており、万能薬とされているが、康生自身も成分を知らないと明かした。
• 董胡は薬の成分に疑念を抱きながらも、他に処方内容が不明であるため、姫君には食事の改善(緑の食材や柑橘系の摂取)を推奨した。
帰路と今後の展望
• 翠蓮姫の診察を終えた董胡は、まず食生活の指導を行い、体の回復を目指すことにした。董胡は、翠蓮姫が過度な不安と重圧を感じている背景を理解しつつ、今後の治療方針を模索するため一旦帰路に就いた。
八、年菜祝い膳
『黎司の訪問と董胡の決意』
年始後の黎司の訪問
• 董胡が青龍の后宮を訪れた翌日、年末年始の神事が一段落した黎司が久しぶりに鼓濤の許を訪れた。
• 董胡は風邪のため仮病を装う鼓濤の代わりに料理を用意し、帝である黎司と会話を交わした。
• 黎司は朱璃からの忠告に従い、鼓濤の痘痕に対する不安を尊重すると告げ、董胡は帝の寛大さに安堵しつつ、料理で誠意を尽くす決意を新たにした。
年菜祝い膳の提供と黎司の感想
• 董胡は年菜祝い膳として、金目鯛の姿煮や冬鮑の酒蒸しなど、縁起の良い料理を準備。特に黎司が苦手とする甘味の八宝飯をアレンジし、甘さを控えた出汁で炊いたものを提供した。
• 黎司は、初めて味わう八宝飯の食感や風味に驚き、董胡の料理に大変満足した。董胡もまた、黎司の喜ぶ顔に幸せを感じた。
青龍の后の病状についての会話
• 董胡が青龍の后の診察に行ったことを黎司が知っており、后の病状についても気にかけている様子を見せた。
• 黎司は后が怯え、呼吸困難に陥っていることに気づいており、董胡に后の病を治せるなら力になってほしいと頼んだ。董胡は黎司がすべてを察していると感じた。
『黄龍の鱗』の調査と薬草の発見
• 董胡は青龍で流通する薬「黄龍の鱗」に関心を持ち、翠明の祖父の薬草典を参照した結果、「蝋梅」という青龍特有の薬草が『黄龍の鱗』に含まれている可能性を見出した。
• 蝋梅は青龍全域で咲く花で、咳を鎮めたり熱を下げる効能があり、董胡はこれが万能薬としての効果を持つか疑問を抱きながらも、今後の治療に活かせると考えた。
楊庵の協力依頼
• 董胡は鍼治療に優れた楊庵の協力が必要と感じ、黎司に許可を求めた。楊庵は密偵でもあるため、皇帝の承認が必要であったが、黎司は后の命を救うためならと許可を出した。
• 董胡は青龍の医師の処方に問題があった場合、黎司の権力に頼る必要があるかもしれないと述べ、黎司は董胡と楊庵を守ることを約束した。
尊武に関する警告と黎司の懸念
• 黎司は董胡に、尊武について調査しないよう命じた。また、董胡の腕を摑み、「そなたを失いたくない」と強い調子で訴えた。
• さらに黎司は、董胡が何かを隠しているのではないかと感じつつも、責めることなく、謝る必要はないので側にいてほしいと願った。
• 董胡は、自身の秘密と罪悪感を抱えながらも、黎司に「ずっとそばにいる」と約束し、拒食の治療を急ぐ必要性を再確認した。
九、薬庫の会合
『董胡と尊武の接触への不安』
薬庫での再会と「黄龍の鱗」についての情報交換
• 董胡が薬庫を訪れると、万寿と久しぶりに再会し、万寿から新年の参賀の儀について聞かされた。万寿は、平民医官として参賀に出席することに誇りを持っており、董胡もその場に立つべきだったと語った。
• 話の中で董胡は、青龍で流行中の薬「黄龍の鱗」について尋ねると、万寿はそれがでたらめな薬草の混合物で、蝋梅花以外の効能は期待できないことを伝えた。また、蝋梅花の種子が毒性を持つことも説明した。
楊庵との相談と青龍の后の治療への協力要請
• その後、董胡は楊庵に会い、青龍の后が「黄龍の鱗」を飲んでいることを話した上で、后の治療を手伝うよう頼んだ。楊庵は喜んで協力を申し出た。
• 董胡は楊庵の鍼と卜殷の指圧治療が后の病に有効である可能性が高いと考えており、翌日に二人で青龍の后宮に向かう予定を立てた。
宮内局視察と尊武との危うい再会
• 宮内局の局頭である尊武が視察に訪れる場面に出くわし、董胡と楊庵は慌てて拝座の姿勢を取った。尊武が朱雀で出会った若君と同一人物である可能性に二人は気づき、動揺を隠せなかった。
• 遠くから尊武を見た楊庵も、彼が朱雀で会った嫌な人物であると認識したが、尊武が二人に気づくことはなかった。だが、万が一に備え、董胡と楊庵はお互いに尊武との接触を避けるよう誓い合った。
十、病の原因
『董胡と楊庵による青龍の后の治療』
再会と青龍の后宮への同行準備
• 翌日、董胡は楊庵と合流し、尊武についての確認を行った。幸いにも楊庵は尊武に会うことなく無事であったため、二人は青龍の后宮での治療に集中することにした。
• 楊庵は医官董胡の使部として后宮に入るための木札を持参し、鍼を持って準備を整えた。
青龍の后宮到着と診察開始
• 青龍の后宮に到着し、鱗々と康生が董胡を迎えた。康生は前回の対応を反省し、今回の診察で董胡を補助することを誓った。
• 姫君は寝台で待っており、董胡の診察が始まった。董胡は脈診と舌診の結果から、姫君の症状が「胆気虚」による不調である可能性を見出した。
姫君の不眠の告白
• 診察の中で、董胡は姫君に不眠の有無を確認し、姫君が実際には夜眠れない状態が続いていることを突き止めた。姫君は侍女の心配を避けるため、不眠を隠していたことを告白し、鱗々は驚きと共に姫君の気遣いに感謝の意を示した。
楊庵の鍼と指圧による治療
• 楊庵は首と背のツボに指圧と鍼を施し、気の巡りを整えることで姫君の呼吸を改善した。姫君は久しぶりに大きく息が吸える感覚に驚き、治療の効果を実感した。
重い鉄製の櫛かんざしの影響
• 董胡は、姫君が常に身につけている鉄製の重い櫛かんざしが首に負担をかけ、不調の原因になっている可能性を指摘した。董胡の提案により、しばらく櫛かんざしを外して過ごすことを決定した。
煩躁驚の診断と治療方針の確立
• 董胡は、不眠や発作が適切に治療されなければ煩躁驚に至る危険性を説明し、発作の予防と気の巡りを整えるために「酸棗仁」と「茯苓」を処方した。
• 康生は董胡から指示を受け、今後の治療において楊庵の指圧法を学び、毎日施術を行うことを約束した。
鱗々の決意と黎司への誤解解消の提案
• 董胡は、姫君の病に関して、心の不安要因である帝の存在が影響していると指摘した。董胡の助言を受け、鱗々は姫君のために帝と面会し、人柄を確かめる決意をした。
• こうして董胡と楊庵は治療を終え、今後の方針を固め、青龍の后宮を後にした。
十一、蛟龍の卵
『董胡と黎司の試練と忠誠の物語』
青龍の后宮での試練と使命感
• 玄武の后宮において、董胡は医官姿のまま黎司の訪問を待っていたが、突然、青龍の后宮の侍女が悲壮な様子で助けを求めに来た。
• 青龍の后宮の姫君が痙攣発作を起こしたことを聞き、董胡は医師としての責務を果たすべく、急遽青龍の后宮に向かうことを決意した。
姫君の治療と医師としての覚悟
• 痙攣発作に苦しむ姫君の状態は深刻であり、董胡は「芍薬甘草湯」を用いて症状を緩和させるため治療を行った。
• 姫君の苦しみを軽減し、董胡はその場にいる侍女や護衛たちに安心させるよう努めたが、事態はさらに厳しい方向へと進んでいった。
雲埆との対峙と卑劣な陰謀
• 突如として現れた雲埆は、董胡を「偽医官」として非難し、捕縛を命じた。董胡は雲埆の陰謀に巻き込まれ、絶体絶命の危機に陥るが、医師としての信念を貫き、姫君のために戦う決意を固めた。
• 雲埆の卑劣な策略により董胡や侍女たちが追い詰められる中、彼らは忠誠心と信念を持って立ち向かい続けた。
帝の到来と真実の明かし
• 危機的状況の中、黎司が突如現れ、董胡を救った。黎司の威厳と冷静な判断により、董胡の無実が証明され、雲埆の悪事が暴かれる。
• 董胡と黎司の忠誠と信頼が試された場面であり、董胡の医師としての献身と黎司の寛大な心が交わり、信念が揺るがぬものであることを確認した。
雲埆の処罰と黎司の誓い
• 雲埆は黎司の命令によって捕らえられ、青龍の后宮から排除された。董胡は自らの信念と黎司への忠誠を再確認し、帝に感謝の意を表した。
• 董胡と黎司の友情と忠誠心が深まり、互いに新たな理想を共有する未来への希望が示された場面であった。董胡は黎司との絆を強く胸に刻み、再び后宮へと戻る道を歩んだ。
十二、若君の来訪
『青龍と玄武の策略と取引』
龍氏の謝罪と雲埆の処罰
• 翌日、青龍公・龍氏が皇宮に出向き、黎司に対して昨晩の雲埆の行動に関する謝罪を述べた。黎司は青龍の姫が命の危機に瀕していたことを厳しく指摘した。
• 龍氏は、自身の娘として姫を擁護しつつ、雲埆を「愚かな医官」として切り捨てた。さらに、雲埆を死罪とし、医塾や偽の医師免状の廃止を宣言した。
青龍の医療問題と玄武の関与
• 龍氏は青龍の医療が混乱した原因を玄武の亀氏にあると主張し、医療における他領地からの協力の不足を指摘した。
• 黎司は龍氏の意見を認めつつも、その問題を玄武の後継者である尊武に解決させる提案をした。龍氏は驚き、若干の困惑を見せたが、黎司の意向に従うほかなくなった。
尊武の登場と新たな試練
• 尊武が黎司の呼びかけに応じて皇宮に現れ、玄武の後継者として青龍の医療問題を正す責務を引き受ける意志を示した。
• 尊武の姿勢に対し、黎司はその忠誠心を称賛しつつも、内心ではその得体の知れない底知れぬ意図に一抹の不安を抱いた。
後宮での賑わいと鼓濤の決意
• 玄武の后宮では、董胡が準備した年糕を皆で楽しむ場面が広がっていた。王琳や侍女たちは董胡の無事を喜び、再び平穏な日々を取り戻したように見えた。
• 王琳は董胡に「董胡として専属薬膳師として生きる道」を提案するも、董胡は玄武公の娘という自身の出自を踏まえ、簡単に身分を捨てられない現実に葛藤を覚えていた。
尊武の訪問と鼓濤への取引
• 突然、玄武の嫡男・尊武が董胡を訪ねてきた。董胡は尊武が朱雀で会った「紫竜胆」と同一人物であることに気づき、尊武の意図を警戒した。
• 尊武は董胡が「男装し医官として活動していたこと」を知っており、その秘密を握って黙っている代わりに、自身を楽しませることを条件とする取引を提案した。
• 尊武のこの提案により、董胡は医官としての活動を継続する道が一時的に開かれたが、尊武の「退屈させれば秘密を暴露する」という不安定な協力関係に、再び後宮に嵐が巻き起こる予感が漂った。
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