どんな本?
『皇帝の薬膳妃』は、アジアン・ファンタジーの舞台を背景に、宮廷内の陰謀と愛情が交錯する物語である。
主人公の董胡(とうこ)は、幼い頃に出会った麗人「レイシ」に憧れ、その専属薬膳師になる夢を抱き、男装して医術を学び続けてきた。しかし、運命のいたずらにより、彼女は皇帝の妃としての立場を強いられ、妃と薬膳師という二重生活を送ることになる。
物語の魅力は、董胡が異なる役割を演じながらも、揺るぎない信念を貫いていく姿にある。王宮の華やかな日常の裏では、さまざまな陰謀や権力争いが渦巻き、彼女は薬膳の力を駆使しながら課題を解決し、自身の正体を守り抜かなければならない。
『皇帝の薬膳妃』は、後宮の美しさと危うさが織り交ぜられた世界観と、主人公の成長が見どころである。複雑な人間関係と感情が丁寧に描かれ、登場人物それぞれに奥深い背景が用意されているため、物語を読み進めるほどに引き込まれるだろう。
華やかな宮廷の表と裏で繰り広げられるドラマを楽しみたい人に、ぜひおすすめしたい作品である。
読んだ本のタイトル
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あらすじ・内容
宿敵・尊武とともに青龍の医術を正す――! 壮大なアジアンファンタジー!
薬膳師と妃の二重生活を送りながら、皇帝・黎司を助けるべく日々奮闘する董胡。青龍の后を病から救い出した矢先、ついに、宿敵である玄武公の長男・尊武に正体を知られてしまう。得体の知れない不穏な空気をまとう尊武に弱みを握られてしまい、董胡は窮地に立たされる。
一方青龍の地では、力を持っていた医師が捕まったことで、医術の混乱が生じていた。黎司は事態を収めるために特使団の派遣を決め、その団長に尊武を任命する。尊武は快く引き受けるが、突如、自分の専属薬膳師として董胡を共に連れていくと告げるのだった。尊武に従うしかない董胡は、黎司の心配を振り切り、不安な気持ちを抱えて青龍の地へ旅立つ……!
腹の底が読めない尊武の思惑とは? そして青龍の地の混乱は、さらなる事態を呼び――!
正義とは、善意とは。自分の行いは正しかったのか――。
黎司のもとを離れ、董胡は医術の現実に直面する。
シリーズ続々重版! 勢いが加速するアジアンファンタジー、揺れる第5弾!
感想
董胡は、皇帝・黎司を支える薬膳師であり妃としての役割をこなしながらも、宿敵である玄武公の長男・尊武と共に青龍の地へ向かうことになる。
青龍の后を病から救い出した直後、尊武に男装の正体を知られてしまった董胡は、専属薬膳師として尊武に同行せざるを得ず、窮地に立たされる。
皇帝の黎司は董胡の安全を案じて引き止めるも、尊武に秘密を握られている彼女は断ることができなかった。
尊武が団長を務める特使団と共に青龍の地に赴く中で、医師の座を追われた者たちが反抗し始め、医術体制が混乱する事態に直面する。
尊武は容赦なく反抗者を処刑しようとするが、董胡が必死に諫め、重刑から100叩きの刑に減刑させる。
しかし、その後も医師たちは報復に走り、董胡の知人が負傷する。彼女が治療を試みるも、手が震えて思うように動かず、尊武が冷静に縫合手術を施し命を救った。
その場面を目にした董胡は、非情な判断と卓越した技術を持つ尊武に圧倒され、自身の無力さを痛感する。
尊武と過ごす中で、董胡は彼の食いしん坊な一面に思わず親しみを覚えるも、彼の冷酷な面との対比に葛藤を深めていく。
黎司に対する純粋な思慕を抱きつつ、尊武の思惑に振り回される状況は、彼女にとってさらなる試練であった。
善意をもって人を救おうとする彼女の行動が仇となる場面もあり、彼女の葛藤に引き込まれる。
尊武が彼女の正体を知りながらも何を企むのか、物語は謎めいた緊張感の中で展開していく。
尊武が主導する青龍での出来事は、正義や善意についての深い問いかけを生み出し、董胡は自らの行いが本当に正しかったのかを考えざるを得なくなる。
尊武と対峙しながら、彼女がどのように成長し、黎司のためにどんな選択をするのか息を飲む展開とともに、今後の展開が気になる第5弾であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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シリーズ
その他フィクション
備忘録
序
『伍尭國における医術の闘いと後宮の運命』
四領地と麒麟の皇帝
• 伍尭國は、医術の玄武、武術の青龍、芸術の朱雀、商術の白虎の四領地と、天術を司る麒麟の皇帝によって治められていた。
• 各領地はそれぞれの術を極め、領地同士の独自性と権力を持ちながらも、皇帝の権威のもとで統治されている特殊な体制であった。
董胡の出生と医師への道
• 董胡は玄武の治療院で育ち、薬膳師を目指して医塾「麒麟寮」で勉強に励み、ついに医師の試験に合格した。
• しかし、董胡が玄武公の行方不明だった一の姫であると知らされ、突然皇帝の后として輿入れを命じられるという運命を迎えた。
王宮での孤軍奮闘と皇帝への思い
• 董胡は、男装して薬膳師として王宮に潜り込み、脱出の機会を伺っていたが、皇帝が幼き日に憧れていた黎司(レイシ)であると気づいた。
• 敵だらけの王宮で孤立する黎司を助けるべく、董胡は正体を隠しながら、王宮に残り黎司に尽力する決意をした。
各地での活躍と正体発覚の危機
• 董胡は、朱雀の流行病を鎮め、玄武の殉死制度の闇を暴き、青龍の后の病を快方に導くなど、黎司のために王宮内外で奮闘した。
• しかし、その活躍により徐々に正体が周囲に知られるようになり、黎司にもいずればれることを恐れつつも、彼の拒食を治してから王宮を去りたいと願っていた。
朱璃の理解と尊武による脅迫
• 朱雀の后・朱璃は董胡の秘密を知りながら理解者として支えたが、一方で玄武公の嫡男であり董胡にとっての宿敵である尊武にも正体がばれてしまった。
• 尊武は董胡の状況を面白がり、皇帝には黙っていると告げたものの、董胡は弱みを握られたことで新たな窮地へと引きずり込まれていく予感を抱くこととなった。
一、尊武の飲茶料理
『玄武の后宮と尊武の来訪』
后宮の準備と侍女たちの興奮
• 玄武の后宮では朝から、嫡男である尊武の来訪に向けて準備が進められ、侍女たちは指示を受けて忙しく働いていた。
• 茶民と壇々は、自らの衣装や香の準備に励みながら、尊武に見初められる可能性を夢見ていた。
• 一方、王琳は二人の侍女の無防備さを心配し、尊武の冷酷な一面に警戒するよう注意を促していた。
董胡の戸惑いと苦境
• 御膳所で董胡は尊武のために饅頭を作っていたが、不満を抱きながらも手を動かしていた。
• 尊武の要求に戸惑いながらも、彼に逆らうことはできず、次の来訪で料理を提供する準備を進めるしかなかった。
尊武の冷ややかな態度と侍女たちの落胆
• 尊武が后宮に到着し、侍女たちが意気込んで給仕を務めたが、彼は二人を邪険に扱った。
• 朝から準備を整えていた茶民と壇々は尊武の冷ややかな反応に驚き、失望した様子を見せた。
• 董胡は朱雀での経験から、尊武の無情な性格を思い出し、侍女たちに同情を覚えた。
饅頭の試食と尊武の挑発
• 尊武は、毒見もせずに董胡の饅頭を手で取り、無造作に食べ始めた。彼の無頓着な態度に董胡は困惑するが、尊武はそれが自らの直感によるものであると主張した。
• 彼は董胡を信用しているわけではないが、相手を見極めるためには、直感を頼るしかないと語り、董胡をあざ笑うような態度を見せた。
青龍への同行命令と董胡の困惑
• 尊武は突如として董胡に青龍行きを命じ、自身の専属薬膳師として同行させる意向を示した。
• 玄武の后である董胡は動揺したが、尊武に弱みを握られているため、拒否することができなかった。
董胡の正体と尊武の策略
• 尊武は董胡の御簾を持ち上げ、正体を確認しようとしたが、董胡は男装の医官姿で尊武を迎えていた。
• その姿を見た尊武は愉快そうに董胡を弄ぶような態度を見せ、青龍行きへの期待を口にした。
• 最後に、高笑いしながら后宮を去る尊武の姿を、董胡は御簾ごしに見送るしかなかった。
二、皇帝の特使団
『皇宮の殿上会議と尊武の策謀』
臨時殿上会議の開会
• 皇帝・黎司の皇宮にて、玄武、青龍、朱雀、白虎の四領地の代表が集まる臨時の殿上会議が開催された。会議には、外遊から帰還した宮内局の局頭・尊武も久々に出席していた。
• 会議の進行は、皇帝の大叔父である孔曹が担当し、会議のテーマとして青龍で発生した偽薬問題が取り上げられた。
青龍における偽薬問題と責任追及
• 青龍の地では雲埆という医師が偽の医師免状を発行し、効果のない薬を販売していたことが明らかになり、領主である青龍公はその管理不行き届きを詫びた。
• 玄武公は、青龍で医術の乱れが生じたことに不満を示し、青龍公に対して厳しい視線を向けた。青龍公は冷静に事態を収拾し、玄武公の追及に対しても動じず対応した。
皇帝・黎司の詔:特使団派遣の決定
• 皇帝・黎司は、青龍の医術問題を解決するため、特使団の派遣を決定し、その団長に宮内局の局頭である尊武を任命した。
• 特使団には医師の派遣だけでなく、新たな医塾「麒麟寮」を青龍に設立することが含まれており、玄武公の同意のもと、青龍と玄武の間で合意が成立していた。
玄武と青龍の医術・武術の交換協定
• 青龍に麒麟寮を建てる代わりに、玄武には麒麟武道場を設立するという取り決めがなされた。これにより、玄武も武術の強化を図ることができることとなり、双方の利害が一致した形となった。
• 朱雀公と白虎公も自領地への麒麟寮と武道場の設置を求めたが、黎司は青龍での成功を見極めた後に検討すると答え、会議は次の議題へ進んだ。
特使団の構成と護衛の配置
• 特使団には、麒麟寮で教育を受けた神官医師数名と玄武の医師が含まれ、青龍という敵国と接する土地に派遣されるため、黄軍の精鋭護衛兵である蒼家親子も護衛として同行することが決定された。
• 皇帝が護衛を提供したことに尊武は感謝を述べ、重臣たちも皇帝の気配りを称賛したが、玄武公は複雑な表情を浮かべていた。
尊武の策略:后宮の薬膳師同行の提案
• 尊武は玄武の医師団に追加して后宮の専属薬膳師を同行させると提案し、黎司は驚愕した。
• 尊武は「后が自ら提案した」と説明し、専属薬膳師を青龍へ連れて行く理由として、自らが美味しいと賞賛した饅頭を作ったことが契機であると語った。
• 黎司は董胡が尊武の正体に気付いていることを知っており、後宮に残したいと考えていたが、尊武の提案に対抗できなかった。
董胡の苦境と尊武の真意
• 最後に尊武は微笑みながら黎司に確認を求めた。「后宮の薬膳師の同行に関してお疑いがあるなら、直接后に尋ねても構わない」と。
• 黎司は動揺しつつも、尊武の自信に満ちた態度に圧倒され、董胡を青龍に同行させる案を否定することができず、会議は散会となった。
三、不機嫌な黎司
『黎司の決断と董胡の決意』
黎司の疑念と焦り
• 皇帝・黎司は董胡が尊武と共に青龍へ特使団として赴く話を信じられず、直接本人から真相を確かめるため、急ぎ后宮の鼓濤を訪ねることにした。
• 尊武の朱雀での正体を知っている黎司は、董胡が尊武と関わることに危険を感じており、年始に見た不吉な夢が彼の心に影を落としていた。
翔司との邂逅
• 黎司は后宮へ向かう途中で弟宮の翔司と出会う。黎司が殉死制度について厳しく追及して以来、翔司は肩身の狭い思いをしているように見えた。
• 翔司が庭を眺めていた理由を尋ねると、過去に侍女と話した竜胆の花が懐かしいと答えた。黎司は、翔司が身内として心の支えであることを小声で伝え、その場を去った。
鼓濤との対話
• 董胡の御座所に入った黎司は、久々に出迎える鼓濤に安心し、出された椿膳を楽しみながらも、次第に話題を本題へ移した。
• 黎司は、董胡が尊武と共に青龍へ行く意向があるのかを直接問いかけた。鼓濤がためらいがちに返答するも、その内容が尊武からの進言ではなく、董胡自身の希望であることを知り、黎司は驚愕した。
董胡の決意と黎司の反発
• 鼓濤は董胡が医師として青龍の混乱を収める責任を感じていると伝えたが、黎司は医師としての責任よりも董胡の安全を優先すべきだと説得を試みた。
• しかし、董胡の意思が固く、尊武との同行を望んでいることを知ると、黎司は焦りと苛立ちを募らせ、鼓濤が董胡を引き止めなかったことに失望を示した。
黎司の最終決断
• 黎司は深い失望と焦燥の中、明日董胡本人を呼び出して直接話すことを決意し、鼓濤にその旨を伝えた。
• そのまま黎司は後宮を後にし、今後の事態に備えて宮へと帰った。
四、皇帝の御座所
『董胡と黎司の決意』
皇宮への道中での思索
• 董胡は皇宮への小道を急ぎつつ、黎司が自分の青龍行きを止めようとしていることを考え、不安に駆られていた。
• 董胡は医師としての責任を口実にしたが、本心では尊武との同行を避けたかった。それでも、黎司の側にいたい思いが勝り、王宮に残るためには青龍行きを選ぶしかなかった。
• 尊武の言葉により、黎司が董胡の気持ちを誤解してしまったことも心苦しく、黎司にどう説明すればよいか悩んでいた。
謁見の間での再会
• 董胡は皇帝・黎司に呼ばれ、謁見の間で彼と対面した。黎司は親しみを込めつつも、厳しい表情で彼女に尋ねた。
• 黎司は董胡が尊武と会ったこと、朱雀での妓女としての過去が知られる危険を警戒しており、青龍行きを止めるよう強く説得した。
• 董胡は、青龍での医師としての責務と、尊武の企みを探るという口実を理由に、どうしても行かせてほしいと懇願したが、黎司はその発言を愚かだと断じた。
黎司の怒りと心配
• 黎司は董胡の考えを一蹴し、彼女の未熟さを指摘した。しかし、董胡が危険を承知で青龍行きを望んでいることに驚き、深い苛立ちを示した。
• それでも董胡は、黎司の側にいたい一心から、青龍行きを決意した理由を打ち明け、何としても行かねばならないと主張した。
• 董胡の本気を前に、黎司はやむなく彼女の意思を尊重し、危険を避けつつ帰還を誓うように命じた。
黎司と翠明の計画
• 董胡の安全を確保するため、黎司は翠明に董胡の護衛となる式神を付ける計画を明かした。翠明は董胡に、護衛のための人柱が必要であることを説明した。
• 黎司は密偵である楊庵と偵徳も青龍へ同行させ、董胡の身の安全に万全を期すことを約束した。董胡は黎司の配慮に感謝し、再び黎司の許へ帰ると誓った。
黎司の深い憂慮
• 董胡が立ち去った後、黎司は彼女を止められなかったことに落胆し、董胡と鼓濤の素性に何か秘密があることを感じ取っていた。
• 鼓濤の出自についての疑念も募らせつつ、黎司は董胡の無事と青龍での成功を祈り、翠明に式神での護衛を頼んだ。
五、董胡の式神
『董胡の青龍への旅路』
特使団の出発
• 特使団は青軍の武官の先導で、壮麗な列をなして出発した。尊武のために皇帝から派遣された黄軍の護衛部隊も加わり、彼の牛車は豪華に飾られていた。
• 董胡は医官として参加し、薄紫の医官服に身を包み、覆布で顔を隠しながら道中を進んだ。
彼女は尊武に顔を見られたくないため、しっかりとした防護装備で旅を続ける決意を固めていた。
出立式での黎司との別れ
• 出発前、大庭園での出立式が行われ、董胡は医官の列の最後尾で皇帝姿の黎司を見上げた。
• 皇帝としての黎司の姿は威厳に満ち、董胡はその姿に一抹の寂しさを感じたが、彼の無事を願いながら心に誓いを立てた。
尊武との牛車内でのやりとり
• 牛車に乗せられた董胡は、尊武と二人きりでの移動を強いられた。尊武は董胡に覆布を外すよう勧めるが、董胡は警戒心を緩めず、彼に対しては無表情で応じた。
• 尊武はさらに接近しようとするが、その際、董胡の護衛として翠明が作った式神が現れ、二人の間に立ちはだかり尊武の動きを阻んだ。
式神による護衛の登場
• 董胡の護衛として仕える式神「茶民」と「壇々」は、董胡が危険を感じると即座に彼女を守る行動をとった。二人は元の人物とよく似ており、董胡の信頼できる存在であった。
• 茶民と壇々は董胡を守るための式神として翠明が送り出した存在であり、董胡もその効果的な護衛に感謝していた。
尊武と董胡の出自に関する会話
• 尊武は董胡の出自について関心を示し、彼女が「濤麗の娘」であるという噂を疑問視していた。董胡は淡々と応じ、噂話に過ぎないと主張し、正体を隠し通そうとした。
• 尊武はさらに濤麗がかつて何者かに殺されたこと、その娘も行方不明になったことを語り、董胡にその経緯を尋ねたが、董胡は詳細を知らぬふりを続けた。
尊武の不適切な冗談と護衛の反応
• 尊武は董胡に対して不適切な冗談を口にしたが、茶民と壇々の式神が即座にその場を遮り、尊武の接近を防いだ。
• 尊武は式神に対して不満を表すが、董胡は護衛の働きに内心感謝し、尊武の干渉から守られる安心感を抱いていた。
このように、董胡は尊武に対して毅然とした態度を保ちつつ、護衛の力に支えられながら青龍への道を進むこととなった。式神の護衛が彼女にとって大きな支えとなり、旅路において尊武の不穏な意図に対抗する力を得ていた。
六、蒼玉の宮
董胡の青龍への旅路
特使団の出発と到着
• 特使団は青龍街をゆったりと進み、夕方には青龍領の蒼玉の宮に到着した。青龍公が医師達をねぎらうための宴を準備しており、尊武や医師達は蒼玉の宮での宿泊が決まっていた。
• 董胡は医官として参加し、覆布と薬籠を持って道中を進んだが、尊武に呼び止められ、強引に尊武の部屋へ連れられていった。
宴の始まりと尊武の扱い
• 青龍公は大広間で宴を開き、青龍の武官達が医師団に豪快に酒を注いでいた。尊武はその席で堂々と杯を飲み干し、青龍公の歓待に応じていたが、董胡は毒見として食事をさせられる形になった。
• 尊武は青龍公からの歓待に見せかけて董胡に毒見をさせ、董胡は黙々と小皿に盛られた料理を食べた。
尊武への縁談の打診
• 青龍公は宴の中で尊武に対し、自分の娘との縁談を打診した。尊武は興味を示さず、姫君の美醜で妻を決める気はないと断りを入れ、青龍公は戸惑いながらも玄武公に縁談を通す意向を見せた。
部屋での休息と女性の訪問
• 宴の後、董胡が部屋に戻ると、青龍公が差し向けた女性が訪れたが、尊武は冷静にその女性を追い返し、董胡に「女に飢えていない」と示す行動を取った。
尊武の指示と董胡の役割
• 尊武は董胡に対し夜食を求め、董胡は青龍の厨房で食材を調達して薬膳料理を準備した。尊武は黙って料理を完食し、董胡の役割として満足の意を見せた。
七、角宿へ
朝食と蒼玉の宮の出発
• 朝食には豪快な料理が届けられたが、董胡は自ら作り直して尊武に提供し、小腹がすいた時のためにむすびも用意していた。さらに、昨日もらった芽花椰菜に興味を持ち、生で試してみたが味はイマイチであった。
• その後、董胡は旅の準備を整え、蒼玉の宮を出発した。
青龍公との別れ
• 出発時、青龍公が特使団を見送りに訪れ、尊武に昨夜の「もてなし」について意味深に尋ねたが、尊武は「快眠できた」と答え、青龍公は満足げに笑みを浮かべていた。
• その後、青龍公は角宿までの宿も整えていると述べ、青龍の医術の発展を願うよう訴えかけ、尊武も愛想笑いで応じた。
尊武と董胡の会話
• 牛車内で董胡は尊武に、青龍公の罪を暴かず、雲埆に罪を負わせる姿勢について尋ねたが、尊武は「青龍を混乱させるつもりはない」と述べ、青龍の武術を得ることが玄武にとって有益であると説明した。
• 尊武は青龍の麒麟寮建設と引き換えに玄武への麒麟武道場設立を狙っており、それが玄武に有利な取引になると語った。
• 話の中で尊武は父・玄武公と自身の目指すものが異なることを示唆し、玄武公は伍尭國の支配を望んでいるが、尊武は異なる道を追求していると明かした。
角宿での宿泊と芽花椰菜
• 角宿に向かう途中、宿泊した宿屋で大皿の芽花椰菜や骨付き鶏肉が提供され、董胡は交互に食べることで味を調整し、満足していた。
• しかし、尊武は豪快な料理に不満を感じており、董胡が作り直した料理で食欲を満たした。
雲埆寮への到着と迎え入れ
• 特使団が角宿の『雲埆寮』に到着すると、名誉師範である伯生らが拝座し、尊武を出迎えた。伯生は雲埆寮の医師達が雲埆の罪には関与していないと弁明した。
• しかし、医師達の中から雲埆の企みを知っていたと主張する者が現れ、場が騒然となった。
尊武の冷酷な裁可
• 尊武は声を上げた男達を「雲埆の仲間」として捕らえるよう命じ、反抗する者達は武官に取り押さえられた。
• 最後に尊武は捕らえた男達を雲埆と同じく死罪に処すると宣言し、厳粛な姿勢で残りの医師達に問いかけたが、他に名乗り出る者はいなかった。
八、雲埆寮の拓生
雲埆寮での宿泊
• 雲埆寮に到着した尊武は、日当たりの良い雲埆の部屋を宿泊場所として与えられた。部屋には池のある庭や御帳台もあり、贅を尽くした作りであった。
• 部屋を見回した尊武は、医術に関する証拠がすべて取り除かれていることに気付き、「証拠は処分されたようだ」と呟いた。
死罪の決定に対する董胡の疑問
• 董胡は尊武に対し、先ほど捕らえられた者たちを本当に死罪にするつもりか尋ねたが、尊武は冷静に「彼らが自ら死罪を望んだのだ」と返答した。
• 尊武は、人の情や無念といった感情を理解できず、あえて逃げ道を用意したのにそれを放棄した者たちが愚かであると述べた。
• 話が通じず困惑する董胡に対し、尊武は腹が空いたと命じ、董胡を厨房へ向かわせた。
董胡の厨房での出会い
• 厨房に着いた董胡は、寮生や医師たちが料理を当番制で行っているのを目にした。若い寮生の拓生が董胡に話しかけ、自分も雲埆寮で医師の免状を取得していたが、今回の件で無効にされたことを明かした。
• 医師達は、雲埆の恩恵で立身出世した背景があり、尊武によって雲埆が捕らえられたことで不満を抱いていたが、董胡が張本人であるとは知らなかった。
• 拓生の計らいで料理の準備を進める董胡に対し、拓生は親しげに董胡の名前を尋ね、董胡は素直に名乗った。
尊武との夕食
• 董胡が作った簡素な料理に対し、尊武は不満を漏らしながらも黙々と食べ進めた。尊武は料理の見た目を重視する傾向があり、味には意外と無頓着であることが判明した。
• 尊武は豆板辣醬で味付けした芽花椰菜の料理や特製沙茶醬で炒めた蓮根に満足し、将来宮殿の料理人にも作らせるよう指示した。
• 食事を終えた尊武は、雲埆の件が青龍で「陥れられた」と誤解されていることを聞き、「伝言の脚色はよくあることだ」と董胡を軽く見た。
拓生との薬庫調査
• 翌日、董胡は拓生と共に薬庫を訪れ、雲埆の薬に関する実態を調査した。棚の生薬は品質が悪く、さらに代用薬が多く使用されていたことが分かった。
• 雲埆の診療所では、ほとんどの治療が偽薬である「黄龍の鱗」や、基本的な薬のみに頼っていた。
• 拓生は自身の医術知識に不安を抱き、玄武の医師試験に合格できるか疑念を抱いていたが、董胡はそれを指摘し、薬庫の状態を確認してさらなる指導が必要であると判断した。
青龍と玄武の医術の違い
• 青龍の医術が大雑把で、玄武のように繊細な薬草探究や医術の発展に向いていないことを感じた董胡は、伍尭國が四術に分かれた理由に納得し、拓生とのやり取りを通じて今後の課題を見出した。
九、医生の反乱
夕餉の支度と尊武の不満
• 夕食の時間になり、尊武は疲れた表情で部屋に戻ってきた。董胡が心配しながら尋ねると、尊武は「青龍人は頭も筋肉でできているようだ」と辛辣な意見を述べ、特に雲埆の医師免状を持つ者たちがひどいと指摘した。
• 尊武は雲埆の医師免状を持つ者が金で免状を買った可能性が高く、これが玄武でも行われていると語った。また、自身が玄武公の嫡男であり、試験を白紙で出しても首席合格できたであろうことを董胡に示した。
• 尊武は、青龍人が再試験を拒む様子や地域医療への影響を訴える者たちに対し、玄武の試験を受けるべきだと主張したが、彼らの大半が合格する自信がなく、再試験を拒否していることに苛立っていた。
特使団への不満と董胡への要求
• 尊武は、雲埆寮での医師たちが麒麟寮の設立に反対し、特使団への反感を煽っていることに腹を立て、彼らを「青龍の病巣」と見做していた。また、彼らを一人ずつ捕まえ、死罪にすることも冗談交じりに口にするなど、徹底的に排除する意志を示した。
• 毎日董胡の作る料理を食べながらも文句を言い続け、再び饅頭を作るよう董胡に命じた。
董胡への襲撃と拓生の救援
• ある日、董胡が厨房で夕餉の支度をしていると、拓生が急いで駆け込み、董胡に逃げるよう告げた。雲埆寮の医師たちが董胡を陥れた元凶として医生たちに話を広めており、董胡の命が狙われていることが判明した。
• 拓生は董胡を守るために立ち上がり、二人で逃げ道を探している最中に、武器を持った医生たちに囲まれた。董胡の前に茶民と壇々が現れ、懐剣で董胡を守ろうとしたが、結局二人も斬り捨てられてしまった。
密偵の介入と董胡の救出
• 董胡が絶体絶命の中、黒ずくめの男たちが現れ、木刀で医生たちの武器を落とし、董胡を助け出した。男たちは董胡の護衛をしていた密偵の楊庵や偵徳であり、董胡を陰から守っていたことが判明した。
• 特使団の護衛武官たちが現場に駆け込み、尊武が指示を出し、襲撃した医生たちを拘束した。尊武は董胡が命拾いしたことに喜びながらも、董胡が雲埆の罪を暴いたと医生たちに伝えたのは「うっかり口を滑らせた」と皮肉交じりに言った。
王宮での黎司の予感と異変
• 一方、王宮の黎司は瞑想の中で董胡が襲われる光景を目撃していた。董胡が大勢の医生に囲まれ、茶民と壇々が斬り捨てられる様子が映し出された。
• 驚いた黎司は急いで翠明と連絡を取り、董胡の安否を確かめようとするが、翠明によれば董胡に付けていた式神の術が解けたため、現状を把握できないことが判明した。董胡の安否を確かめるため、黎司は未知の天術を試す覚悟を決め、翠明と共にその準備に取り掛かる決意を固めた。
十、董胡の薬膳料理講義
董胡の悲しみと尊武の冷酷な反応
• 董胡は、夕餉を準備しながら、式神として董胡を護衛していた茶民と壇々が自分のために斬られた場面を思い出し、深い悲しみに包まれていた。尊武がそれを見て「式神が死んだぐらいで泣くな」と冷淡な言葉を投げかけた。
• 尊武は、式神の命を「紙切れのようなものだ」と侮蔑し、董胡の悲しみを全く理解しなかった。董胡は、蹴飛ばしたい気持ちを抑え、夕餉を尊武に提供した。
雲埆寮の反乱者の処遇について
• 尊武は雲埆寮の医師達を罪に問うことを決め、雲埆一人に罪をなすりつけようとした彼らのずるさを非難した。彼らの罪は「虚言を吹き込み、偽薬を売った罪」など、次々と発覚し、董胡が死罪を厳しいと訴えるも、尊武は世を恨む彼らを生かしておくべきではないと断言した。
• 董胡が反乱に加わった若い医生達の処遇を軽減してほしいと願い出ると、尊武は一時的に冷淡な態度を取りつつも、最終的には彼らに「百叩きの罰」を科して許すことを認めた。
伯生との対面と青龍医術の歴史
• 拓生の案内で伯生の住まいを訪れた董胡は、伯生から雲埆と共にかつて青龍の医術を支えようと志を立てた過去について聞いた。伯生は、雲埆が若くして成功を手にしたことで金の亡者と化し、青龍の医術が偽薬と偽医師に汚染される原因になったことを嘆いた。
• 伯生は董胡の活躍によって青龍が救われたことに感謝を示し、董胡に料理の技術で医生達の心を和らげてほしいと頼んだ。
医生達への薬膳料理と医術の授業
• 三日後、董胡は拓生と共に医生達の前で薬膳料理を振る舞いながら、医術についての知識を語った。董胡は、偽薬「黄龍の鱗」や「蛟龍の卵」の成分について説明し、雲埆の処方が医師としての倫理を欠いていたことを指摘した。
• 董胡の薬膳料理に対して医生達は驚嘆し、董胡の医術の知識と料理の腕前に感銘を受けた。特に薬膳料理が薬効を持ちながら美味であることが医生達の心を動かし、彼らは医術を真剣に学ぶ意欲を取り戻した。
董胡への信頼の広がりと医生達の変化
• 後日、医生達が雲埆寮の掃除をしていると、診療所の再開を待ち望む若い女性が董胡の評判を聞き、玄武からの名医として尊敬の念を抱いて去っていった。董胡の存在が医生達に広がり、特に雲埆派の医生達も次第に董胡を認め、医術に真摯に向き合い始めた。
• 医師を志す医生達の間で伯生派が増え、青龍の医術が再び正しい方向に向かって進んでいる兆しが見えた。董胡の努力が実を結び、彼もまた少しずつ希望を取り戻した。
十一、董胡の弱点
董胡と尊武の対話と疑念
• 尊武は、雲埆派の医師たちが特使団の活動を妨げていたことに苛立ちを見せ、早期に拘束しておくべきだったと呟いた。董胡は王宮への帰還時期について尊武に尋ねたが、尊武は董胡の表情を見て「帝に会いたいか」とからかいを交えた。董胡は焦りながらも、帝への想いを隠そうとした。
• 尊武は、董胡が帝に対して二役を演じていると思い込んでおり、董胡が女装した姿について言及するが、董胡は慌ててそれを否定した。
突如の悲報と拓生の危機
• 部屋に訪れた医生が「拓生が斬られた」と報告したことに董胡は衝撃を受けた。彼が減刑を頼み、解放された医生が拓生を襲ったのであった。
• 尊武は冷静に拓生の状態を尋ねながらも食事を続け、彼が拓生の危険性を予見していたかのような態度を示した。その冷静さに董胡は困惑し、急いで薬籠を持って診療所へ向かった。
尊武による切開術と董胡の無力感
• 診療所で董胡は拓生の重傷を目の当たりにし、医師としての弱点である大きな傷口の処置ができないことに悩まされた。そんな時、尊武が現れ、西方で学んだという切開術を使って拓生を縫合した。
• 尊武の冷静な処置に医師たちも驚き、董胡は医師としての無力感と敗北感に打ちひしがれた。尊武がいなければ拓生の命は救えなかったことを痛感し、彼に感謝の念を抱いた。
拓生の目覚めと罪人の行く末
• 二日間の看病の末、拓生は目を覚まし、董胡が自分を助けてくれたと信じたが、実際に命を救ったのは尊武だった。董胡は拓生に対し、自分が減刑を求めたために彼が危険に晒されたことを謝罪した。
• 拓生は董胡の行動を理解し、同情を示したが、董胡は罪人である医生達の減刑が結果として悲劇を招いたことを悔やんでいた。
善と悪に対する尊武の持論
• 尊武は董胡に善と悪の本質についての考えを述べ、自分の行動は「社会の繁栄と発展のためだけに行動している必要悪」であると主張した。董胡が善意による減刑を行ったことで害を生じたことを「害善」として非難した。
• 尊武の視点では、善意だけで国や社会は成り立たず、悪の行動も必要であるとし、伍尭國の繁栄は悪人たちの策略によって築かれたものであると主張した。
董胡の疑念と尊武の忠誠
• 董胡は尊武が帝に対しても害悪と見なした場合、排除するつもりがあるのかと問いかけた。尊武は「帝であっても必要があれば排除する」と断言するも、現時点では帝が必要な存在であると付け加えた。
• この言葉に董胡は黎司に対する尊武の忠誠を一応のところ信じるが、彼の本意が掴めないままであった。
十二、攫われた董胡
雲埆寮の中庭での董胡の思索
• 尊武と話した後、董胡は一人で雲埆寮の中庭に出て、薬草を摘みながら自分の考えを整理していた。尊武の言葉に動揺し、黎司ならどのように応えたかを思い浮かべ、彼の優しさに救いを求める思いを抱いていた。
楊庵との再会と偵徳の異変
• ふと草むらから楊庵が現れ、董胡に偵徳の異常を知らせた。偵徳は古傷の痛みに苦しみ、妄言を呟きながらも尊武への復讐心を募らせていた。董胡は偵徳のために薬を煎じることを決意し、楊庵と共に麒麟の社へ向かった。
偵徳の過去と尊武への復讐心
• 麒麟の社で偵徳は、自身の古傷が幼少期に尊武によってつけられたものであることを明かし、その恨みを忘れられずに生きてきたことを告白した。董胡は偵徳に対し、今は尊武を討つ時ではないと説得し、尊武の統治が国の未来に必要なものであると主張した。
董胡の説得と偵徳の決意
• 偵徳は董胡の願いを受け入れ、しばし尊武への復讐を見送ることを約束した。董胡は偵徳のために薬湯を煎じ、楊庵と共に雲埆寮へ戻ることにしたが、楊庵は董胡が尊武の側にいることを心配していた。
謎の襲撃と董胡の拉致
• 雲埆寮へ戻ろうとした董胡は、突如として謎の人物たちに襲われ、口を塞がれたまま拉致されてしまった。董胡は必死で抵抗し楊庵に助けを求めたが、男たちに抱えられてその場から連れ去られてしまった。
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